第23話 怒れる熊…
勇都の全身に力が漲る。
「やった。レベルアップだ!」
勇都は、ステータスを見る。
力や素早さ等のパラメータが上がっていた。
そして、使えるスキルが増えていた。
そこには、二刀流と残影という名が加わっていた。
(少しはアサシンとして成長できたかの?)
魔剣グランベリーに変化したサマエルは、嬉しそうに勇都に語り掛けていた。
一方、闘技場の観客達は、ブラッドエレファントが席に倒れた為、全員外に出された。
被害に逢った者は誰も居なかった。
観客席が満員だったが、誰1人残っていなかった。
居たのは、闘技場を運営する役員達だった。
役員達は、1人の小太りの男に激怒していた。
「おい、ケイトさん。皆あんたの提案に乗った。だが、この有様だ。掛け金を集め、冒険者が負ける様にして、モンスターが勝つように配当も低くした。でも、モンスターは負けたじゃないか!!」
「ブラッドエレファントが倒れ、闘技場に被害が出た。修繕に時間と金が掛かる。どうするんだ?!」
役員達は、ケイトに集中砲火を浴びせる。
ケイトは、目を瞑り、黙って聞いていた。
「おい、黙っていないでなんとか言え!」
「大損害を払う当てはあるのか?」
するとケイトの全身が真っ赤に染まる。
「五月蠅いぞ、クズ共…」
ケイトは、鋭い目つきで役員達を睨む。
「な、何だその態度は?いっ…」
役員の男性がケイトに詰め寄ろうとしていた。
男性の首が吹き飛んでいた。
「え?」
「な、なんだ…」
役員達は驚く。
ケイトは、息を荒くしていた。
右手が熊の様な手をしていた。
「ケ、ケイトさん、あ、あんた…」
頭が禿げ上がった役員の体が引っかかれた。
血を流し役員は、倒れる。
「全ては順調だった…魔王様の為に。ここを金蔓にして資金を献上する拠点にするつもりだった。くそう、くそう、糞共が!!!!」
ケイトの全身が変化していく…
茶色の巨大な熊の姿になった。
「ひっ、ひいいっ…」
「だ、誰か助けてくれー!!!」
ケイトは、残っていた役員達に向かい咆哮を上げて右手で引っ掻いた。
戦いを終えた勇都達。
参加した冒険者は、8名が闘技場に残っていた。
勇都は、死んだ冒険者の死骸に手を合わせていた。
観客席の辺りが騒がしくなった。
「よし。終わった終わった。強いモンスターに勝ったんだ。報酬も高くていい額貰えるな。さあ、皆撤収だ!」
マキャーは、ニヤリと笑いながらダガーをしまう。
ハザンも刀を鞘に納める。
次の瞬間だった。
ドスン。
闘技場の中央に何かが降り立つ。
強い衝撃が勇都達の足元に伝わる。
「い、一体何だ?!」
勇都は、音の方向を見る。
するとそこには巨大な茶色の熊が立っていた。
両手の爪は、血に染まり地面に垂れていた。
勇都は、グランベリーを無意識に抜いていた。
「おいおい。熊と戦う予定なんてあったか?」
マキャーが、ゲートの方に居た係員の男性を見る。
係員は、首を振る。
全く知らない素振りだった。
「いや。今日の試合は、これで終了です。特に何も聞いてません。それに熊のモンスターが居るとは全くそんな情報はなかったはず。」
係員が熊の方に向かい近づいて行く。
すると、熊は空に向かって咆哮を上げる。
「ひいいっ!!!」
係員は、思わず尻餅を付いていた。
「よくも…よくも…モンスター達を倒してくれたな…。お前らが倒すとは思いもしなかった。計算違いが生じた。お前らの大活躍で、こちらは大損だ…」
熊は、勇都達参加者に向かって話す。
「てめえは、一体何者だ?!」
マキャーやハザン、他の参加者達も只事でないと気づき武器を抜く。
「わたしは、ケイト。魔王様の部下だ。お前たちが私の計画を狂わせた。大失敗だ。魔王様に顔向けが出来ぬ。私は、今怒りが収まらないのだ…」
ケイトは、両手を地面に付き身を低くする。
「私のこの怒りは、お前たちの死を持って鎮火させる。その後、魔王様に失態を報告だ。必ず挽回してやるぞ!!!」
ケイトは、突進を始めた…




