第31話 勇都、異変…
「さて…どうやってあの万金丹の咲く場所に行き採取しましょうか?」
ハザンが勇都達に質問していく。
「ここまでくりゃもう強行突破で強引に突撃して奪う!そして速攻でこの鬼共の巣窟から逃げ出す!!それしかねえぜ。」
ジミーは、大鎌を磨いてニヤニヤしていた。
「ジミー殿の案も悪くはない。時間との勝負だ。ただ鬼達に気づかれる。我々が倒せるくらいの鬼の集まりばかりなら問題ないが、あの中に強い鬼が居なければいいのだが。」
ハザンは、眉間に皺を寄せて悩んだ表情を見せる。
アミナは、そう言いながら周囲を見る。
「今の所居ないみたいだな。特に死んだ父やカマルの村によく攻め込んでくる青い鬼が強いのよ。」
勇都は、アミナの青い鬼の話を聞いて、戦ったミロクの事を思い出していた。
「私が鬼達を惹き付けて、その隙にユウト殿達に万金丹を取ってもらい脱出してもらう…。それが良い方法かもしれませぬ…」
イズモは、険しい表情で勇都達を見る。
「でも、それではイズモさんの命が…。イズモさん1人にそんな危険な思いをさせられま…」
勇都は、イズモに何かを言いかけようとしていた。
すると勇都は、急に止まった。
「ユウト殿。どうされましたか?」
ハザンが勇都の顔を見て呼び掛ける。
「う…あ…う…」
勇都は、突然胸を抑える。
(おい、勇都!どうした?!)
腰の魔剣グランベリーに変化したサマエルが勇都の様子がおかしい事に気づいた。
「え…あ…か、かっ体が…」
勇都は、眩暈がして体中が熱くなっていた。
「ど、どうしたんだろ。何か体が熱い。足元がフラフラする…」
勇都は、地面に両膝を付く。
勇都は、体から次第に力が抜けていった。
(勇都!大丈夫か?!ちょっとステータスを見てみろ!)
サマエルが勇都に大声で呼ぶ。
グランベリーから紫色の光が強く光る。
「ス、ステータス…」
勇都は、目の前の何もない空間に人差し指で横になぞる。
すると勇都の目の前にステータス画面が現れる。
勇都は、ワサビの里で鍛えている時、常に自分の成長具合をチェックしていた。
しかし、インゲンの国に着いてからは全く見ていなかった。
「いつもの画面なはずですよ…師匠…」
勇都は、画面をスクロールし見た。
「え…何…これ…」
勇都は、ステータス画面を見て固まっていた。
サマエルは、勇都のステータス画面をグランベリーを通してみる。
(な、なんじゃこれは…)
サマエルは内心驚きを隠せなかった。
ステータス画面は、このようになっていた。
オガタ ユウト
職業:アサシン
LV:???
体力:???
魔力:∞
知力:???
敏捷性:???
運:-
特殊能力:
気配隠蔽 → 気配隠滅?
無音 → 鳴無??
サマエルは、ステータス画面を見て言葉を失っていた。
レベルや?のマーク。
勇都の特殊能力も名前が変更されていたり、その後の項目も謎が多かった。
「な…なんだろ。これ、バグってるみたいですね…し…グフッ…」
勇都は、口から何かを吐き出した。
それは、血であった。
「ユウト殿…」
「おい、ユウト!」
イズモとジミーが勇都に近づく。
その瞬間、何かに弾かれたようにイズモとジミーの身体が退く。
「な、何だ?!」
ジミーは、尻餅を付いていた。
イズモは、バック転をして着地していた。
「ハザン殿。見てください!」
アミナが勇都の身体を指差す。
勇都の全身が紫色に染まった。
眼が赤く血走り、鼻や口から血が流れ出て止まらなかった。
(な、なんじゃ。この症状は…。猛毒に冒された様な。勇都は、わしと契約し毒の耐性はあるはず。一体何が起こった。おい、おい、勇都。しっかりせい!!)
サマエルは、勇都に大声で叫ぶ。
しかし、その声は、勇都に届いては居なかった。
「うう…ああ…う…うあああっ…」
勇都は、地面に倒れて伏せる。
全身が痙攣していた。
勇都の紫色に染まった肉体から血管が浮き出ていた。
(まずいぞ。勇都の生命の危険が。わしの力を使って毒を吸い取って制御してやる。それには、この変身を解除しなくては…)
サマエルは、勇都の周りにいるジミー達に自分の正体が晒されてしまうと覚悟を決める。
(仕方ない。我が弟子を救う為には安いもんじゃ。)
サマエルは、グランベリーの姿を解こうとした時だった。
1番速く気づいたのはアミナだった。
アミナは、無言で日本刀を抜き背後を見て構えていた。
そこには、数名の鬼達が近づいていた。
「おっ。何処かで見たことがある顔があるじゃねえか。」
そう答えた一匹の鬼が居た。
その鬼は、笑っていた。
ユキヒロに腕を斬られて逃げた草の一族のミロクだった…




