第19話 挑む兎…
檻から出てきたのは、黒ずんだ蠍と目を赤くした象だった。
蠍と象は、ゆっくりと勇都達に向かう…
ナイトのルイーズは、2匹のモンスターを見て口を開く。
「あの蠍は、デススコーピオン。砂漠に生息し、滅多に姿を見せない伝説の蠍って聞いたことがあるわ。」
ルイーズは、楽しそうにレイピアをしなやかに振る。
「象は、確かブラッドエレファントって聞いたことがあるぞ。異国の地に生息していて、人間や動物を何でも圧倒的な力で殺すって行商人に聞いたことがあるな。」
髪を後ろに結んだ、上級クラスのサムライであるハザンは、刀を脇に構える。
観客達は、盛大に拍手し、大声を上げ続ける。
勇都は、黙ったまま動かずにいた。
2匹のモンスターの威圧感に圧倒されていた。
(勇都よ。2匹の相手は無理じゃ。どちらかに絞って攻撃せよ。)
魔剣グランベリーとなったサマエルが勇都に話す。
勇都は、どちらを攻撃するか悩んでいた。
(蠍の毒は危険だ。スコーピオンを先に倒し毒を入手したい。でも堅そうだ。エレファントもグランベリーの刃が通るか…)
勇都が考えていた時、ルイーズが動き出す。
「先手必勝!!!」
ルイーズが走り出す。
「うおっ!元気だね~あの兎のお姉ちゃん。張り切っているなー。」
マキャーは、口笛を吹いてルイーズを見る。
ルイーズは、素早く走り飛び跳ねデススコーピオンに突撃していく。
兎のしなやかな筋肉が躍動する。
ルイーズのレイピアが光り始めた…
『おっ、出るぞ!ライトニングの必殺技が!』
『来たっ!決まりだなっ!!』
観客達がルイーズを見て騒ぎ出す。
上級の冒険者、ルイーズの名は知れ渡っていた。
自分の腕を磨く為、各地を周る。
兎の種族の中で最年少でナイトになり、高いレベルで活躍している冒険者であった。
ルイーズは、ナイトのスキルを使う。
「一撃強化!!」
ルイーズのレイピア全体が輝き発動する。
攻撃する一撃の強さを高めるものだった。
ルイーズは、更に叫ぶ。
「サンダーボルト!!」
レイピアが金色に輝き、電流を帯びていた。
デススコーピオンが鋏をゆっくりとルイーズに突き出す。
ルイーズは、ジャンプして躱した。
ルイーズは、デススコーピオンの鋏の上に乗る。
『おおっ、凄いぞ!』
『ルイーズちゃん、蠍を倒しちまえ!あんた達に金賭けてるんだ。勝てよ!!』
観客達は、ルイーズを応援し始める。
その応援にすぐさま反応する観客達も居た。
『蠍―っ!冒険者共を倒せ!!』
『象!踏み潰せや!!』
『お前らに賭けているんだ。損は許さないぞ!!!』
モンスター側の勝利を確信し応援している観客達も怒鳴っていた。
ルイーズは、深く深呼吸をする。
デススコーピオンの顔目掛けてルイーズは、技を放つ。
「閃光突き!!!」
ルイーズの素早く見えない電流を帯びたレイピアの無数の突きがデススコーピオンの顔に突き刺さった。
ルイーズは、勝利を確信したかのように自信に満ち溢れていた。
「私の勝ちよ!!勝負ありね!!!」
バキン
闘技場に大きな音が鳴り響いた…




