第33話 サスケとミネルヴァ…
「バラキ、その人達を傷付けちゃだめだよ~。」
サスケは、ボサボサの髪を搔きながら黒鬼に近づいて行く。
「サスケよ…この者達は、お前の知り合いか?」
バラキは、強大な斧の先をサスケに向ける。
「危ない危ない。閉まって。ハザンさんとアミナさんは知っているよ。後の人達は…始めて見るよ。」
すると、バラキは、斧の刃を下に向けて地面に付き刺した。
「親方。サスケの言う事を聞く必要なんてない…」
バラキは、ミロクに掌を向けて話を止めた。
サスケは、ジミーやイズモ、そして地面で苦しむ勇都を見る。
「わっ。何、あの子。体が紫色になっているよ。何か危険だね~。」
サスケは、しゃがんで勇都の方を見る。
一方、人の姿になったサマエルの目の前には1人の女性が居た。
サマエルより背が低く、赤いマフラーの様な物を首に巻き、短い髪にウェーブが掛かっていて赤い眼鏡を掛けていた。
「先輩…お久しぶり…」
眼鏡の女性は、サマエルを懐かしそうに笑ってみていた。
「ここに居たか…。インゲン国に入ってずっと気配を感じていた。わしは、間違っていなかった。ミネルヴァよ…」
サマエルは、眼鏡の女性をミネルヴァと呼んだ。
「私も、先輩の気配を何となく数日前から感じていた。本当に出会えるなんて奇跡。天界を追放されてどのくらいの歳月が流れたのでしょうか。」
ミネルヴァの眼に薄っすら涙が浮かんでいた。
「そうじゃの。しかし、よく考えてみればミネルヴァよ。わしは、この地に落とされたが、何故お前がこの世界に居るんじゃ。お前の様な優等生は何かやらかす訳がない。どうしてだ。」
サマエルは、ミネルヴァに質問する。
「先輩が追放されてからなんか天界はつまらなくなった。地上の事を見たり聞いたりして、私も興味が湧いて。中々許可を貰えなかったけど、ようやくお許しを貰い200年前に来ました。」
ミネルヴァは、サマエルに答える。
「それよりも先輩。あの男の子は、先輩が面倒見てるんですか?あのままだと死にますよ。」
ミネルヴァは、サマエルに勇都の生命の危険を教える。
「わしもあの様な状態を見るのは初めてじゃ。今まであんなことは無かった。正直驚いておる。一体何があったのか。速く助けないと。」
サマエルは、後ろで苦しむ勇都の姿を見て眉間に皺を寄せていた。
「んー、先輩。あれは、先輩の毒の影響ですね。間違いありません。」
ミネルヴァは、赤い眼鏡を指で上げながら勇都を見る。
「あ…うう…ああ…ううぅ…」
勇都の身体が更に濃い紫色になる。
口から泡が出ていた。
「ミネルヴァちゃん!あの子ヤバいよ。死んじゃうよ。助けてあげよう。僕、あれ取ってくるから。」
サスケがミネルヴァに勇都を助ける様に指示した。
「先輩。詳しい話は後で。サスケちゃんの言う通り。先輩のお気に入りの子を助けます。」
「だっ、誰がお気に入りなものか!!」
サマエルは、顔を赤くし照れていた。
ミネルヴァは、勇都に近づく。
「うわー。毒素が体に回っていますね。よく生きてますね。普通の人間ならもうとっくに死んでいるよこれ。」
ミネルヴァは、苦しむ勇都を見ながら呟いていた。
「まあ。何とかしますか。」
ミネルヴァは、腰のベルトに巻いた入れ物から何かを取り出した。
それは、注射器の様な器具だった。
「この中の液体を体に入れて、後はサスケちゃんにお願いすれば大丈夫なはず。」
ミネルヴァは、勇都の右腕の二の腕に注射を刺した。
すると、勇都の身体の痙攣がピタリと止まった。
「おーい。持ってきたよ~。」
サスケは、片手に何かを持っていた。
それは、小瓶だった。
ただ瓶の中は、金色の液体で輝いていた。
「よし。早速飲ませよう。」
サスケは、勇都の鼻を摘み、口を開ける。
「頑張って飲んで~。」
サスケは、勇都の口に液体を流し込んだ。
全て入れ終えると口を閉じさせる。
すると、勇都の身体の色が薄くなっていった。
「あ~、良かった。何とか間に合った。」
サスケは、勇都を見ていた。
勇都の呻き声が止まった。
全身を染めていた紫の色が全て無くなった…。




