Trilogy
友人と設定だけ練って結局ブン投げた物。
なので続かないし、反響あっても恐らく書かない。
要望があったら設定だけでも公開しようかな、
しないかも。
人類の革新―
先天的能力者と呼ばれる特殊な能力を持った人間が現れたのはもうずいぶんと昔の話だ。
なぜ誕生したのか?どのような原理なのか?突然変異なのか?環境変異なのか?
いずれも明らかにはなっていないが、ただ一つわかっていたことは今までの日常が変わってしまうこと。
出現当初から懸念されていたコンジェニタルフォーサーによる恣意的犯罪行為は実際に起きてしまった。
政府はこれに対処せざる得なく、徐々に常人とコンジェニタルフォーサーとの溝は深まっていった。
政府はコンジェニタルフォーサーに対し強硬策にに出た。
武力で押さえつけ、強制的に政府の極秘研究施設に連行した。
常人間ではコンジェニタルフォーサーへの差別意識が高まり、コンジェニタルフォーサーは名実ともに”人”として扱われなくなってしまった。
彼らは立ち上がった。
自分たちの”人”としての権利を取り戻すために。
そして、今に至る。
毎日ニュースでは政府軍とコンジェニタルフォーサーが凄惨な戦いを繰り広げている映像が流れる。
日に日にコンジェニタルフォーサー軍は勢力を強めていた。
政府軍は徐々に劣勢になり、このままだと常人を総動員した
”戦争”になると言われている。
それは
まだ子供である俺らにとっても、遠い世界の話ではなくなっていた・・・。
「・・・・・・・・・」
日々募る不安。
この平和な日常が、いつ崩れ去ってしまうのだろうかと。
できればこのまま何も起きてほしくはない。
俺は戦争なんてしたくない。
まさか俺が生きているうちに戦争なんてするとは思いもしなかったし、
戦争なんて教科書や映像で見るだけで現実とは程遠いものだとばかり思っていたからだ。
実際に近くに迫ると怖いものだ。
「・・・・・・」
アーテルは高校の屋上で曇った空を見上げていた。
まだ朝の8時半。
今日はまだ生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。
それが俺をホッとさせてくれる。
まだ、今日じゃないんだと。
「お?アーテル」
「ん?ブルー?」
「ここで何してんの?」
「いや・・お前こそ珍しいな。こんな時間帯に学校に来るなんて」
「いや、まぁ最近はこれくらいの時間には来てるんだよ」
「なんで?」
「うーん・・・。なんか、家に居ずらくなっちゃってさ」
「・・・そうか」
ブルーには妹がいる。コンジェニタルフォーサーだ。
きっとそれが理由だろう。
「ここ最近ずっと家では親が喧嘩してんだよ・・
シオンのことでさ。ほら?あいつ、コンジェニタルだろ?
政府軍が来たら家族全員殺されちまうんじゃないかって母さんがずっと言ってて・・・。父さんは子供を見捨てんのか!ってそれの一点張りでさ・・・」
「複雑だな」
「複雑過ぎだよ全く・・・」
「なぁブルー」
「ん?」
「・・・いや、やっぱいいや。下行こうぜ?もうそろ始まる」
「?・・あぁ」
教室に入るとそこはまだいつも通りの光景が広がっていた。
「・・・・・・・」
教室の隅っこに座っている顔の右半分を髪の毛で隠している男子生徒。
彼、ヴェルデはコンジェニタルフォーサーだ。彼の右目は能力が関係しているのかは分からないが異形の眼をしているらしい。
髪の毛で隠れてはいるものの、この学校ではその事実はみんな知っている。
「おい!ヴェルデ!」
「お前このご時世でよく学校来れるよな?」
「なんのこと?」
「なんのことぉじゃねぇよ!!!」
絡んできた男子生徒の一人ベルッドのパンチがヴェルデの顔を捉える。
「いっつ!!」
ヴェルデは椅子から倒れた。
「おい化け物。お前はここに居ちゃいけねーんだよ。
ここは”人”が通う学校なんだからな」
「てめーの仲間が昨日うちの母ちゃんを怪我させたんだよ!
とっとと死ねよ!!!」
「僕はそんなこと知らない。能力持ってるやつみんなが仲間なわけじゃない」
「うるせぇんだよ!!!てめぇに生きる権利なんてねぇ!!」
ベルッドがもう一度殴ろうとした。
その腕をアーテルが掴んだ。
「おい、お前の脳みそ全部水ででもできてんのか?
