第22話 勇都、目標が出来る…
驚き叫ぶ勇都。
「何を喚いておる。安心せい。わしは、お主を見捨てないぞ。」
サマエルは、ケーキを食べていたフォークを勇都に向ける。
「簡単な事じゃ。わしを潤わせれば死ぬことは無い。」
サマエルの言葉に勇都は反応する。
「師匠。な、なにすればいいんですか。」
勇都は、サマエルに恐る恐る聞く。
「それは、わしに毒を与える事じゃ。」
「毒?!」
サマエルは、立ち上がり勇都を見下ろす。
「そうじゃ。わしは毒の女神じゃ。毒の専門家。これでも天界では様々な毒を調合していた。当然自分自身の体に摂取し試したりしておった。封印されてしまい、力を大半失った。わしの体に毒を常に入れて行けば回復していくのだ。」
勇都は呆然として聞いていた。
「毒を獲得し、わしの変化したグランベリーに入れて行けば自ずと目標はクリアじゃ。前の白蛇と戦った時の様にゴブリンの毒を入れるようなことをすれば良いのだ。毒は、モンスターと戦ったり、自然に生息する草花等からでも大丈夫じゃ!それに、ケーキ等も食べれれば問題ない。要は、わしを腹ペコにさせるという事じゃ。」
「わ、わかりました。師匠、もしどのくらい出来なかったら死んじゃうんですか。」
勇都の質問にサマエルは答える。
「耐えられても3日が限度かのぅ。この世界では。」
勇都は完全に沈黙した。
目の前にいる毒の女神を3日間も空腹状態にさせれば、問答無用で死に至る。
それだけはしてはならないと考えてしまった。
「勇都よ。わしは、お前のレベルアップの為にも様々な事を考えておる。これからそれを教える。」
サマエルは、椅子に座って勇都を見る。
「勇都よ。この世界を旅しよう。様々な場所に行き、モンスターと戦い毒を獲得する。そして、お主を強くする。別に天界に帰るつもりもない。わしと共に歩むのじゃ。」
サマエルの発言で勇都の中で何かが変わろうとしていた。
死んでやって来た異世界。
生きるために惰性で生きてきた。
その中で、師サマエルは勇都に目標を与えてくれたのだった。
それは勇都に強制的なもの。
だが、それは勇都に一筋の光を示すものだった。
勇都は、内心喜びを感じていた…




