第18話 白蛇、目覚め暴れる…
這って地面を進む勇都。
《よし。勇都、この辺から使え!》
「行くぞ。無音!!」
勇都は、特殊能力の無音を発動した。
全身に電流が駆け巡る。
無音…。
それは、勇都の起こす行動・動作の音を一切消すもの。
発動すれば相手に気づかれない。
気配隠蔽と違い、長い時間持つ。
気配隠蔽は、3分。
しかし、無音は6分持つ。
《ここから起き上がって、白蛇に近づけ》
サマエルの指示に従い、勇都は立ち上がり白蛇に向かう。
近づくと白蛇の寝息のような音が聞こえる。
シュー シュー
勇都は、白蛇の姿を見て言葉を失う。
白蛇は眠っているが、威圧感がハンパなかった。
近付く度に、身体のどこかが斬り裂かれるような感じがしていた。
更に冷気がより一層強まった。
勇都の吐く息が白くなって見える。
《よし。ここであれを入れろ。零すなよ。失敗するな。》
サマエルに言われ、勇都は再び、地面に伏せた。
勇都は道具袋から何かを取り出す。
それは、ゴブリンを倒した時に獲得した黒い液体の入った小瓶だった。
勇都は、魔剣グランベリーの柄の丸い球体を取り出す。
球体の蓋が取れる。
「よし。落ち着け勇都。慎重に入れるぞ…」
勇都は、小瓶の黒い液体を球体に流し込む。
満杯に入れると、蓋を閉める。
勇都は、その球体を柄に差し込む。
すると魔剣グランベリーが黒い炎を出した。
《勇都。今だ。蛇の頭に突き刺せえ!!》
「はいっ!!」
勇都は、小走りに白蛇に向かい走って行く。
無音の影響で白蛇に音は聞こえない。
白蛇は眠ったままだ。
勇都は、両手でグランベリーを掴み、白蛇の眉間に思いっきり突き刺した。
ズブッ
硬そうな白蛇の皮膚にグランベリーが突き刺さる。
白蛇は、目を開く。
金色の煌煌とした鋭い眼だった。
《勇都。離れるのだ。》
「はい!」
勇都は、グランベリーを抜いて全速力で後ろに走る。
シャアァーッッ!!!
白蛇は、完全に目覚めて叫んでいた。
長い二股の舌を出して起き上がった。
勇都を真上から睨みつける。
勇都が魔剣グランベリーで突き刺した辺りから、緑の血が流れていた。
白蛇は、勇都に近づいていく。
丁度、無音の効果も消えた。
《勇都。さあ、使え!》
再びサマエルの指示が勇都に飛んでくる。
「はい。気配隠蔽!!!!!」
勇都は、気配隠蔽を発動した。
今日最後の気配隠蔽だった。
白蛇は、急にその場に止まる。
気配隠蔽で勇都の姿を見失ったからだった。
《力の限り攻撃せよ!》
「うおおおおおっ!」
勇都は、グランベリーで白蛇の尻尾を突き刺す。
シャオオオッー
白蛇が叫ぶ。
勇都は、今度は、白蛇の胴を突き刺していく。
白蛇は、怒り狂って辺りを見回し尻尾を上下に振りバタバタさせる。
尻尾や胴体から緑の血が噴き出す。
「やあっ!!」
勇都は、白蛇の左目を思いっきり突き刺す。
白蛇の目から血が勢いよく噴き出てくる。
勇都は、再び白蛇の体を連続して突き刺していく。
《勇都。そろそろ離れろ。無理をするな。気配隠蔽の時間が終わるぞ。》
「はい。でももう少しダメージ与えないと…」
勇都は、尻尾の部分を突き刺していった。
白蛇の皮は意外に硬かった。
師匠のグランベリーでないと突き刺すことはできなかった。
ダガーで戦っていたら間違えなく折れていた。
勇都は、限られた時間で決着を少しでも速く突けたいと思い攻撃していた。
すると、勇都の手が見え始めてきた。
「やばい。もう終わる。」
勇都は、グランベリーを抜いて走る。
すると勇都の全身が完全に見えた。
勇都は、背後に寒気を覚える。
白蛇がこちらを凝視していた。
白蛇は、勇都の姿をようやく捕らえたのだった。
シャアーッ!!
白蛇は、怒りながら、口から緑色の液体を吐き出した。
液体が勇都の全身に掛かる。
「うわあああああっ!!!」
勇都の叫びが広間に鳴り響いた…