第20話 勇都VSゼノン…
「お前は何者だ?私が誰かわかっているのか?」
ゼノンは、勇都をじっと見る。
ゼノンの足元の魔方陣が赤く怪しく光り輝いていた。
「この国の宰相ゼノンさんですよね…ボルシチ共和国を乱した張本人ですよね?」
勇都は、サマエルが変化した魔剣グランベリーの柄を握る。
ゼノンを見て笑う勇都。
「む、小僧。何が可笑しい?」
ゼノンは、勇都の顔を見てムッとしていた。
「ははは。だって、この国を狂わせた人が、こんなただのおっさんだったなんて…。いや、ウケますよ。笑いが止まりませんね。」
勇都は、笑いを堪える仕草をする。
「な・ん・だ・と…」
宰相ゼノンは、顔を真っ赤にしていた。
眼が血走り、怒りの表情を露わにしていた。
「貴様、名前は何という。このこそ泥が!」
ゼノンは、勇都に何者か問いただす。
勇都は、口笛を吹きながらゼノンに笑顔を見せる。
「貴方に名乗る名前なんてないですよ。それに僕をこそ泥呼ばわりするおっさんに語る名前はありません。教えるわけないじゃないですかー。」
勇都は、ゼノンに向かってヘラヘラと笑う。
ゼノンは、更に顔を真っ赤にしていく。
(そうじゃ。勇都。もっと奴を馬鹿にしてやれ。)
サマエルが勇都に内密に呼び掛ける。
勇都は、ゼノンの部屋に入る前にサマエルと打ち合わせをしていた。
戦う前にゼノンと言う男が何者か理解する必要がある。
少しでも情報を引き出すために相手をわざと怒らせる。
相手が乗らなければそれまでであった。
相手との交渉術を勇都に軽く教えていた。
しかし、勇都は、自分が上回るほどの立ち回りをしていた。
(勇都よ。中々やるではないか。見直したぞ。)
サマエルは、勇都の度胸とゼノンを怒らせるほどの話術に内心感心していた。
「まあ、おっさんに1つ教えといて上げますよ。僕がここに来たのはクソみたいな宰相のアンタがどんな人間か知りたかっただけです。もう、帰りますよ。よ~くわかりましたから。」
勇都は、振り返り帰ろうとする。
「待てい!小僧ぉぉぉぉっ!!人の部屋に無断で侵入し勝手に帰れると思っているのか?」
ゼノンの脇に居たゾンビやスケルトンが勇都に向かい動き始める。
すると勇都は、溜息を吐く。
「…はー、わかりましたよ。やはり只で帰してくれませんよね。」
勇都は、グランベリーを抜いてゼノンに刃を向ける。
「ボルシチ共和国の悪、宰相ゼノン。気が変わったよ。あんたを倒す!!!」
勇都は、冷たい眼差しをゼノンに向ける。
ゼノンは、驚いていた。
先程までヘラヘラ笑っていた目の前の男が、急に険しく冷たい表情で自分に殺意を向けてきた事に…。
「フ、フ、フハハハハハ。何を言いだすかと思えば。」
ゼノンは、突然笑いだす。
「お前、1人で私に勝てるとでも思ってるのか。私は、死人を操るネクロマンサー。お前の周りには我が下僕のゾンビやスケルトンがいる。お前を今、一瞬で殺すのは容易い事なのだ。馬鹿な奴だな。」
ゼノンは、勇都に迫っていく。
「…………」
勇都は、しばらく黙っていた。
「む、小僧。今になって怖くなったか?」
ゼノンは、勇都の顔を覗き込む。
すると勇都は口を開く。
「ふ、う、あ、アハハハハハハ。笑える。マジで。」
勇都は、笑い始める。
勇都は、ゼノンに笑顔を見せて言う。
「おっさん。あんた、僕が1人で来ていると本気で思ってんの?」
ゼノンは、勇都の言葉の意味がよくわからなかった。
すると外から何か大きな音や声が聞こえ始めてきた。
「ん?何だ。外が騒がしいぞ。一体何事だ!!」
ゼノンは、外からの音に気づきベランダに近づく。
「見てみなよ。しっかりと外の様子をさ…」
勇都は、ゼノンの背中を見て妖しく笑うのであった…




