第6話 悪党…
長身の狐の男が怪しく笑いながら商人の男の肩を叩く。
「へぁっ?!あ、あんた何者だ?!」
商人の男は、自分の後ろに居た狐の男を見て驚く。
狐の男は、商人の男に言う。
「なぁ~、あんたさ~、その肌身離さず抱えている鞄に金ははいってるのかい~?」
狐の男は、口笛を吹きながら商人の男の鞄を指さす。
「な、何故お前にそんな事を教えなくてはいけない!」
商人の男は、狐の男を睨む。
「え、いいじゃんかよ。俺はねー、お金が欲しいんだよ。」
狐の男は、手を出す。
「おっさん。ほら。これからあんたとさ~、そこの坊ちゃんをこの砂漠から助けてやるから全部寄こしなよ。」
狐の男は、商人に迫る。
勇都は、呆然と狐の男と商人の姿を見ていた。
「この金は、私の商売の金だ!これからターメリクに入り稼いでいく大事な金だ。故郷を出てここまで来たんだ。今まで稼いだ大事な資金をお前の様なコソ泥に渡せん!!」
商人の男は、鞄からナイフを取り出して狐の男に向ける。
すると、狐の男の表情が変わった。
笑うのを止め、商人の男を睨む。
勇都は、言葉にできない凶暴さを感じていた。
「おっさんよー。俺はコソ泥じゃねえ。俺にはマキャーという名前があるんだよ。」
狐の男は、自分の名前をマキャーと呼んだ。
マキャ―は、片手で商人の襟を掴む。
商人は片手で浮き上がる。
「は、は、離せェ!!!」
商人の男は、暴れながら片手のナイフを振りまわす。
が、それは空を切っていた。
「ちっ!ちょっと黙ってろよ!!」
マキャーは、膝蹴りを商人の腹に喰らわせる。
「う…ぐ…」
商人の男の体がくの字に曲がる。
「おらっ!!!」
マキャーの右拳が商人の男の顔に炸裂する。
商人の男は、ナイフをその場に落とし吹き飛ばされた。
勇都は、すかさずマキャーに向かって飛び出していた。
マキャーと言う男は、危険だと実感していた。
とてもヤバくて危ない気配。人を平気で殺す事が出来る。
勇都は、商人の男が殺されてしまうと咄嗟に助けに入るため体が動いていた。
「うああああっ!!!」
勇都は、サマエルの変身した魔剣グランベリーを抜きマキャーに斬り掛かっていく。
「おっ、中々良い武器持ってんじゃんかよ。」
マキャーは、口笛を吹き勇都を待つ。
勇都が、マキャーの間合いに入った。
すると、勇都の視界からマキャーが消えた。
(い、居ない。ど、何処に?)
次の瞬間、勇都は脇腹に痛みを感じる。
「ぐっ!!」
勇都は、吹き飛ばされた。
マキャーの長い足の蹴りが入っていた。
地面に転がる勇都。
「ぶっ!!」
勇都は、顔に激しい痛みを覚える。
マキャーの右拳が勇都の顔面に入る。
鼻が痛く、熱く感じた。
鼻から血が流れているのがわかった。
「おい、坊ちゃんよー。邪魔をするんじゃねえよ。出しゃばってくんな。弱いくせしてよ。」
マキャーの蹴りが勇都の顎を蹴り上げる。
「うぐっ!」
勇都は、マキャーの蹴りを喰らい意識を失った。
勇都は、グランベリーから手を離した。
グランベリーが砂漠の地面の砂に突き刺さる。
「おー。いいじゃん。いい武器だ。お坊ちゃんよ、俺に逆らった罰だ。これは俺が貰うぞ。俺が大事に使ってやるよ。」
勇都は、薄れゆく意識の中、マキャーとグランベリーを呆然と見ていた。
(や、止めろ…)
勇都は、声を出すことが出来なかった。
マキャーは、倒れた勇都を見て厭らしい笑いを見せる。
そして、グランベリーの柄を握るのであった…
 




