第35話 聖獣の血…
草の一族の族長バラキの部屋にサマエル、アミナ、ハザン、ジミー、イズモは居た。
そこは、とても大きな部屋だった。
インゲンの国のスケナオの居た広間よりも大きかった。
周りに灯りと椅子の形をした石が数個あった。
バラキの指示に従いサマエル達は座る。
バラキの隣には、青色の鬼ミロクとスケナオの次男サスケ、サマエルと同じ天界に居た神ミネルヴァが居た。
サマエルは、今までの出来事を詳しくバラキに話していく。
バラキは、目を閉じてそれを静かに聞いていた。
「ユウトの奴、そんな冒険を今までしてきたのかよ…。」
ジミーは、サマエルの話を聞き驚いていた。
「バラキ様。先輩は嘘は言わない神です。それは、天界で共に一緒に過ごした私がよく知っています。」
ミネルヴァは、眼鏡の位置を指で直しながらバラキに言う。
「……そうか…」
バラキは、腕を組み頷き動かなかった。
「バラキ族長はね~、とっても良い鬼だよ~。人間と一緒さ。僕が万金丹を探しにこの地に来て行き
倒れそうになった時に助けてくれたんだ。」
サスケは、緩い感じでサマエル達に話しかけてきた。
「サスケ様。ずっと我々は貴方の行方を捜していたのですぞ。何処に行ったか見つからず、将はずっと心配しておりましたぞ。」
「カマルの村にもよくサスケ様が来ていないかと伝書が来ていました。」
ハザンとアミナは、サスケの顔を見て言う。
「ごめんね~。僕も1つの事に集中しちゃうと周りが見えなくなっちゃって~。父上に謝らないとね。」
サスケは、頭を掻きながら笑ってハザン達に謝る。
「ミネルヴァよ。勇都の様子はどうだ。」
「大丈夫です。毒も完全に抜けました。後は目覚めるだけですよ。先輩。」
ミネルヴァは、サマエルを見て言う。
「ただ…あのままですとまたあの状態になってしまう事があるかもしれませんね。ちょっと対策が必要かも。」
ミネルヴァが話を続けようとすると、イズモが手を挙げる。
「…よろしいですか。ずっと疑問に思っていたことを述べたい…。」
「何だ。言ってみろ!」
ミロクは、イズモを睨みつけて言う。
「…よい。許す…」
バラキは、ミロクを手で制す。
「では…質問を。何故、草の一族は、インゲンの国を執拗に攻めてくるのですか…」
イズモは、バラキを見る。
すると、バラキは目を開き口を開いた。
「それは、かつてこの地は、緑や草木で覆われていた…。お前達が求める万金丹も至る所に咲き誇っていた…。」
再び目を閉じるバラキ。
バラキは、何かを思い出す様に話を続ける。
「…しかし、年月と共に草木が次第に枯れていったのだ…。原因はわからぬ…。」
バラキの脇でサスケが小声で独り言を呟く。
「何でかな~。この土地だけ、非常に弱いんだよね~。」
バラキは、再び話をする。
「この地に咲く万金丹は、傷や万病にも効く。だが、年月と共に万金丹も少なくなってきた…。そこで、城に居る聖獣の血を使えばそれが改善されるやもしれないと我らは、それに一縷の望みを賭けてインゲンの国に交渉に行った…。だが、向こうは我らの話を聞かず襲い掛かり仲間が殺された…。そこから長き年月に渡り戦いが続いているのだ…」
バラキは、深いため息を吐く。
「そうか。草の一族は、決してインゲンの国を滅ぼそうとしているわけではないのじゃな。」
サマエルは、納得する。
「先輩。聖獣の血は、様々な恩恵と効果をもたらすと言われています。草の一族の皆さんが求めているのもわかります。血を使えば、荒れた大地や作物も良くなる可能性があります。天界でも聖獣の血は貴重でしたから。」
ミネルヴァは、サマエルに言う。
「うーむ。しかし、白虎は次第に具合が悪くなってきている。スケナオに我らは頼まれたのじゃ。回復の為に万金丹を取ってきてくれと。」
サマエルの話を聞き、サスケは首を傾げる。
「あれれ?何か話が違うなぁ~。」
サスケは、上を向いて考え込んでいた…。




