第14話 モーリスの依頼…
「お前、本当に行くつもりか?1人で…」
モーリスは、目の前の勇都を見て驚いていた。
アサシンで鉄等級のギルドカードを持つ勇都。
レベルもそんなに高い方ではなく、強くはないと思っていた。
今まで勇都以上のギルドカードを持つ冒険者がゼノンに挑んだ。
が、誰一人として戻ってはこなかった。
「大丈夫です。ヤバい時は逃げて帰ってきます。」
勇都はモーリスにニコリと笑う。
「…よし。危ない時は直ぐに逃げろよ。教えてやるよ!」
モーリスは、勇都に宰相ゼノンの場所を教えた。
ゼノンは、ゲルナー王の城から少し離れた3階建ての館に居る。
昼間は、城で執務をしていて夜に戻るだろうと…
「ゼノンの館は、この数年で改築を相当しているらしい。色んな業者が入っていって工事をしていったらしい。内容はよくわからんが。ひょっとしたら、城の中にゼノンの館に詳しい奴がいるかもしれんぞ。それに城の中に、ゲルナー王の配下や兵士達も監禁されていると言う噂話も聞くよ。本当か嘘かわからんがな。」
モーリスは、勇都にわかる限りの情報を伝えた。
「ありがとうございます。モーリスさん。じゃあ、ゼノンの館に行く前に城に潜入してきます。」
勇都は、モーリスに会釈する。
勇都は、鷲の爪を出ようとした時だった。
「おい!待て坊や!!」
モーリスは勇都を呼び止める。
「え、何かありました?」
勇都は、モーリスに呼び止められた理由がわからなかった。
「…受付にこい…」
勇都は、モーリスに従い受付に行く。
モーリスは、受付の台に紙を用意する。
「いつもはギルドの受付嬢達にさせているが…。久々の受付の仕事だ。何十年ぶりにやるか…」
モーリスは、上質な紙にインクを付けたペンで文章を書く。
「おい、坊や。今回のミッションだ。ギルド長の俺からの依頼だ。引き受けてくれるか?!」
モーリスは、文章を勇都に見せる。
勇都は、それを見る。
内容は、このように書かれていた。
【命を大事にし、この国に蔓延る悪の元凶、宰相ゼノンの情報を入手する。できる事ならゼノンを倒す。】
「坊や。死ぬなよ。ちゃんと報酬は出るからな。引き受けてくれるか?」
モーリスは、笑って勇都に言う。
「いや、モーリスさん。僕はお金が欲しいわけではないんです。ただノルンの村を…」
するとモーリスは、勇都に掌を向けて話を止めさせる。
「お前さんの事情も分かるが、これはな。俺からの依頼。そして、バーディーの街の為。いや、ボルシチ共和国の為のミッションなんだ。受けてくれないか?」
モーリスの目が勇都に物語る。
「…わかりました。引き受けます!」
勇都は、モーリスに返事をした。
「気を付けていくんだぞ!」
勇都は、鷲の爪から出て行った。
それを見送るモーリス。
「さて、俺も飲んだくれてはいけねえな。色々動いて行かんとな。これから忙しくなるぞ!」
モーリスの顔は生き生きとしていた…




