第16話 地下牢にて…
勇都は、下に続く階段を降りる。
気配隠蔽の効力も切れて自分の姿が見えた。
勇都は、ゆっくりと階段を降りて進む。
すると薄暗い狭い部屋が左右にあった。
左右鉄格子で檻があった。
強烈な悪臭がそこには漂っていた。
勇都は、あまりの臭さに吐きそうになり手を抑えていた。
(ここは、どうやら地下牢じゃな。)
魔剣グランベリーに変化したサマエルが部屋を見て言う。
勇都は、地下牢を見回す。
人のいる気配があった。
勇都はゆっくりと近づいていく。
「き、君は誰だ…」
小声で勇都に呼び掛ける者がいた。
勇都は、牢屋を見る。
すると髭面のプレートメイルを着ていた男性と頭が禿げ上がった丸まった男性が勇都を見ていた。
勇都は、自分の詳細を語る。
「冒険者の方か。私は、ボルシチ共和国の警備隊隊長のポールだ。そして隣は、ゲルナー王の側近のテッド卿だ。」
ポールと名乗った男は、勇都に自分達の紹介をした。
「ポールさん達は何故ここにいるんですか?」
勇都は、ポールに質問をする。
ポール達は、ボルシチ共和国でゲルナー王の下で働いていた。
しかし、宰相ゼノンの反乱が起きた。
ゲルナー王が囚われ、城にはゼノンの召喚したスケルトンやゾンビ等の死人が蔓延し始めた。
ポール達は、テッド卿らと共にゲルナー王を救う為にゼノンに戦いを挑んだ。
が、仲間達は倒され、自分達はここに幽閉されてしまったとの事だった。
元々この地下牢は罪人を入れておく場所であった。
が、今は、ゼノンに逆らった者達が牢に入れられて捕まっていた。
「この奥にもゼノンに逆らった者達が多く捕まっている。この先には何もないよ。」
ポールは、暗い顔をしていた。
「ポールさん。ゲルナー王は何処にいるのですか。この城の中にいますかね?」
勇都は、ポールに聞く。
するとテッド卿が口を開く。
「いや。冒険者よ。王はここには居ない。王は、この城から離れたゼノンの館に居る。私は、捕らわれる時にゼノンに聞いたんだよ。するとゼノンは、自分の館に丁重に扱っていると笑っていた…王を一刻も速く救いたい。私はどうなってもよいが。」
テッド卿は、とても悔しそうな顔をしていた。
薄汚れた身なりをしていたが、気品と威厳を勇都はテッド卿から感じていた。
「そうですか。教えてくれてありがとうございます。僕は、これからゼノンの所に行こうと思います。その前にここに居る皆さんを助けようと思います。地下牢を開ける鍵は何処かありますか?」
勇都はポールに聞く。
「気持ちはありがたい。が、それは厳しいかと思う。我々には構わないでいい。」
ポールは勇都の申し出を断った。
「え、どうしてですか?」
「それは…」
ポールは、話を続けようとした時だった。
ドスン
勇都の後方から音が聞えた。
重い音を立てながら何かが近づいてきた。
「冒険者よ。今すぐここから逃げるんだ。」
ポールは、勇都にここから去るように促した。
勇都は、音のする方を見る。
そこには、太い骨格のスケルトンが歩いていた。
スケルトンは、巨大な斧を持っていた。
そして、腰の辺りに皮のベルトをしていた。
そこには数本の鍵があった。
「あいつだ…あいつがここの地下牢の番をしているんだ…」
ポールは、勇都にスケルトンの事を教える。
勇都は、無言で魔剣グランベリーを抜いていた…




