第41話 ジソンの正体…
「ぐあっ!!」
「がはっ!!!」
インゲンの国の役人達が体を切断されて床に沈んだ。
「なっ、お、お前。人間ではないな!!」
家老のゲンシンがジソンの方を向く。
ジソンの手が黒い色に染まっていた。
爪が細長く伸びていてそれは鋭かった。
黒き爪から役人達を斬った返り血が垂れていた。
「ふぉふぉっ。当り前じゃないですか。私は人間ではありませんよ。」
ジソンの目が赤く怪しく輝いていた。
「ゲンシン殿。下がっておられよ。」
リキュウが巨大な数珠をジソンの前に向ける。
「云、退魔滅明印…破邪顕正…」
リキュウが何かを唱える。
「クソ坊主が。そんな事をしても無駄だ…」
「はっ!!!」
リキュウの気合の入った声が部屋に響く。
「ぬ、う…。何だクソ坊主。これは…」
ジソンの体が動けなくなった。
リキュウは、険しい顔でジソンに言った。
「お前の動きを止める念仏だ。そして、ジソン。お前の本当の正体を我らに見せい!」
ジソンの顔の皮膚がボロボロと崩れていく。
「やはり妖だったか!!」
スケナオは、刀を再び構え直してジソンに向ける。
ジソンの顔は、変化した。
2本の角を生やし、両頬の辺りには毛が生えていた。
口からは長い牙が出ていた。
その顔は、草の一族の鬼に似たような姿だった。
「バレてしまいましたか。私のこの悪魔の姿を人間共に見せるのは久々ですね。」
ジソンは、煌びやかな服を引きはがして投げ捨てた。
全身が黒く、胸の辺りに赤い印があった。
「貴様は、一体何者だ!白状せいや、喝!!!」
リキュウの数珠が黄色に輝き、ジソンを吹き飛ばした。
ジソンは、部屋の端の壁まで吹き飛ばされた。
ジソンの背中が壁にめり込み大きなひびが入っていた。
インゲンの国の役人達がジソンに攻撃しようと駆け寄る。
「…ふふっ。弱すぎますね…。」
シュッ
ジソンの両手の爪が前に伸びる。
「ぐっ…」
「ぶはっ…」
役人達の体が貫かれたり、首が吹き飛んだ。
「クソ坊主殿。ゲンシン様、そして、スケナオ様。お望み通り私の正体を明かしてあげますよ。
私の本当の名は、ネロ。魔王様の直属の部下。魔王様の命でこのインゲンの国の資源を手に入れ支配する為に派遣された上級悪魔です。」
ジソンは、口を大きく開けて二股に割れた舌を出していた。
「魔王様の命で何年も前からこの商人の身に成り代わり色々と動いていました。手下の悪魔達も次第にこの国に入る様に準備を着々と勧めさせていただきました。薬も少しずつ蔓延させていきもしましたね。魔王様から頂いたこの薬を使い私の言う事を聞いてくれる傀儡も出来ましたし、後は貴方達を殺してこの国を支配するのみ。そして、魔王様の国となるのですよ。」
ジソンは、目の前にしゃがみ込み虚ろな表情のユキヒロを見ていた。
「で、では。本物のジソンはどうした。」
家老のゲンシンがジソンに問い詰める。
「ああ、あの豚商人ですか。成り代わった時に直ぐに殺しましたよ。切断し焼き捨てて。蓄えていた財で色々と出来ました。この国、城にも容易く入ることができましたし、まあ役に立ったというべきですかね。」
スケナオは、ジソン改めネロと呼んだ悪魔を睨みつけていた。
「貴様。ここを生きて出ると思うな。この国を荒らす輩として成敗する!」
「おおっ。将が本気で怒られた。怖い怖い。ま、それも言えるのは今だけです。」
すると、ユキヒロが立ち上がった。
「フ、フフフッ。…ち、父上。も、もうあ、貴方の時代は今日で終わる…。」
ユキヒロがニヤニヤと笑いながらスケナオ達を舐め回す様に見ていた…




