第10話 勇都、少年を助ける…
「ふむ。何となくだが、この国何か陰気臭いのう。」
魔剣グランベリーに姿を変えたサマエルが呟く。
サマエルは、ボルシチ共和国の国の雰囲気に只ならぬものを感じていた。
「師匠もそう思いますか。言葉にするのが難しいのですが、何となく暗い雰囲気がするんですよ。」
「ふむ。この国の空気、自然の流れがぎこちない。生命のパワーが低下している…」
「この国、何が起こっているんですかね?」
すると勇都達の目の前に、恰幅の良い荷物を背負った商人風の中年男性が見えてきた。
「こんにちは!」
勇都は、男性に声を掛ける。
「あ、ああ…どうも…」
男性は、元気がなさそうだった。
「あのボルシチ共和国の中心部まで行きたいんですけど、教えていただけませんか?」
勇都は、男性に質問した。
「この先にあるノルンの村から、2時間程の場所にある。バーディーの街だ。」
男性は、勇都に教える。
「ありがとうございます。」
礼を言う勇都。
「ああ、お気を付けて…。旅の人よ、悪い事は言わない。速くこの国から出た方がよいですよ。」
男性は、勇都に向かって言う。
「え、そんなにマズいんですかココ?」
「商売になりませんよ。モンスターも出るし、治安も悪く、私も一番大きい街のバーディーでは商売にならなかった。大損ですわ!」
男性は、少し怒気の籠った声で勇都に語る。
「ま、ご自分の目で確かめた方が良くわかります。それじゃ…」
男性は、歩いて勇都達から去っていった。
(一体、この国に何が起こっているんだろう?)
勇都達は、再び歩いて行く。
しばらくすると、声が聞こえてきた。
「たっ、助けてぇ!!!!!」
少年が泣きながら、勇都達に向かって走ってくる。
少年の後ろには、大きな猪がいた。
(勇都よ。あの猪を仕留めよ。猪の牙は雑菌や毒が満載じゃ。)
「気配隠蔽!!」
勇都は、姿を消す。
「え?!」
少年は、急に勇都の姿が消えて立ち止まる。
ドドドドドドド
巨大な猪が少年に向かって突進してきた。
少年は、動けなかった。
「ああ…」
少年が怯えた表情で猪を見た。
その瞬間だった。
猪は、地面に血を流し倒れた。
「??????」
少年は、呆然としていた。
すると倒れた猪の傍に、勇都の姿が現れる。
グランベリーで数回、猪の胴に突き刺して止めを刺した。
呆然と勇都を見ている少年。
勇都は、少年を見てニコリと笑う。
「君。もう大丈夫だよ。」
勇都は、少年に笑顔を見せるのであった…




