第20話 地上へ…
岩場から飛び出した勇都。
「無音!!」
勇都の体に電流が走る。
音を完全に消し、その場で暴れている白蛇に向かって走って行く。
苦しそうにのた打ち回る白蛇。
勇都は、白蛇の胴にグランベリーを思いっきり突き刺した。
ジャアアアアッ!!!
白蛇は、勇都に突き刺され叫ぶ。
ヒュン
白蛇の尻尾が勇都に向かってくる。
勇都は、後ろに思いっきり飛びのいて躱す。
尻尾が勇都の居た場所の地面を叩く。
土埃を上げ、大きな穴が開く。
「勇都よ。油断をするな。最後まで集中し攻撃するのじゃ!」
「はいっ!!」
勇都は、白蛇に向かって行く。
眼が見えずに大きな体を振り動いている白蛇。
勇都は、尻尾の部分を突き刺していく。
シャラアアアアッ!!
白蛇は、舌を出し絶叫する。
勇都は、グランベリーで尻尾を突きまくる。
白蛇の絶叫が更に強くなる。
次第に白蛇の力が弱まっていった。
尻尾が紫色に染まり始めた。
「よし。勇都、止めを刺してやれ。」
サマエルの言葉に勇都は無言で頷く。
白蛇は、体を低くし頭を地面に付ける。
勇都は、白蛇の頭に向かい走って行く。
そして、大きく飛び上がる。
「はーっ!!」
グランベリーから紫色の小さな炎が出た。
勇都は、白蛇の頭上にそれを力一杯突き刺した。
緑色の大量の血が噴き出す。
ジャアアアアアアアッ!!!!!!!
白蛇の今までで一番大きな咆哮だった。
それが白蛇の最後だった…
白蛇の体中から力が抜ける。
白蛇は地面に倒れ、全く動かなくなった。
「はあ、はあ、はあ…」
勇都は、過呼吸気味になっていた。
動かなくなった白蛇をじっと見る。
「最後の反撃はしてこない。白蛇は死んだ。勇都よ。勝ったぞ。」
サマエルの言葉を聞き、勇都は何かを感じる。
「う、うおおっ!勝った!!!」
勇都は、その場でガッツポーズする。
勇都は、白蛇に勝利した嬉しさで一杯だった。
体中の疲労が一気に吹き飛んだ気がした。
すると体の中が熱くなる。
「お、勇都よ。レベルが上がったみたいだな。」
勇都は、ステータスを開いて見てみる。
「え、こ、こんなに上がるの?」
勇都は驚く。
レベルが10となっていた。
そして新たな特殊能力も入手していた。
毒耐性、毒操作と見慣れぬ言葉があった。
「勇都よ。いつまで居るのだ。さあ、あそこに行くぞ。」
サマエルが勇都に呼び掛ける。
白蛇の死体の後ろが青白く輝いていた。
地面の下から光が出ていた。
「あ、あれが地上に出る転送陣ですか?」
「その通りじゃ。お主の念願の地上に出れるぞ。」
サマエルに教えられて、勇都は安堵する。
「やっと地上に出られる…」
勇都は、何とか生きて陽の光を見ることが嬉しく思えた。
勇都は、グランベリーを鞘にしまい転送陣へ向かう。
そして、青い転送陣に足を踏み出す。
すると勇都の体がその場から消えた。
勇都の前が眩しくなる。
眼を開ける勇都。
勇都の頭上には、太陽の光が注いでいた。
そこは森の中だった。
「地上に帰ってこれた…」
勇都は、それ以上何も言わなかった。
しばらくその場に立ち尽くしていた。
サマエルは呟く。
「何千年ぶりの地上。外の世界…うむ、悪くはない!」
勇都とサマエル。
2人は、地上にようやく戻ってきたのだった…




