第3話 荒れ狂う砂虫…
勇都は炎天下の中の砂漠を走っていた。
前に、馬車を走らせていたた操者の男に続いていた。
「ま、待ってくれ~。お、置いて行かないでくれぇ!!!」
商人の男も勇都を追いかけて走っていた。
勇都達は、砂虫と呼ばれるモンスター、サンドワームから逃げていた。
「あ、あの。サンドワームの弱点なんかわからないですか?」
勇都は、前を走るターバンの男に質問する。
「あぁ?!サンドワームは砂漠に隠れて何処から出てくるかわからないぞ。俺は、聞いたことしかないが、水や風の魔法で倒したとか聞いたことはあるが…」
男は、息が上がっていた。
「お前、名は何て言う。はぁ、はぁ。お、俺は、ギャランだ…」
ギャランは、勇都に名前を聞いてきた。
「僕は…ユウトです。はぁ、あ、暑い。」
勇都は、汗を掻いていた。
額から流れる汗が目に入り染みる。
「ユウトとかって言ったな。その持っているダガーみたいな奴で戦うのか?」
勇都が持つ毒の女神サマエルが変化した神の武器、魔剣グランベリーを指さす。
「はい。何とか戦ってみようかなって…」
「馬鹿か!お前死ぬぞ!!」
ギャランは、ターバンを取る。
頭はスキンヘッドで、大量の汗を掻いていた。
「ユウト。逃げるが勝ちだ。もう少しであそこにいるあいつを捕まえる。乗って逃げるぞ。」
ギャランは、目の前を指さす。
サンドワームに吹き飛ばされた際に、馬車から離れた馬が1頭居た。
一頭は頭から落ちて動けなかった。
姿が見えなかったので、サンドワームに食べられている可能性があった。
ゆっくりと徘徊している白い馬。
「ま、乗れても2人しか乗れない。速い者勝ちって奴だ。」
ギャランは、笑う。
「あ、で、でも僕の後ろの商人みたいな人はどうなるんですか?」
勇都は、自分の後ろを遅れて走っている商人の男をどうするかギャランに聞く。
「そこまで俺はお人好しじゃねえよ!知るか!!」
ギャランは、白馬の所に近づいた。
ギャランは、馬の手綱を取ろうとした。
するとギャランの足元が盛り上がる。
「や、やべぇ!!!」
ギャランは、思いっきり吹き飛ばされた。
サンドワームが出てきた。
ギャランは、転がって気を失い倒れていた。
サンドワームが勇都を見る。
勇都は、グランベリーを前に突き出した。
サンドワームが物凄い速度で勇都に突っ込んで行く。
勇都は、ギリギリまでその場に居た。
サンドワームの歯が勇都を噛みつこうとする。
「今だ!」
勇都は、サンドワームの体がぶつかる直前で体を仰け反らせる。
「ポイズンウィップ!!」
勇都は、グランベリーから紫色の光を放出し、鞭のようにしならせてそれをサンドワームの体に叩きつけた。
サンドワームは、一瞬固まり動かなくなる。
しかし、数秒後、直ぐに動き砂漠の中に潜っていった。
(ほんの少しだったが動きが止まったぞ。毒が効くみたいだな。)
サマエルが勇都に呼び掛ける。
勇都は、グランベリーにオレンジ色の玉を入れていた。
ボルシチ共和国に生息していた、ビリビリ草と呼ばれる植物から採取した毒だった。
体に入ると麻痺させる効果があった。
「もっと強い毒を使わないと…」
勇都は、袋から毒を探し出していた。
「し、死にたくない…」
商人の男は、疲れ砂漠に膝を付いていた。
顔色が暗く、絶望感が漂っていた。
地面から音が聞こえる。
何か這うような大きな音が響きながら、勇都達の周りを旋回していく。
サンドワームが、地面から飛び出して再び勇都に襲い掛かる。
「おっと!」
勇都は、体を横に回転させてサンドワームの体当たりを躱す。
片膝を付き、グランベリーを両手で握る勇都。
「よし、やってみるか!」
勇都は、危機的な状況の中、何故か笑っていた。
それは、自然に現れた笑みだった…




