第30話 岩山に潜入…
勇都達は、遠くから岩山に入る入口を見ていた。
「入口の周辺は、上り坂になっています。いつもは付近に10匹以上の鬼がうろついて警固しています。今は、カマルの村に攻め込んでいる鬼が多いので少しは手薄になっているはずです。」
アミナは、勇都達に教えた。
「さて、どうやって入りますかな。」
ハザンが入口を見て考え込む。
すると勇都が立ち上がった。
「僕、行ってみます。この中で動きは多分一番速いと思います。いざとなれば姿も消せますから。」
勇都は、アミナ達を見る。
「それでは私もお供しましょうか。ユウト殿と共に偵察に行きます。」
イズモも立ち上がる。
勇都は、イズモと打ち合わせを始めた。
数分後、勇都とイズモは頷く。
「皆さん行ってきます。」
勇都は、走って飛び出して行く。
「では、御免…」
イズモもその後を付いて行った。
勇都は、走りながら岩山の入口の方を見る。
「気配隠蔽!!!」
勇都の身体に電流が走る。
勇都の身体が次第に景色と同化して消えていった。
「ウラー様から話は聞いていたが、間近で姿を消すのを初めて見た…某も…隠遁!」
イズモは、竹の口笛の様な物を取り出して吹く。
黒い煙が出てイズモの身体を隠していた。
勇都は、入口の上り坂に上がろうとしていた。
(まだ、鬼の姿は見えないな。)
勇都は、前方を気にしながら速度を緩めずに駆け上がる。
(勇都よ。油断するなよ。鬼達はいつ来てもおかしくないぞ!)
魔剣グランベリーに変身したサマエルが勇都に警戒するように呼びかける。
勇都は、静かに頷き岩山を上がる。
地面がごつごつとしていて登りにくかった。
(むっ、居たぞ!)
サマエルの呼びかけで勇都は気づいた。
赤い鬼2匹が何かを言いながらこちらに向かってきた。
勇都が気配隠蔽のスキルを使っているので鬼達は気づいていなかった。
勇都は、腰の魔剣グランベリーと影切を同時に抜いた。
右側を歩いている赤鬼の喉にグランベリーと影切を突き刺した。
「ギエッ!」
赤鬼の喉から血が大きく噴き出す。
隣に居た鬼がその光景を見て立ち止まり固まる。
すると2つの手裏剣が両目に突き刺さる。
鬼は、目から血を流し地面に倒れてのた打ち回る。
「ふん!」
黒い煙の中から鉈の様な刃物が現れる。
その刃物は、鬼の首を切断していた。
イズモの姿が見えた。
同時に勇都の気配隠蔽の効果も消えた。
「ユウト殿、壁に近づいてくだされ。」
イズモの言葉に従い壁に張り付く勇都。
イズモと勇都は、壁から動かず先を見る。
イズモは、目を凝らして鬼達が来ないかよく見ていた。
「…どうやら来ないみたいですな。アミナ殿達を呼びましょう。」
イズモは、自分達が上がってきた道の方に何かを思いっきり投げつける。
しばらくするとアミナ達がゆっくりと上がってきた。
「凄い。2人だけでここまで来るなんて。父達は攻め込んでもここまで来るのはなかなかの困難だった。貴方達は一体…」
アミナが話そうとするのをハザンが手で制止する。
「アミナ殿。急ぎましょう。万金丹を取ることが先決です。」
アミナは、静かに頷きハザンに付いて行く。
殿は、ジミーだった。
(鬼共め。来たら俺の鎌の餌食にしてやるよ!)
ジミーは、鼻息を荒くして歩いていた。
ハザンを先頭にゆっくりと歩く。
登り坂がしばらく続いた。
勇都達一行は、緊張感に包まれながら進む。
イズモが突然、地面に伏せた。
勇都達も身を低くしてしゃがむ。
イズモは、小声で囁く。
「ここから下り坂になっております。その先々に鬼達の家らしきものが何件もあります。遠くには巨大な岩の様な黒い城らしき建物も見えます。」
イズモは、勇都達に教える。
「イズモさん、そこから万金丹は見えませんか。確か、記憶が正しければ右側の付近に花畑の様な物があったはず。」
アミナは、イズモに問う。
「お待ちくだされ…むぅ…あれか?何やら竹細工の様な柵から金色に輝く何かが見えまする。」
イズモは、アミナに答える。
「多分それが万金丹なはずです。日中は、金色に輝く。ありましたね。」
アミナは、少し安堵した表情をした。
しかし、イズモは渋い顔をしていた。
「どうしたんですかイズモさん。何か問題でもあるんですか?」
勇都は、イズモに質問する。
「いや…この下には生活している鬼の家族達が動いています。幸い屈強な鬼の兵士はおりませんが。女や子供、老人ばかりが多いです。今行けば確実に見つかります。危険です。」
イズモの話を聞き、勇都達は考え込んでしまった。
「おい。おい。ユウト!」
ジミーが勇都を呼んだ。
「俺にいい方法がある。こいつを使おう。」
ジミーは、袋から何かを取り出して見せるのだった…




