第47話 蠢く赤き蕾…
「やっ!」
サスケは、ユキヒロに向かって掌を向ける。
すると何かが弾けたような音がした。
「む…。さ、サスケ。き、貴様、あ、兄…兄であるこの私。わた、私に逆らうの…か…」
ユキヒロは、突然サスケを睨みつけた。
「兄上!白虎苦しそうじゃないか!!何で。何で…こんなことするの?兄上らしくないよぉ!!」
サスケは、ユキヒロを見て少し涙を零していた。
以前のユキヒロと違う姿や言動で衝撃も受けていた。
『ユキヒロよ…。サスケの言う通りだ…。目を覚ませ…』
白虎は、ユキヒロに訴える。
「う、五月蠅いぞ…。びゃ、白虎。わ、私に説教か…。黙って従え…」
ユキヒロは、再び白虎に掌を向ける。
掌に紋章の様な物が浮かぶ。
「兄上!!」
サスケもユキヒロに向けて掌を向ける。
ユキヒロと同じように紋章が浮き上がっていた。
サスケとユキヒロの間で白い光が起きた。
「ぐっ…」
その衝撃が勇都達の体に伝わる。
(お、おい。勇都、あれを見るのじゃ!)
魔剣グランベリーに姿を変えたサマエルが勇都に呼び掛ける。
勇都は、サマエルの言った方角を見上げる。
すると赤い蕾が激しく動き始めていた。
(勇都。あの蕾は危険だ。あれを咲かせてはならない気がする。何とか止めないといかんぞ!)
グランベリーが一瞬紫色の光を放つ。
「はい。僕もそう思います。あの蕾、とっても不気味です。正直鳥肌立っています。」
勇都は、グランベリーの柄を握る。
そして、ウラーから貰った影切の鞘を抜いた。
勇都は、二刀に構える。
「サスケさん。僕は、これからあの巨大な蕾を何とかします。ユキヒロさんの事お願いします。ちょっとだけ耐えてください!」
勇都は、ユキヒロと対峙しているサスケに向かって叫ぶ。
「ちょ、ちょっとき、きっついな。で、でもや、やってみるよ~。白虎を守るために。」
サスケは、苦笑いしながら勇都を見て再びユキヒロを見た。
「皆さん!あの赤い蕾を倒しましょう!力を貸してください!!」
勇都は、ハザン達に呼び掛けた。
「ちっ。仕方ねえな。やってやるか。」
「ああ。この国で商売が出来なければ利益が上がらない。トルネオ商会の為にも。」
ジミーとフューリーは、勇都に近づいてきた。
「我々も助太刀しますぞ。」
「私も手伝う。インゲンの国を脅かす者は許さないから。」
ハザンとアミナも刀を脇構えして身を低くする。
「じゃあ、お願いします。行きましょう!」
勇都は、走り始めた。
その後をジミー、フューリー、ハザン、アミナが続いた。
上空から無数のガーゴイル達が勇都達に向かって急降下してきた。
「邪魔はさせぬ!」
イズモが巨大な手裏剣をガーゴイル達に目掛けて投げつける。
ガーゴイル達の体が斬り裂かれる。
他のガーゴイル達が更に勇都達に向かう。
「おらっ!」
「喰らえ!!」
ジミーは、大鎌を振って斬り、フューリーが短銃でガーゴイルを撃ち抜く。
「はっ!」
「やあっ!!」
ハザンとアミナもガーゴイル達を倒していく。
(勇都。お前の力は、なるだけ温存しておけ。いざという時の為に使え!)
勇都は、サマエルの助言に黙って頷く。
ガーゴイルの爪の攻撃を回避する。
素早く動きガーゴイルの体にグランベリーと影切を突き刺す。
悲鳴を上げてガーゴイルは地に倒れる。
「おい。ユウト。赤い蕾の化け物どうやって倒すんだよ!」
ジミーが大鎌を片手で旋回させながら怒鳴る。
「あの根元を切り倒しましょう!そうすれば、赤い蕾は停止すると思います!!誰かが強力な攻撃を与えて行けばきっと倒れますよ。」
勇都は、赤い蕾の根元に向かって走り出していた。
「誰が先に速く倒すか競走でござる。我が技、炎筒で斬る。」
ハザンも勇都に続く。
ビュン
赤い蕾の根元に行こうとした勇都達の前に何か音が聞こえてきた。
「ぐっ!」
勇都は、目の前で強い風圧を受けて腕で目を塞ぐ。
土煙が舞い視界が晴れてくる。
「な、何でござるか。こ、これは?!」
ハザンが、地面に穴が出来ていて立ち止まっていた。
「フフフフフッ。小蟲達が無駄な足掻きをしているでおじゃる。あ、もうこんな言葉は使わなくていいか…」
城の屋根の上に誰かが乗っていた。
それは、角の生えた悪魔が立っていた。
ジソンに今まで姿を変えていた上級悪魔のネロであった。
「もう手遅れだ。間も無く咲く。」
ネロは、両手から風を発生させていた。
それは、球の様な形になっていった。
赤い蕾の根元から何かがドクドクと音を立てて蕾の方へ蠢いて登っていく。
すると赤い蕾が開きはじめた…




