第49話 ネロの脅威…
「イズモさん!!!」
勇都は、落下していくイズモに向かって叫ぶ。
イズモは、瓦屋根に落ちた。
「うぐっ…」
イズモは、背中を打ちつけて口から血を吹き出していた。
「ククッ。弱き奴は抵抗しても無駄だ。もうこの国が魔王様のものになるのも時間の問題だ。」
ネロは、下の方を見る。
ユキヒロとサスケが対峙している姿を見る。
「あの薬漬けの兄を助けてやるか。まだしばらくはあんな奴でも価値はある。全てが終わった後はもう不要だがな。」
ネロは、口を大きく開けて笑う。
鋭い歯が見えていた。
(勇都。サスケがあのモンスターに狙われているぞ。助けに行かねばならんぞ!)
魔剣グランベリーに変化したサマエルが勇都に呼び掛ける。
「はい!あいつを止めないとサスケさんが危ない。僕、行きますよ!!」
勇都は、サスケの所に向かって走り出した。
上空からガーゴイル達が飛来してきた。
勇都の体が輝く。
(勇都。気配隠蔽の持続時間が長くなったぞ。お主の成長と力が上がった。素早さも追加されるぞ。
さあ、叫んでみろ!)
サマエルは、勇都に教えた。
勇都の脳裏の中に言葉が入ってきた。
「行くぞ。気配消滅!!」
すると勇都の体が消えた。
襲い掛かろうとしたガーゴイル達が勇都を見失い止まる。
「体が何だか軽い。今なら前よりももっと速く動ける気がする。」
勇都は、全力でサスケの所に向かう。
姿を消し、速度が上がり徐々にサスケ達の所に迫る。
サスケは、ユキヒロに向かって手の紋章を翳して抵抗していた。
「サスケさんを助けないと。ユキヒロさんの様子も何だかおかしい。きっとモンスター達の仕業だ。
ユキヒロさんを正気に戻す事ができるかもしれない。」
勇都は、右手に握っていた魔剣グランベリーから紫色の炎を出す。
「ポイズンウ…」
勇都は、ポイズンウィップを出してユキヒロに当てて動けなくしサスケを助けようとした。
勇都は、途中で言う動作を止めた。
何かが近づく気配を感じた。
風が勇都目掛けて強く鋭く吹いてきた。
勇都は、横に飛ぶ。
すると地面が音を立てて抉れていた。
地面から砂煙が起こる。
「僕の姿は見えないのに。何で攻撃できるんだ?!」
勇都の視線の先には、ネロが見えていた。
ネロの両手から風が吹き出していた。
「フホッ。姿を消して何とかなると思っていたか。お前の気配等簡単に感じ取れる。」
(勇都、あの風に当たってはいかん。イズモを倒すほどの威力を持っておる。あのモンスターは今までの奴と違う。危険じゃ!)
サマエルの助言を受けて、勇都は再びグランベリーから紫の炎を放つ。
「ポイズンウィップ!!!」
炎がしなやかに鞭の様に動きネロに向かっていく。
「…トルネードゥ…」
ネロは、自分に向かってくる紫の炎に向かって呟く。
すると地面から竜巻が発生した。
炎の軌道が変わり、ネロに当たる前に真上に上がっていった。
「ポイズンウィップが当たらない!」
すると勇都の肩が見え始めた。
気配消滅の効果が終了したからだった。
(あのモンスター、強力な風を操る。迂闊には近づけない。攻撃しても今の様に防がれる。危険じゃ。)
勇都の体が見え始めて上空に飛んでいたガーゴイル達が急降下を始める。
ネロは、勇都に背を向けてサスケのいる方へとゆっくり向かって行った。
(あの鳥達を何とか倒し、サスケを助けに行くぞ!)
勇都は、再びポイズンウィップの準備を始める。
「ギエエエエエッ!!!」
ガーゴイル達が大声で鳴き、勇都に突撃していく。
「ポイズンウィップ!!!」
紫の炎がガーゴイル達の羽根や体に当たる。
ガーゴイル達は、体が痺れて動けなくなり地面に叩きつけられた。
他のガーゴイル達が勇都に襲い掛かる。
「う…」
ガーゴイル達の鋭い爪が勇都の顔に向けられる。
シュッ
ガーゴイルの首や手が切断された。
「おい!ボーっとしてんじゃねえよ!!」
「勇都殿大丈夫ですか?」
ジミーとアミナが、勇都の隣に居た。
「ジミーさん、アミナさん。ありがとう。」
勇都は、礼を言う。
「まだ終わってねえぞ!上の鳥公達を倒して、イズモを倒したあのモンスターを倒しに行かねえとヤバいぜ!!親方は、ハザンの手助けに行った。あの気持ち悪い赤い蕾の化け物を止めに。俺達も負けてらんねえな。」
「ええ。イズモ殿を倒すあのモンスターが元凶です。皆で力を合わせれば…」
ジミーとアミナは、上空のガーゴイルに大鎌と刀を向ける。
「はい。やりましょう!このインゲンの国を守るためにも。」
勇都は、グランベリーと影切を手に持ち構える。
ガーゴイル達が勇都に向かって狙いを定め始めた。
「サスケぇ…。無駄な抵抗は、や、や止め…止めろ…」
青白い顔をしたユキヒロが手の紋章をサスケに向ける。
「…そ、そうはいかない。白虎を守るんだ…」
サスケは、小さな体で抵抗していた。
《サスケ…。こうなれば隙を見つけて何とか我の力を身に纏い使うのだ…。ユキヒロも出来るならお前も大丈夫なはずだ…。我を求めよ…。》
白虎は、サスケに自分の力を使うように提案してきた。
「…し、仕方ないな。つ、疲れるけど。た、たまには良いよね。き、緊急事態だし…」
サスケは、何かを唱え始めた。
白虎の体が白く輝く。
「ぬ…。ま、待て。白虎。お前に合うのはこの、わ、私。将の器である私。あ、あんな愚弟には相応しくない…」
ユキヒロは、更に顔を青白くして白虎を止める。
《ぬ…。サスケ、伏せよ…》
鋭い風の刃がサスケに向かって行く。
すると白虎がサスケの体を覆い被さる様な姿になる。
《ぐおおおおっ…》
白虎の尻尾が宙を舞っていた。
その尻尾をネロが掴んでいた。
「ユキヒロ!今の内に白虎の力を取り込め。」
ネロは、白虎の尻尾をサスケに投げつける。
「うわっ!」
サスケは、尻尾を躱して横に飛ぶ。
避けた代わりに地面に顔をぶつけていた。
サスケの顔は、真っ赤になっていた。
ユキヒロの身体が輝き始める。
《ぬっ、おおおおおっ…》
白虎の体が消滅した。
「び、白虎…」
サスケは、消えた白虎を探す。
ユキヒロの方を見る。
ユキヒロの身体に、白く輝く鎧が装着されていた。
「フフフ…ハハハ…。や、やはりお前はこの国の…将である。わ、私の力であ、あるべきなんだ…」
ユキヒロは、笑っていた。
「さあ、ユキヒロよ。共に天守閣へ参ろう。この国に大切な物がある。それを手に入れるのだ。」
ユキヒロとネロは、天守閣に向かってゆっくりと登っていった…




