第1話 勇都、職業アサシン…
緒方勇都、21歳。
現実世界では学生だった。
幼い頃に母が死に、父と2人暮らしだった。
家の住宅ローンもあり苦労する父を見て、高校卒業後は進学を諦めて就職する予定だった。
しかし、父の勧めで何とか頑張って大学に入学した。
卒業後は、自立し、父を助けるために、勇都はキャンパスライフとは無縁の生活だった。
バイトを何個も掛け持ちし働きながらの授業。
とある大雨の日。
勇都は、講義を終えてバイト先に向かう所だった。
しかし、横断歩道を歩いていた時、信号を無視してきた大型バイクに突っ込まれる。
物凄い速度でバイクに体当たりされ、宙に舞い上がる勇都。
勇都は、地面に叩きつけられた。
激しい痛みと、全身から噴き出る血を見て勇都は思った…
(あ、詰んだ。俺、死んだわ…親父、ゴメン…)
勇都が現実世界で覚えていた最後の記憶だった。
勇都は死んだ。
が、何故か今生きている。
生きている場所は、見たこともない異世界。
まるで某ゲームの様な中世の世界。
スマホも全く使えない場所。
勇都は、ある場所へと向かっていた。
それは、自分の仕事を与えてくれる冒険者ギルド、虎の牙だった。
大きな建物に入ると多くの人々が居た。
鎧に身を包んだ戦士や、魔術師等がひしめき合っていた。
勇都は、受付の窓口に行く。
すると受付に1人の女性が居た。
不愛想な褐色の肌をした制服を着た女ダークエルフが居た。
「今日は何の用?」
受付のダークエルフは、勇都を睨むように言う。
でも、長身でモデル並みの体型。
しかも、美人さんだ。
「え、えっと、こ、こんにちは。仕事ありますかね?」
勇都は、ダークエルフに恐る恐る聞く。
「あるけどさ。あんた、職業なんだっけ?」
ダークエルフは、淡々とした対応をする。
「僕は、アサシンです!」
勇都からその言葉を聞かされたダークエルフは、溜息を付いた…