第1話 勇都、砂漠を行く…
砂漠を越えようとしている馬車が見える…。
荷台には、人が数人乗っていた。
荷台の前には、馬が数匹いて、砂漠をゆっくり歩いて行く。
荷台には、商人風の男性や、若い男女のカップル、年老いた老婆が居た。
「うわ~。日差しが暑い。殺人光線だー。ヤバイ。」
荷台から外を覗き込み男は項垂れる。
外は、容赦なく太陽の光が照らしつけている。
雲一つない青空。
しかし、温度と太陽の日差しが緩むことなく注いでいた。
(勇都よ。暑いのはわかるが、涼しくならんぞ。愚痴ばかりでは。)
魔剣グランベリーに変化したサマエルが勇都に呼ぶ。
勇都は、ボルシチ共和国を出てターメリクへと向かっていた。
関所で、馬車でターメリクの首都に行けると勇都は知る。
お金を出して、馬車に乗り込んだ。
そして、今、砂漠を横断中だった。
勇都は、ボルシチ共和国のギルド、鷲の爪の長モーリスからターメリクの事について聞いていた。
ターメリクの国は、昔から砂漠に住む部族達が領土を獲得する為に戦いを続けていた。
しかし、その中である部族が強さを発揮し、敵対する部族を倒し服従させターメリクの国を統一した。
今は、戦も無く穏やかな国になっていた。
だが、ターメリクに訪れた者達は口を揃えて言う。
あの国には、希望以上に絶望があると…
ターメリクの首都のソルツにギルドがある。
そこで仕事を受け、資金を稼ぎ旅をしていこうと勇都は考えていた。
ゴン
突然、馬車の下から音がする。
「ん、何か大きな音が聞こえてきたな?」
勇都は、荷台の中から耳を澄ませる。
馬を操る男性が叫ぶ。
「い、いかん。奴らが来る!皆さん、これから飛ばします。衝撃に耐えて何かに摑まって我慢していてください!!」
男性が馬に鞭を叩く。
馬は、興奮し走り出した。
荷台の中にいた商人風の男性が、青ざめた顔をして怯えていた。
「砂漠に生息するさ、サンドワームが居るのか?これから商売しなければならないんだ。こんな砂漠の真ん中で死ねない。」
男性は頭を抱えていた。
(勇都、いつでも戦える準備はしておけよ。)
魔剣グランベリーに姿を変えたサマエルが勇都に言う。
勇都は、無言でグランベリーの柄を握りしめる。
「ねえ、大丈夫なの?何が起きるの?」
「大丈夫さ。心配はないさハニー。」
若い男女のカップルは抱き合って励まし合っていた。
「おらは、あそこに行くまではまだ死ねないべ。」
年老いた老婆は、手を合わせて拝んでいた。
ドーン
「うおっ!!!!」
勇都は、思わず声を上げる。
馬車が下から何かに体当たりされた。
馬車が上空に高く浮かび上がった。
荷台の中の勇都や、他の者達の体が宙に浮く。
「うわわ、お、落ちていく!!」
馬車は、砂漠へと緩やかに落ちて行った…
 




