第8話 宰相ゼノン…
バーディーの街中に一際目立つ大きな建物がある。
3階建ての館だった。
ある一室に2人が居た。
1人は、50代風の男。頭はスキンヘッドで、赤いローブに身を纏っていた。
そしてもう1人は人間ではなかった。
豚の顔をした太った異形の者だった。
「…という事で、私がノルンの村に行ったらそんな事があったんですよ。だから、始末してやりました。ゼノン様の手下を…グフフ。」
「そうか。ミポーよよくやってくれた…」
赤ローブに身を纏った男は、ボルシチ共和国の宰相ゼノンであった。
「ゼノン様。これからノルンの村を壊滅するのですか?面白くなりそうですね。ブフフ…」
ミポ―は、下品な笑い声を上げる。
「いや。暫く様子を見る。奇跡の金があるからな。まあ、いつでもあんなちっぽけな村は壊滅できる。腕の立つ冒険者はいるみたいだが、こちらが本気を出せばそんな奴等も蹴散らせられる。」
ゼノンは、ミポーの問いに答える。
「私も見たいですね。ノルンの村が壊滅する所を。ブヒヒ…」
ミポーは、醜悪な顔で笑い顔を作る。
「ミポーよ。お前は行かなければならないだろう。」
「見たいのも山々ですが、戻らないと魔王様に怒られちゃいますので…。これでボルシチ共和国から出ます。色々行かないと行けないので。ブヒヒ…」
(本当に魔王様の使いでなければ消したい所だ。この豚め!)
ゼノンは、不気味なミポーに不快感を抱いていた。
「それでは、ゼノン様。また来ます。御機嫌よう。ブププッ…」
ミポーは、ドスドスと重い音を立てながら部屋から出て行った。
ゼノンは、部屋の奥の本棚に近づく。
本棚の分厚い本を一冊とる。
すると本棚が横に動いた。
奥に続く通路が現れる…。
ゼノンは、歩いて行く。
奥には一つの部屋があった。
そこに、モンスター達がいた。
スケルトンや腐敗したゾンビがうろついていた。
スケルトン達の中心に1人の男が鎖に繋がれていた。
ゼノンは、男を見てニヤリと笑う。
「フハハ。無様ですな。間も無くです。準備が出来ました。私がこの国を手に入れる事ができますよ。貴方の時代も終わりです。」
ゼノンは、男を見下していた。
「…ぜ、ゼノン。お、お前の思い通りにはさせない…この国は好き勝手には出来ないぞ…この国に危機を察し必ず立ち上がる者がでてくる。考え直せ…」
鎖に繋がれやつれていた男がゼノンに説教する。
「ほぉ~、一体誰が貴方を。そして、この国を助けてくれるのですかね?もしそんな者達が居れば、私は今頃死んでいる。そして、貴方もそんな状態ではない。現実がこれだ。誰も来ないではないですか…」
ゼノンの発言で男は無言になる。
「貴方はまだ利用価値があるから殺しませんよ。まあ、これからを見てて下さい。いや、部屋にいるから見れないか。ハハハハハハハッ!!!!!」
ゼノンは、高らかに笑う。
「それではまた来ます。王よ。」
ゼノンは、そう言って部屋から去っていくのであった…




