第2話 地中に生息するもの…
「うっ、うわああああああっ!!!」
勇都達が乗る馬車が空中に放り出された。
体が浮き上がり、荷台の中に皆しがみ付いていた。
馬車が上空の頂点まで達し、そのまま凄い勢いで落下していった。
砂に馬や荷台が沈み込む。
「うっ、ぷっ、口に砂が…」
勇都は、体に衝撃を受けたが、何とか荷台から抜け出した。
すると落下した馬の一頭は、頭から落下したのか横たわり荒い息を吐いていた。
下が砂漠だったため、柔らかくクッションになっていた。
勇都は周囲を見る。
周りは砂だらけだった。
荷台にいた他の人々もいた。
年老いた老婆は腰を抑えていた。
「大丈夫かいハニー?」
「何とか大丈夫よ!」
若いカップル2人は、お互いに無事を確認しながら抱き合っていた。
中年の商人は、落ち着かない様子で震えていた。
ターバンを被り、馬を操っていた男は、勇都達に叫ぶ。
「おい。急いでここを離れるぞ。奴が来る前に逃げないと。確実に死んでしまうぞ!」
男は、西の方角に走って行った。
その瞬間だった。
「あ~…」
勇都の斜め後ろに居たはずの老婆の姿が消えた。
勇都の見間違いでなければ、地中に吸い込まれていった。
(ヤバイ!この砂の下に何かが居る!!)
勇都は、毒の女神サマエルが変化した神の武器、魔剣グランベリーを鞘から抜いて握る。
勇都は、馬を操っていた男の背を追いかけて走って行く。
(勇都よ、この下には微かだが毒の匂いがするぞ。倒せば、わしの腹が膨れるぐらいのモンスターがおる。気を引き締めろ)
サマエルが勇都に呼び掛ける。
「はい、師匠!」
勇都達が走っているのを見て、若いカップル達は動揺する。
「ねえ、ダーリン。あの人達走っているよ。喉も乾いてきたし付いて行った方が良…」
若い女性は、男性に一緒に逃げようと言おうとした。
が、直ぐ隣にいた恋人の男が居ない。
「え、あれ?さ、さっきまで居たのに…ねえ、何処…返事してよ…」
女性は青ざめて怯える。
辺りを見回す女性。
すると、女性の真上から何かが音を立てて降ってきた。
女性は、ふと見上げる。
黄土色をした長い何かの姿が見えた。
丸い部分から何か赤いものが垂れていた。
それは真っ赤な血だった。
血が流れている所には、人の手があった。
女性は、その手に覚えがあった。
その手の指には、銀の指輪があった。
それは、自分とおそろいの指輪。
彼氏のものであった。
丸い所から男の手が出ていた。
女性は、降りかかったものが血だとようやく気付く。
「え…あ…」
女性は、身動きできなくなり固まる。
すると、男性の手が落ちてくる。
と同時に女性は見た。
丸い輪のようなものが白く鋭く尖り広がる。
それは、花が咲くようにゆっくりと広がり、鋭く細く見えた。
まるで歯の様だった…
若い女性は、その光景を見たのが最後だった。
黄土色の何かは女性を飲み込んで行った。
勇都達に続いて走っていた商人の男が絶叫する。
「出た!サンドワームだ!!!」
勇都達の後ろには、砂虫を呼ばれるミミズの様な姿をしたモンスター。
サンドワームが、口を開き勇都達を見つけるのだった…




