第7話 夜に迫る足音…
ラザニア王国から出るために受付に並ぶ勇都。
それから1時間が過ぎた。
遂に勇都の番になった。
(何とかギリギリ受付出来るかなー。)
微妙な時間だった。
すると突然、関所の鐘が鳴り響く。
5回なった。
夕方の17時の合図だった。
「あ…」
勇都は、鐘の音を聞き呆然とする。
受付の時間が17時までだった。
書類を開いた関所の兵士が勇都を見る。
「冒険者よ。申し訳ないが、今日の業務はこれで終わりだ。明日、朝一番で来てもらえば優先的に審査する。名前と書類に記入を…」
兵士の申し出に、勇都の後ろに並んでいた者達が溜息を吐く。
勇都は、後ろを振り向く。
まだ20人くらいの商人や冒険者、旅人等が並んでいた。
(仕方ないか。まあ、明日朝一で手続きしてくれるからいいか…)
勇都は、書類に記入をし受付を後にした。
勇都は、関所の近くの宿屋へ向かう。
ここしか泊まる場所がない。
しかも、1軒しかなかった。
勇都は、宿屋に入る。
受付の恰幅の良い男性が勇都をじろりと見る。
「お客さん、泊まりを希望か?」
「はい、お願いします!」
しかし、男性は首を振る。
「申し訳ないが満員なんだ。」
勇都は、愕然としていた。
宿屋を出ていくと、他の者達も受付に行く。
しばらくすると憤慨して出てきた。
関所で通過できなかった者達は、仕方なく街へと戻って行った。
勇都は、街に戻って泊まろうかと考えていた。
「勇都よ。お前さえよければ、今日はこの近くで野宿でもせんか?」
サマエルが勇都に話しかけてきた…
それから数時間後…
勇都は、焚き火をしていた。
関所から離れた野原で勇都は食事をしていた。
宿屋に泊れなかった。
しかし、勇都は悪い気がしなかった。
空には、無数の星々が浮かんでいた。
美しく見ているだけで癒された。
ベルムダンジョンや街の宿屋に泊ったりしていて、こんなにきれいな星々は見たことが無かった。
焚き火の火も、見ているだけで楽しくなっていた。
野宿も初めての経験だった。
食事を終えて、勇都は寝袋を出す。
「勇都よ。わしが呼んだら直ぐに起きよ。」
グランベリー化したサマエルが勇都にそう言った。
勇都は、サマエルの言葉に返事をし、寝袋へと入っていった。
そして、深夜…
(勇都。勇都よ…目覚めるのだ…)
サマエルの声に勇都は目を覚ます。
「な、何かありましたか?師匠?」
眠い目を擦り、勇都は目覚める。
「支度じゃ。支度せい、直ぐに。わしらの餌がやってきよった…」
サマエルは、嬉しくて笑っていた。
勇都の周りから足音がひたひたと迫ってきていた…