能力者みんなが人に危害を加えてるわけじゃねーだろ!そんなこともわかんないのかよデブ!!」
「んだと!!!アーテル!!!」
「おい!喧嘩はやめろ!」
「やめなさい!!!」
「!!」
「んあ!?」
教室に担任の先生が入ってきた。
ジャンヌ先生だ。
「みんな席に着きなさい。もうとっくに始業時間を過ぎてますよ」
「……てめぇいつか絶対に殺してやるからな。非国民」
「やれるもんならやってみなよ、クズ野郎」
「立てるか?」
「うん・・ごめん」
「いいって気にすんな」
「はぁ・・・それでは出席を・・・・」
「・・・・・・」
ベルッドみたいなやつがこの国の常人の多数を占めているのが現状だ。
あいつらを見るたびに、戦争が近づいてくると感じる。
決して頭が悪いわけではない。風潮が、周囲が、政府がそうさせているからだ。
どんどんみんなの思考が染まっていく。
俺はそれを見るたび恐怖する。人間の恐ろしさに。
つい先日まで人を殺すことは間違っていると言っていた人が、
今は平気で殺せと叫ぶ。
今までの”間違い”が”正義”に変わりつつある。
変わらないものは逆に異端となる。
ヴェルデは、いつの間にか居なくなっていた。
「では、1時間目の準備をして。
それとー・・アーテル、ちょっと話があるわ」
「はい?」
ジャンヌ先生はアーテルを廊下に呼び出した。
「さっきのことなんだけど・・・
私はあなたの気持ちがわかるわ・・・」
「え?」
「全ての能力者が乱暴なわけじゃないってこと。
きっとみんなわかってるはずなんだけどね。
人間の集団心理って怖いわね」
「・・・そうですね」
「暴力を振るうのはよくないわ。
でも・・・その・・あなたの心は変わらないでいいんだからね?」
「え・・・?」
「あなたは何も間違ってない。
周りがどうなろうと・・その心だけはずっと持っててね」
「・・・はい」
「じゃ、1時間目遅れないようにね!」
「・・・」
異端者は決して一人ではない。
そう思えただけでも俺には心強かった。
「なぁ、アーテル」
「何?」
「ちょっと1時間目サボって屋上行かね?」
「あぁ、いいよ」
2人で屋上へ向かう。
そこには・・ヴェルデがいた。
「あ・・・アーテル」
「よう・・。ってお前ここで何してんだよ!お前もサボりか?」
「いや、ヴェルデがお前を呼んだんだよ」
「なんか、ごめん」
「なんで謝るのさ、いつものことだろ?」
「正直・・・どうしていいかわからないんだ」
「わからないっつーと?」
「僕はみんなと同じだ」
「そんなの知ってるわ!」
「だからみんなと同じように普段を過ごしたい・・・。
けどそうすれば・・・いつもああなる」
「それがどうしたのさ」
「君たちに迷惑がかかるでしょ?
だから・・・もう・・・・・
学校に来るのやめようかなって」
「迷惑かけたっていいさ!!俺ら昔からの友達だろ!?
そんなこと気にすんなよ!お前は普通の!人間なんだからさ!!」
「俺も同感。そんなつまんねぇ考え捨てちまえよ」
「・・・そっか・・・。ありがとう」
「うん。俺らこれからもずっと友達だ」
「そーだよ。どんなことがあっても・・・友達だ」
「ふふ・・・」
「んな、何笑ってんだよ」
「なんか・・・うれしくて」
「言ったこっちが恥ずかしくなるから笑うのやめろ!」
「無理」
「んにゃろぅ・・・」
「あはははは」
ずっとこのままがよかった。
ずっと・・ずっと・・・
-政府軍:関東第10基地
コンジェニタルフォーサー、レジスタンスの一派。
カルシスが同胞を集めて密かに会議を開いていた。
「お前らいいか?もうルベルトみてーにちんたらやってる場合じゃねぇ。人間どもは日に日に新型の兵器を開発して実戦投入してきている。
それに、俺たちの同胞を生け捕りにして人体実験もしやがってる。
もうわかるよな?俺の言いたいことが?
今すぐに人間どもをぶっ潰す!!」
カルシス派「おおおおおおおお!!!!」
カルシス「見てろよ人間ども・・・。化け物を怒らせたらどうなるか・・
思い知らせてやる」
-
「ちょっと!!あんたたち!何サボってるの!!」
「うわ!先生」
「ちゃんと1時間目でろって言ったでしょ!」
先生のチョップがアーテルの脳天を直撃する。
「いてぇ!!」
「もう・・・全く!」
「見つかっちまったらしょうがねーな」
「なーにその言い方はブルー!」
「すみませんでした」
「ほら!ヴェルデみたいな謝罪はないの?」
「ごめ~んち☆」
ジャンヌのチョップはブルーにも炸裂した。
「・・ヴェルデ?大丈夫?」
「ええ・・大丈夫です先生」
「何かあったらいつでも相談に来てね?」
「ありがとうございます・・」
「その前に俺らに相談しろよ?」
「どっちが先でもいいでしょ!」
『えー全校生徒に連絡します。緊急の全校集会を行います。すぐに体育館に集合してください。繰り返します・・・』
「なんだ?」
「・・・嫌な雰囲気だったな」
「・・・行きましょう」
全校生徒が急きょ体育館に集められた。
ブルーの予感は正しかった。
暗い雰囲気を出して校長の話が始まる。
「今日は・・・みなさんに重要な話を・・・しなければなりません。
先ほど午前11時46分ごろ、埼玉県入間市の関東第10基地がコンジェニタルフォーサー軍によって制圧されました」
一気に体育館がざわつく。
第10基地は関東内でも屈指の勢力を誇っていた。
そんな強い軍隊がやられてしまったのだ。
「いいですか!みなさん!よく聞いてください!
