第50話 天守閣の秘密…
白き鎧を装着したユキヒロとネロは、天守閣へと登っていった。
「う…あ…ま、待って…」
サスケは、立ち上がり真上を見上げる。
ユキヒロとネロは、平然と城の屋根を駆けあがり天守閣へと向かって行った。
一方、勇都達は、上空から襲い掛かってくるガーゴイル達に抵抗していた。
「やあっ!」
勇都は、ガーゴイルを魔剣グランベリーと影切の二刀で斬り裂いた。
「畜生!まだ減らない。しつこいぜ。鳥野郎共がっ!!」
ジミーは、大鎌を振りガーゴイルの頭を真っ二つに割る。
「ユキヒロ様も追いかけなくてはいけないが、この鳥の怪物や蕾の妖を止めなければならないでござる。」
ハザンは、ガーゴイルを倒しながらも赤い蕾の根元を斬撃していた。
しかし、根の表面は固く、大した傷は付いていなかった。
「ハザン殿。炎筒はいざという時に使いましょう。」
アミナは、ハザンの近くに寄ってくるガーゴイルを倒していた。
息が上がり呼吸が荒くなっていた。
「仕方ない。あれを使うか…」
フューリーは、背中に背負っていた袋から何かを取り出し始めた。
「お、親方。ま、まさかあれを使うんじゃ…」
ジミーは、フューリーの近くにやって来た。
「ああ。緊急事態だ。このままじゃ俺達も全滅だ。この国も危ない。商売相手が減るのは、俺としてもトルネオ商会にとっても不利益だ。体張って何とかしないとな。ジミー、準備出来るまで守ってくれ。」
フューリーは、何かを組み立て始める。
「了解です。親方!!」
ジミーは、大鎌を構え直しヒューリーの背中を守る様に体勢を整える。
「ユウト!お前は、あの赤い蕾の奴何とかしろよ。お前の毒が意外と効くんじゃねえか?!」
ジミーは、勇都に向かって言う。
「やってみる。効くかどうかはわからないけど。」
「あの蕾の動き止めれば城の上に行けるんじゃないか?!」
ヒューリーは、片手で鉄の棒を組み立て、もう片方で火を点けていた。
勇都は、赤い蕾のモンスターを見上げる。
蕾はまだ開いていない。
少しずつだが小刻みに動いている。
蕾の高さが天守閣の高さと一緒だった。
「この蕾を何とかよじ登って飛べば天守閣に入れるかも…。まずは、こいつの動きを止めないと。」
勇都は、グランベリーの柄に玉を入れた。
「勇都。ユキヒロとあの風を使う奴を倒すぞ。」
グランベリーに姿を変えたサマエルが勇都に呼び掛けた。
「はい。師匠。」
勇都は、左手に持った影切を前に突き出して、右手に持ったグランベリーを腰につける。
「勇都殿。我々が援護します。貴方を必ず守る。」
アミナが刀を八相に構えて勇都の近くに来た。
「お願いします。じゃあ、行きます!!」
勇都は、赤い蕾の根元に向かって走った。
そして、勇都は、大きくジャンプした。
影切で根を突き刺す。
プシュッ
暗い緑色の液体が噴き出す。
影切の刃の先が少し突き刺さった。
勇都の右手に持つ魔剣グランベリーが紫色の炎を上げていた。
少し長く燃え上がる炎を影切の刃の先に突き刺す。
「ポイズンショット!!!」
グランベリーが赤い蕾の根の傷に突き刺さった。
「はあああああっ!!!」
勇都の両手が紫色に染まる。
「強力な毒を入れてやれば、きっと蕾は停止するはずじゃ。直ぐに効くかどうかはわからんが登りながら繰り返せ!」
勇都は、根を登りながら影切で突き刺す。
ガーゴイル達が勇都に向かってくる。
「はっ!」
「えいっ!」
ハザンとアミナが飛び上がりガーゴイルに斬撃を喰らわせる。
「ポイズンショット!!」
勇都は、再びグランベリーを突き刺した。
勇都達が奮戦する最中、ユキヒロとネロは城の天守閣に到達した。
「着いた…。ようやく着いた。だが、我の力では入れぬ。」
天守閣の周りに見えない何かが塞いでいた。
「ここだけは、以前から入れなかった。強烈な結界がある。」
ネロは、天守閣の戸を開けようと手を出す。
バチッ
ネロの掌が黒く焼けていた。
「ぬ…。スケナオが施した忌々しき結界め。しかし、今日でそれも解ける。ユキヒロ、出番だ!」
ネロは、笑いながら後ろを振り向く。
そこには、白き鎧に身を纏ったユキヒロが居た。
「あ…あ・あ。ま…任せてくれ…。」
ユキヒロは、胸の前で両手を重ねる。
「ふ、ふ…。ふはっ!」
ユキヒロは、両手を戸に触れさせる。
何か金属が擦れるような音が辺りに響いた。
ネロは、戸に手を掛ける。
「結界が解けたな。遂にこの時が来た。待っていたぞ。ククククク…」
ネロは、歪んだ笑顔を浮かべて戸を開けた。
「お・お・お…」
ユキヒロが目を丸くして驚いていた。
そこには、金色の大玉の様な丸い球が真ん中に設置してあった。
壁には、掛け軸があった。
そこには何かが書いてあった。
ネロは、それをじっと見つめる。
「これだ。これ。私が求めていたのは。この球を動かしてこの城の地に眠る物を出す。あれを手に入れて魔王様に献上するのだよ。」
球の中心には、二つの穴があった。
「さあ、ユキヒロよ。あれに両手を差し込め。そうすれば地下にある物が姿を現すはずだ。」
ネロは、ユキヒロに指示をした。
「あ…う…あ…」
両手を穴に入れようとするユキヒロ。
〈ユキヒロ。止めるのだ!あの魔物の言う事を聞いては駄目だ。目を覚ませ!!〉
白い鎧に姿を変えた白虎はユキヒロに何度も呼び掛ける。
しかし、ユキヒロには届かなかった。
「あ…あはは…」
ユキヒロは、穴に両手を肘の辺りまで入れた。
「遂に魔王軍の悲願が叶う日がやってくるぞ…」
ネロは、高らかに笑うのだった…




