第45話 苦しむ白虎…
「驚きましたぞ…。こんな道があったとは…」
ハザンは、狭い通路を進んでいた。
「ここさ~。昔、父上やおじいちゃん達が城下町へお忍びに遊びに行っていた時に使っていた抜け道なんだって。兄上は知らないんだ。僕だけ教えてもらったんだよ~。狭いけど便利だよ~。」
先頭のサスケは、勇都達を案内しながら話していた。
勇都達は、サスケに付いて行き町の外れにある小さな神社に着いた。
ガーゴイルの襲来も無く、神社には以前から神主は存在していなかった。
神社の裏手に向かい竹林を掻き分けると石蓋がしてある井戸の様な物があった。
サスケは、それを動かし入っていった。
勇都達は、続いて進んで行く。
狭い道だったが人が何とか通過できた。
蝋燭もあり、火を点け灯りを確保する。
「ここの道は、いざという時に逃げ道にもなる。将だけが使われる通路に相応しいですね。」
アミナは、ハザンの後ろで呟く。
「狭いな。速く地上に出たいぜ。後どんだけ歩けば着くんだよ。坊ちゃんよぉ!」
ジミーがサスケに聞く。
「後、何回か曲がって進めば出れるよ~。5分くらいあれば。この先から苔が生えている場所あるから足下に注意して。」
一番後ろにはイズモがいた。
その前には勇都が居た。
「勇都殿。よろしいか…」
珍しくイズモが勇都に話しかけてきた。
「はい。どうしました?」
「ウラー様は、以前からインゲンの国にいつか何かが起こると常々申しておりました。今回勇都殿が行くので力になってやれと連絡が来ました。半信半疑でしたがこのような事態になるとは思ってませんでした…」
イズモは、表情を変えることなく勇都に言う。
「僕もですよ。色んな国に行くと考えもしなかった事に遭遇します。いっつも驚きの連続です。」
勇都は、振り向いて話は出来なかったが答える。
「ウラー様が勇都殿に気を掛ける理由がわかった気がします…。拙者は、自分の命に変えましても勇都殿をお守りいたします…」
イズモの言葉に深い決意が勇都には伝わった。
「ありがとうございます。あまり迷惑を掛けない様にします。これでも冒険者の端くれなんで。」
勇都は、足元に注意しながら進んだ。
勇都の腰にサマエルが姿を変えた魔剣グランベリーがあった。
サマエルは、考えていた。
(この国の異変は、やはりインゲンの国。聖獣白虎の力を手に入れる為なのか?他に何か目的があってこの様な騒ぎが起きているのか?草の一族との話でインゲンの国との争いも最初からではなかった。奴等を戦わせ利益を得る何らかの存在がおるのか?)
サマエルは、ずっと考えていた。
「よし。着いたよ。これで地上に出れるよ~。」
サスケは、梯子を登った。
そして、自分の真上の木の板を押し上げた。
すると勇都達の目に光が入ってきた。
「ようやく地上だぜ!」
ジミーは、喜んでいた。
出た所は、草木に覆われていた。
「ここ城の中の庭なんだよ~。直ぐに歩けば城に着くよ。」
サスケは、梯子を上ってきた勇都達に笑顔を向ける。
「全員揃ったね。じゃあ父上達の所に行こうか~。」
草木を掻き分けサスケは、出ようとした。
「え…、何これ…」
サスケは、固まって動かなくなる。
「どうしたんだよ。何止まってるんだ?!速く行こうぜ!」
ジミーは、そういった瞬間に止まる。
「な、何だ。何が起こったのだ。」
庭の外では、巨大な黒い葉や根があちらこちらに巻きついていた。
地面は、黒い根が無数に張り巡らされていて波の様に変化していた。
「う、うう…」
「た、助けて…」
インゲンの国の役人等が動けずに捕らわれていた。
「ど、どうしたの?!何があったの!」
サスケは、手足を縛られていた1人の女中に聞く。
「あ、あ…さ、サスケ様。ご、ご無事で…」
「大丈夫?!どうしたの?」
女中は、何とか口を開く。
「と、突然…。城の地中から何かが噴き出してあっと言う間に捕らわれて、う、動けなくなってしまって…。し、城の脇にあんな物が…」
サスケは、女中が目を向けた方に振り向く。
「え…何…あれ。」
「な、何だ。あの不気味な蕾は!」
アミナは、思わず刀を抜いた。
それは、城の隣に大きな赤い蕾があった。
城の天守閣の近くまで伸びてゆっくりと上下に動いていた。
「ヤバいぜ。何かクラーケンよりも怖いぜ!」
ジミーは、大鎌を構える。
その手は、小刻みに震えていた。
「皆さん、城の下を見て下さい!」
勇都は、叫んでいた。
白虎が咆哮を上げていた。
白虎の周りには、上空から城下町に現れたガーゴイルが数匹襲い掛かっていた。
それを爪で斬り裂き、尻尾で吹き飛ばして抵抗していた。
よく見ると白虎の体に黒い煙の様な物が巻かれていた。
あまり動けていない様に見えた。
「白虎を助けないと!」
「あ、サスケ様お待ちください!!」
サスケは、白虎の下へ飛び出して行った…