これを受け政府が先ほど声明を出しました
『本日付けで全常人国民満15歳から50歳までの男女を対象とした
徴兵令を勅令をもって施行する』 と」
「え!?」
「なんだって!!?」
「・・・・!」
「これは・・私の個人的解釈ですが、政府は事実上の”戦争”体制に入ったものと思われます」
「戦争・・・?そんな・・・」
想像してたことが現実に起こった。
そんな事実にアーデルは絶望する。
「・・・コンジェニタルフォーサーの生徒については直ちに下校してください。寄り道は絶対しないように。外は過熱した常人ばかりで危険です」
「その他の生徒については各クラスで明日からの日程について連絡がありますので教室に戻って速やかに待機していてください・・・」
「・・・・こんなことを、私が言っていいのか・・・
わかりませんが・・・。
皆さんが全員無事で、またこの学び舎で勉強できる日が来ると私は信じています。
どうか・・生きてください!!!」
校長は泣いていた。
大人が泣くの目の前で見るのは久しぶりだった・・・・。
「校長・・・・」
-
ヴェルデは校門を出ようとしていた。
「ヴェルデ!」
「始まっちゃったね・・・」
「そうだな・・・」
「・・・・これで僕たち敵同士になっちゃったね」
「そんなことあるか!!言ったろ、俺たちはずっと!友達だ!」
「そうだ!また戦争が終わったら3人で遊ぼうぜ!」
「・・そうだね。じゃ、また!」
「ああ!」
「またな!」
それがヴェルデと会った最後だった。
1年後―
あの後すぐにブルーとアーテルは軍事学校に入校した。
そして今日が最終訓練の日だ。
明日からみんな戦場に駆り出される。
軍事寮 自室-
「今日が最後だな・・訓練」
「そうだな!やっと戦場で戦えるぜ」
「・・・・・」
「そういや今日の訓練って西と東と南合同で行われるんだろ?
人多いだろうな」
「ブルー、お前さ・・・ここに入った時から・・変わったよな」
「変わったって何が?」
「ここの入校式の日、お前すげー落ち込んでたけど・・
なんかあったのか?」
「・・・別になにもねーし、変わってねーよ」
「友達の俺にも言えないことなのか?」
「だから!!!なんもねぇつってんだろ!!!!」
「なんで怒るんだよ!」
「お前がしつこいからだ!」
「だってお前!!あんなに戦争に反対だったのに!
今じゃ進んで銃を持って人を撃つことばっか考えてるじゃねーか!」
「あいつらは!”人”じゃねーんだ!!!」
「!!・・・なんでお前が、
そんなこと言うんだよ・・」
「・・・・先に行ってるからな」
「・・・変わっちまったのかよ」
部屋の前の廊下でアーテルの後ろから女の子が歩いてきた。
アーテルの同級生のアルだ。
「みんな、戦争始まってこの学校入校してから変わっちゃったね。
軍の洗脳なのかな?だとしたら私たちには効かなかったみたいだね」
「え?」
「今日の訓練のペア、私とだからよろしくね」
「そうなんだ・・。あ、俺足引っ張ったらごめんね」
「いいよ別に、それに君ならたぶん大丈夫でしょ」
「?」
「君は・・・・」
「おいお前ら、早くしろ」
「はい、すみません」
教官にどやされ足早に会場へと向かう。
他のメンバーはすでに集まっていた。
「これより西、東、南合同の教育訓練最終プログラムを開始する。
諸君は明日から各々の戦地へ赴くことになる。その最後の仕上げとして本日の訓練を行ってもらいたい。
内容は昨日連絡した通り。
この訓練は実践を想定したものであり、気を抜けば命を落とす。
覚悟しておけ!それでは散!!!」
「はいっ!!」
「ロボットの設置されたコースを30分以内にゴールすればいいんだよな」
「これ確か能力者の能力を想定したロボットでしょ。何がくるかわからないね」
「うん・・・・」
「よかったねチル。成績優良生徒の俺とペアで。いざとなったら守ってやるよ」
チル「うん・・ありがとプラム・・・」
「なあビィア、こんなん楽勝じゃね?」
「甘く見ない方がいいと思うけどベルッド」
「よろしくなローズ」
「・・・・足引っ張らないでね、ブルー」
「訓練始め!!!!」
