第22話 決着…
本棚を背に、サマエルが姿を変えた魔剣グランベリーを宰相ゼノンに向ける勇都。
「…ふん。もう騙されんぞ。強がりを止めろ。その後ろにはゲルナーが居る。どうせこれから私の操る手下共にお前は殺されるから教えてやったよ。外の奴らは、お前を片付けたら全員始末してやる。」
ゼノンは、勇都に向かって歩く。
ゾンビやスケルトン達もゆっくりとゼノンに付いて行く。
するとゼノンが立ち止まる。
「…???ん…あ…お、お前、私の体にな、何をし、た…」
ゼノンは、額から油汗を掻いていた。
顔色が真っ青になり腹に手をやっていた。
ゼノンは、跪き体を震わせ始める。
ゼノンは、青白い顔をしながら勇都を睨む。
「僕は貴方の背中を先程斬りました。このグランベリーから体内に毒を入れさせて頂きました。」
勇都は、冷たい眼差しでゼノンを見る。
「き、貴様…一体何の毒を入れ…う…お…がっ…」
ゼノンは、床に胃の残存物を吐き出した。
「毒は、ラザニア王国で手に入れたものなんです。毒キノコのものです。結構効くんですよ。」
勇都は、グランベリーの柄から白い球体を取り出してゼノンに見せる。
「白いキノコでして。食べると体が痺れ、熱が出てだるくなる。吐き気も出て動けなくなります。あ、でも死ぬことはありません。回復するまで時間はだいぶかかりますが…」
勇都は、ラザニア王国に居た時に手に入れた毒を使いゼノンを斬った。
「はあ、は…は…」
ゼノンは過呼吸気味となる。
「宰相ゼノン。貴方が、罪を認めるのであれば命は助けます。ここから去ってくれることを約束してくれればですが…」
勇都は、奥の本棚の奥に行こうと本を探り始める。
するとゼノンは、ゆっくりと立ち上がった。
「そ、それは出来ん。…げ、ゲルナーはやがて殺す予定だ…そうしないと私が…」
ゼノンは、懐から小さなロッドを出す。
ロッドの先の部分を抜く。
そこには刃があった。
「お、お前を殺す…私は、この国の…王になるんだ…」
ゼノンは、足元をふらつかせながら勇都にロッドの刃を向ける。
勇都は、目を細めてゼノンに言う。
「もう一度言います。命が欲しければ、ここから去って下さい。」
グランベリーから小さな紫色の炎が出ていた。
「ふ、ふざけるな…貴様の様な若造に…我が野望が潰され…るなんて…ここまで来るのにどれだけ時間と…か、金を掛けたと…思って…」
ゼノンは、ロッドを勇都に投げつける構えをしていた。
「う…う…うがああああああっ!!!!!!」
ゼノンは、ロッドを勇都目掛けて投げつけた。
「ポイズンウィップ!」
勇都は、グランベリーから出た毒の炎を鞭のように操った。
炎はしなやかに伸びる。
ロッドを床に叩き落とした。
そして、再び炎を動かす勇都。
ゼノンの顔に炎を叩きつけた。
「ぎゃっ!!」
ゼノンの顔が紫色に染まり焼ける。
ゼノンは、ひっくり返り倒れる。
「あ…う…が…」
ゼノンは、顔にキノコの毒を入れられた。
顔が麻痺し、言葉を上手く発せなかった。
全身が痙攣し始める。
眼が白くなり、意識が混濁する。
(わ、私はここで終われない。ゲルナーを倒し、この国を支配する。そう言う約束で動いてきたんだ…ボルシチ共和国の新たな王は、私。ゼノン王のものだ…)
ゼノンは、天井に手を伸ばす。
「ま、ま、まぉー、魔王さ…ま…」
ゼノンの伸ばした手は、床の絨毯に落ちて行った。
ゼノンは、全く動かなくなった。
すると、周りにいたゾンビ達の体が砂の様に消えた。
スケルトン達は、音を立てて床に骨を落としていき崩れていった。
ゼノンが死んだことを示した瞬間だった。
ゼノンは、顔に毒を浴びた。
それが体中に周り、心臓に達した。
心臓の動きが止まり、ゼノンは命を落とした。
そんな事を知らずにゼノンはこの世から去っていった。
動かなくなったゼノン確認した勇都。
勇都は、本棚の方を見る。
本棚を弄ると動き、奥の扉が現れる。
扉をゆっくりと開け、勇都は進む。
そこには、痩せこけていたゲルナー王が居た。
「ゲルナー王。ご無事ですか?」
勇都は、ゲルナー王に駆け寄る。
「あ、あ、あ。な、何とか生きておる。君は一体何者だ?」
ゲルナー王の問いに勇都は答える。
「僕はただのアサシンですよ。」
勇都は、ゲルナー王に笑顔を見せるのだった…




