第10話 地下水路での激闘…
階段を登っていく勇都…
すると目の前に丸まった巨大な鼠が居た。
赤い目でこちらをじっと見ている。
今にも飛び掛かってきそうな勢いで唸っていた。
(勇都よ。この鼠は毒を持っている。倒して得たい所だが先を急がなければならん。無理して倒さなくて良いぞ。)
魔剣グランベリーに変化したサマエルが勇都に言う。
「そうですね。先を急ぐので。やり過ごします。」
勇都は、目の前の鼠を気配隠蔽で姿を隠し、隙を付いて先に進もうと決めた。
気配隠蔽を使おうとした時だった。
勇都は、背中から何かを感じ取った。
「躱せ!!」
サマエルの声に従い勇都はしゃがむ。
すると何かが勇都を飛び越えた。
それは、同じ種類の大きな鼠だった。
勇都の前に、大きな鼠が2匹立ちはだかる。
鼠達はゆっくりと勇都に近づいていく。
ここで気配隠蔽を使ったとしても、奥の道を抜けることが出来ない。
右脇は水路が流れていた。
毒の鞭等のスキルも発動まで時間が掛かる。
勇都は、どう切り抜けるか考えていた。
(このまま強引に鼠を攻撃しても、ダメージを受けてしまう。でも倒さないと前に進めない。落ち着け。落ち着くんだ…)
勇都は、冷静になるように自分に言い聞かせる。
鼠達が蹲り立ち止まる。
唸り声が高くなり、勇都に狙いを定める。
勇都に飛び掛かり襲い掛かろうとしていた。
「勇都よ。奴ら攻撃してくるぞ。どうする?」
サマエルの言葉を聞く勇都。
すると勇都は何かに気づいた。
サマエルが姿を変えた魔剣グランベリーを抜き、鼠達に突き出す。
「さあ、こい!!」
勇都は、鼠達に向かって気合を入れて叫んだ。
次の瞬間だった。
2匹の獰猛な鼠達が勇都に飛び掛かる。
勇都の体に被さり噛みついていくはずだった。
が、そうはならなかった。
勇都は、鼠達が来る瞬間、水路側に全速力で走る。
「たあーっ!!!」
勇都は、水路に向かって飛んだ。
鼠達を躱した勇都。
鼠達が着地した瞬間と同時に、勇都は、水路側の壁を蹴っていた。
蹴った反動で鼠達の背後に周り着地する。
鼠達は固まっていた。
「気配隠蔽!!!」
勇都は、姿を完全に消した。
鼠達は、勇都の姿を見失い見回す。
「くらえ!!!」
勇都は、水路側の鼠の背中をグランベリーで突き刺した。
どす黒い血が噴き出し、鼠は絶叫した。
鼠はそのまま痙攣し倒れた。
もう一匹は、立ち止まり固まっていた。
勇都は、もう一匹の鼠の脇腹をグランベリーで突き刺す。
鼠は、突然の攻撃に絶叫する。
そして、体をフラフラさせ通路に倒れる。
以前、ベルムダンジョンで獲得したゴブリン達が持っていた毒を使った。
とても強力で白蛇を弱らせるほどの威力だった。
鼠は口から大量の血を吐いていた。
勇都は、グランベリーを逆手に取って握り返す。
鼠の頭に深々とグランベリーを突き刺した。
すると鼠は、全く動かなくなった…
‐10分後‐
「よし、鼠達の毒も取れたし先に進もう勇都よ。」
「はい、師匠。」
勇都は、死んだ鼠達から毒を獲得した。
死んだ鼠達に手を合わせる勇都。
勇都は、慎重にゆっくりと先を進む。
蜘蛛の巣はびっしり張っていたが、特にモンスターは出てこなかった。
やがて、歩いて行くと行き止まりになった。
目の前に細い鉄の梯子があった。
強度を確認する勇都。
何とか登ることが出来そうだった。
勇都は、足を踏み外さない様に登っていく。
すると、天井に木の四角の正方形の形をした扉らしきものがあった。
人が1人潜り抜けられるほどのスペースだった。
扉を押すがビクともしない。
勇都は、グランベリーの柄で扉を力一杯叩きつける。
ミシッ
木の扉が割れた。
勇都は、木の扉を取り、登る。
登るとそこは、小屋の中だった。
小屋の中には、藁等が大量にあった。
藁が勇都の口の中に入る。
「ぶふっ、こ、ここは一体何処だ?!」
辺りを見回すと人のいる気配はない。
慎重に動く勇都。
小屋の出口の扉を見つける。
鍵は掛かっていなかった。
そっと勇都は扉を開ける。
すると、外の景色が見えた。
丁度、朝日が昇ろうとしていた。
朝日が勇都のいる所を照らす。
勇都が出てきた場所は水車小屋だった。
水車小屋の先から、バーディーの街並みが見えた。
「ついに潜入できた。これから情報収集だ!」
勇都は、バーディーの街中へと向かって行った…