みんなが一斉に駆けだす。
「くそ、みんな早い」
「まぁ慌てずにね」
「ぐあああああああああああ」
誰かの叫び声が上がり、足が止まった。
「!?なんだ」
「これって」
「っく・・・」
二人は叫び声のした方へ走って行った。
「・・・・・」
「!!」
そこには炎の能力者を想定して作られたロボットにやられた生徒の無残な死体があった。
「・・・・・・」
アーテルはロボットに憎しみの感情が湧いてきた。
「あ、あぁ・・やめてぇ!!」
その死体のペアだったであろう女の子がロボットに襲われそうになっている。
アーテルの足は気がついたら動いていた。
「ダメ!!戻って!!」
アルが止めるが、聞く耳は持っていなかった。
咄嗟にシールドを展開し、アーテルは間一髪、火球からその女の子を守った。
アルがその隙にハンドガンでロボットの頭を撃ち抜いた。
「・・・ふぅ」
「ふぅじゃないでしょ。勝手に動かないでよ。行くなら行くって言って」
「ごめん」
「・・あ、ありがとう」
「大丈夫か?・・・・って足怪我してるのか」
「・・・・」
「この試験ってとりあえずゴールすればOKなんだっけ、一人でも」
「確かそうだったはず」
「じゃあ、一緒に連れていく?」
「もちろん」
見ず知らずの女の子を担いでアーテルはゴールを目指した。
「君はどこの訓練生なの?」
「西」
「名前は?」
「アクアです」
「そっか・・・」
「もう始まってから20分くらいたってるのかな」
「時計は取り上げられてるからわからない。でも急がないと」
と、その時大きな爆裂音がした。
「「「!??」」」
遠くで教官が叫ぶ声がする。そして生徒の悲鳴も聞こえた。
「なんだ!?」
『敵襲!敵襲!総員戦闘配備!繰り返す総員戦闘配備!
訓練生は訓練を直ちに中止し戦闘に参加せよ!繰り返す・・・』
「敵襲!?どうなってるんだよ!!」
「まさか能力者が攻めてきたのかも」
「そんなことって・・・・」
「おい、アーテル!!!!」
「ブルー!?なんで」
「とりあえず武器を取りに本部へ戻れ。能力者が襲撃してきた。
みんな戦ってる。行くぞ!」
「戦ってるって・・」
後ろで爆発が起きた
「「「「うわぁッ!!」」」」
「アクア、大丈夫?」
「うん」
「いったぁ・・・・」
「くそ・・・」
「・・・!?!??!」
眼を疑った。
その爆煙の中に立っていたのはなんとヴェルデだった。
「・・・ヴェ・・・ルデ?」
「・・・・・・・」
「お前・・・・・」
「ヴェルデ・・・‼お前どうして!!!」
「僕が戦わないと、大事なものを守れない!!」
「お前・・・・」
「・・・・なんでこんな。なんで戦わなきゃ・・・」
「僕だって・・・」
「・・・・・こうなったらお前は殺す標的だ」
「・・・そうだね」
「は?おい、やめろブルー」
「もうこいつは昔のヴェルデじゃねぇ。さっきから俺らの仲間を殺してる」
「あっちが僕を殺しに来るからだ。来るものには容赦しない」
「ヴェルデ、今すぐここから逃げろ。そしてもう戦うな!!」
「そんな甘いこといってられないんだよ、もう」
「・・・・・・・・」
「はぁぁああああああああああ!!」
「うぉぉおおおおおおおおおお!!」
ブルーとヴェルデは戦い始めた。
あってはならないことなのに。
「なんで・・・・約束したじゃんか・・・・・」
「ねぇ、今はとにかく逃げようよ。ね?」
「・・・・・逃げてくれ、この子を連れて」
「え?」
「止めないと・・・・俺が!!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ブルーとヴェルデが戦う最中、そこに飛び込んだアーテル。
案の定、二人の刃が貫いたのはアーテルだった。
「なっ!!?」
「アーテル!!!」
アーテル「かはっ」
「アーテルぅ!!」
俺は・・・・死んじまったのか。
約束したのに・・・。
どうして。
戦争一つで人はこんなに変わるのかよ・・・・・。
なんで俺らが殺しあわなきゃいけないんだよ。
こんなのあっていいわけがないじゃんか・・・・。
ちくしょう・・・・・。
その日、彼は死んだ