第5話 稲妻帯びる槍…
「おい!必死に漕げ。クラーケンに追いつかれるぞ!逃げろ!!」
エクスプローラー号は、嵐の海上から現れたクラーケンから逃げていた。
海上に足が伸びていた。
離れようとするエクスプローラー号を、クラーケンは巨大な目で凝視する。
クラーケンは、速く泳ぎ迫っていた。
甲板に、クラーケンの無数の足が迫る。
「ユウト。撃て!」
「はい!」
エキドナの指示で勇都は、大砲の紐を引く。
大砲から轟音が鳴り響く。
クラーケンの足に命中した。
足は、吹き飛びよろめく。
「やった!」
勇都は、喜ぶ。
「駄目よ!直ぐに戻る!!」
エキドナは、除き窓からクラーケンの吹き飛んだ足を指差す。
吹き飛んだはずの足の断面から、白い液体が噴き出す。
そこから再び足が再生されていった。
「ユウト。また、甲板に行くぞ。この船を沈めさせるわけにはいかない!」
エキドナに連れられて勇都は階段を駆け上がる。
外に出ると水夫や冒険者、用心棒達が武器を取ってクラーケンの足を攻撃していた。
「畜生!傷つけても再生しやがる。」
「寄せ付けるな。ひたすら攻撃だ。逃げ切るまで!!」
勇都とエキドナは、クラーケンの足に向かう。
「去れ!」
エキドナは、短銃をクラーケンの足に撃つ。
クラーケンの足が一瞬止まる。
勇都は、サマエルが姿を変えた魔剣グランベリーで止まった足を斬りつける。
勇都は、斬った感触に不快感があった。
滑っとしていて手ごたえがなく気持ち悪く感じた。
しかし、勇都の斬った所が変色していく。
勇都は、体を痺れさせる毒花をグランベリーに装着していた。
クラーケンの足が止まっていた。
エキドナは、何故止まっているのか不思議に思っていた。
(毒は効くみたいじゃの。もっと攻撃していけ勇都!)
サマエルの呼び掛けに勇都は従う。
止まった足を斬ったり突いたりしていく。
「おい、あの坊主に続け。足を集中攻撃しよう!!」
エキドナや他の者達も止まった足に武器で攻撃していく。
次第に足の色が緑色に広がっていった。
勇都は、他の甲板上に上がっている足に向かって攻撃しようとしていた。
ドガーン
激しい音と共にエクスプローラー号が大きく揺れる。
「わっ!!」
勇都は、甲板に顔を打ちつける。
「い、いっ、痛たたっ…」
勇都の鼻から血が出ていた。
音の方向を見る。
勇都は、固まった。
クラーケンが体ごとエクスプローラー号にぶつけてきた。
大きな目が勇都達を見て睨んでいた。
数本の足が海上から上がり、天に伸びる。
「まずい。船が沈むぞ!」
クラーケンの足が真上からエクスプローラー号に振り降ろされようとしていた。
その時だった。
強い落雷がクラーケンに落ちる。
眩い雷に勇都は思わず目を瞑る。
クラーケンの体が電流を浴びて動きが止まっていた。
そして、クラーケンの足に一本の槍が突き刺さった。
クラーケンは、痛みの為か全身を大きく震わせる。
そこには、金色の光を帯びた大きな槍が突き刺さっていた。
穂先が三叉になっており深々と刺さり、そこから大量の血を流していた。
クラーケンは、エクスプローラー号から体を離していった。
長い柄の一番の後ろの部分に鎖が付けられていた。
鎖は海上から伸びていた。
勇都は、鎖が続く海上を覗き込む。
すると、荒れ狂う海に一艘の木の船があった。
上半身が裸で色黒の髪の長い鉢巻を巻いた男が立っていた。
男は、鎖を引き三叉の槍を手に戻す。
「今の内だ。俺が喰い止める。速くここから逃げろ!!!」
男は、勇都に向かって吠える。
男は、手に掴んだ槍を再びクラーケンに投げつけた。
クラーケンの足に槍は突き刺さる。
エクスプローラー号は、クラーケンから距離を取っていく。
勇都は、次第に遠くなる男とクラーケンを見えなくなるまでいつまでも見続けていた。
(クラーケンの足を貫いたあの武器は覚えがあるぞ…)
サマエルは、三叉の槍を知っているようだった…




