第34話 族長の決断…
勇都の体の色が元の色に戻った。
「ミネルヴァよ。礼を言う。お主のお陰で助かった。」
サマエルは、ミネルヴァに礼を言う。
「いや、サスケちゃんが持ってきてくれた万金丹のお陰ですよ。先輩。」
ミネルヴァは、眼鏡を上げて淡々と話す。
「何?あの小瓶の金色の液体が万金丹なのか。」
「そうです。万金丹は、飲んでも良いし、磨り潰して塗りつけても効果絶大です。過酷な作物すら育たない地で咲く奇跡の草花です。バラキさん達に聞くと、昔はもっと咲いていたらしいですよ。私が縁あってこの地に辿り着いた時も今よりは多かったです。」
サマエルの質問に対し、滑らかに語るミネルヴァ。
「私も毒を消す薬を打っておきました。先輩の持つ毒。先輩は気づいてないかもしれませんが、人間にとっては強烈なものです。あの勇都という名の青年は、先輩と契約をしたのでしょう。最初は、先輩の神の力が影響し強靭です。しかし、ある程度の月日が経つとじわじわと抵抗力も無くなり体に毒が浸透していく。解毒等して行かないと死んでしまうんです。」
「そ、そうじゃったのか。」
ミネルヴァから勇都の異変の原因を聞き納得するサマエル。
「ま、先輩もあの青年を鍛えていたみたいですからそう簡単には死なない体力ありますね。それか、色んなモンスターと戦って強くなっていたから救う事が出来たのかもしれませんね。あんなに紫色に染まっていたら短い時間で普通は死んでしまうのに持った。これは、研究、調べ甲斐がありますね。」
ミネルヴァは、勇都の体をじっくり見まわしていた。
「命の危機は去ったとは言え、休ませないといけませんね。」
するとサマエルは、目の前にいる草の一族の族長バラキの所に向かって歩く。
バラキの後ろには、ミロクや数匹の鬼達が待機していた。
バラキは、強大な斧先を地面に付けてサマエルを黙ってみていた。
サマエルとバラキの視線がぶつかる。
突然、サマエルは膝を付いた。
「わしの名は、毒の神サマエル。かつて天界に居た者だ。後ろに眠る男は、私の弟子である勇都だ。草の一族の長よ。我が弟子の命を助けてくれて礼を言う。ありがとう。」
サマエルは、地面に頭を付けてバラキに向かって土下座をしていた。
バラキは、無言でサマエルを見ていた。
「お、俺達はこれからどうなるんだ?」
ジミーは、サマエルとバラキのやり取りを見て呟く。
「…草の一族…族長の…バラキだ…」
バラキは、表情を変えることなくサマエルに名乗る。
バラキの行動と発言に鬼達は騒めいていた。
「…どうやらサスケやミネルヴァと知り合いみたいだな…。それと我らが棲家にやって来た…。理由がありそうだ…」
バラキは、サスケやミネルヴァを見る。
「そうだよバラキ~。城に居る父上の家来だよ~。」
「先輩は、私と共に天界にいました。」
サスケとミネルヴァはバラキを見て答える。
再び黙るバラキ。
するとサマエルの隣にハザンとアミナが並んだ。
「草の一族の衆。拙者は、インゲンの国、スケナオ様の家臣。剣術指南役のハザンと申す。ここに来たのは我が主の命。そこにいるサスケ様の行方と、我が国を守る聖獣白虎様の命を救う為に万金丹を採取に来た。」
「私は、カマルの村の防衛隊長アミナ。ハザン達をここに導くために同行した。」
ハザンとアミナは、ここに来た理由を詳しくバラキに話した。
バラキは、目を閉じて考えていた。
しばらくして目を開くバラキ。
バラキは、後ろに居たミロクに向かって何かを言った。
ミロクは、頷く。
「…話を聞きたい…。これから案内する…。ついて参れ…。」
バラキは、後ろを振り向きゆっくりと歩いて行く。
ミロクを始め、他の鬼達もそれに従う。
寝ていた勇都は、鬼達に木の板の上に乗せられて運ばれていった。
サマエル達もバラキの後を追うのだった…




