第12話 鷲の爪…
勇都は、ギルド、鷲の爪に入っていった。
ラザニア王国にあった虎の牙と同じような活気があるかと勝手な解釈をしていた。
しかし、勇都の目の前の光景は違った。
建物内には誰も居なかった。
受付にも、仕事や仲間を求めている冒険者達の存在も皆無であった。
内心驚く勇都。
テーブルやカウンターも埃だらけだった。
「おい!誰だ!!勝手に入ってくるな!!!」
勇都の後ろから声がする。
勇都は、サマエルが変化した魔剣グランベリーの柄に手を掛けて、声の方向に振り向く。
すると1人の50代くらいの男性が居た。
勇都に、真っ直ぐ槍を向けていた。
「あ、いや、妖しい者じゃないです。僕、冒険者です。う、嘘じゃありません。ボルシチ共和国で最大のギルド、鷲の爪に興味があったんで来たんです。」
勇都は、鉄等級のカードを男に見せる。
「ん~、む。お前本当に冒険者なんだな。」
男は、勇都に向けていた槍を下げる。
「俺の名は、ここの鷲の爪のギルド長をやっているモーリスと言う。」
背は低いが、口ひげに精悍な顔立ち。
様々な冒険をしてきた精通者という貫禄が漂っていた。
「初めまして。僕は、ラザニア王国から来ました緒方勇都です!」
勇都は、モーリスに挨拶をする。
その次の瞬間、モーリスは、口を開いた。
「坊や。悪いが、今この街は大変なんだ。仕事はない。帰ってくれ。誰も冒険者は居ないぞ。」
モーリスは、木の椅子に腰掛ける。
勇都は、そんなモーリスに近づく。
「モーリスさん。僕は、宰相ゼノンの情報を聞きたいんです。教えてください。」
勇都は、モーリスに事情を説明した。
「…坊や、お前、ノルンの村から来たのか…」
モーリスは、勇都をじっと見ていた。
「ふう~、わかった。ジャバリエ村長には、奇跡の金を貰ったりしていた。世話になったからな。そこの椅子に腰かけろ。」
モーリスは、口髭を触りながら語り始めた。
鷲の爪は、世界各地の冒険者がやってきて賑わっていた。
ボルシチ共和国にも財宝が眠ると言われる幾つかのダンジョンもあり、冒険者達はパーティを組み、ミッションを熟していた。
バーディーの街も、奇跡の金を始めとした特産物の販売。
各地の温泉施設に行くために旅人は必ず寄っていて潤っていた。
しかし、1年前から異変が起きる。
ボルシチ共和国の国王が突如、姿を見せなくなった。
街の者達は、国王が病に倒れたのかと心配になった。
その1か月後、国王の片腕である宰相ゼノンが現れ宣言する。
ボルシチ共和国は自分の物となった。
これからは、自分の言う事をしっかり聞き従えと言った。
ゼノンは、とても穏やかで大人しい宰相のイメージであった。
が、それは真の姿ではなかった。
ゼノンは、強引な政策や施策を敢行し始めた。
「ま、決め手はあれだな…」
モーリスは、グラスに酒を注ぎそれを一気に飲んだ。
「モーリスさん、あれとは一体何のことですか?」
勇都がモーリスに質問する。
「これから教えてやるよ…」




