第29話 勇都達、岩山に着く…
「す、すげぇ。あ、あんなに居るのかよ…」
馬に乗ったジミーは、カマルの村の裏口から草の一族の大群を見る。
様々な色の鬼達が武器を持って、叫んで突撃していた。
「1000匹位は居そうですな。」
ハザンも数を見て淡々と語る。
「あの程度の数ならカマルの村は持ちこたえられます。さあ、皆さん、左に曲がりましょう。」
アミナが勇都達に合図する。
左を曲がると草叢が見えてきた。
勇都達の背丈以上の長さで生い茂っていた。
「ここを突き抜けていくんですか?」
勇都は、アミナに質問する。
「ユウト殿。その通りです。この道は、草の一族達もわかりません。村が壊滅しそうな時に逃げる様に父が見つけたものです。ここを抜けて回り込んで行けば岩山に鬼達に見つかる事なく到着できます。」
アミナは、勇都に答える。
「私の後に遅れないで付いてきてくださいね。はっ!」
アミナは、手綱で馬の背中を叩き速度を上げた。
勇都達もそれに続いて行く。
くねくねと草叢を掻き分け曲がり暫く馬を走らせる。
数分間、勇都達はアミナに従いくっついて行く。
「間も無く抜けます。ここからも速度を緩めることなく行きましょう!」
アミナは、草叢を抜ける。
勇都達もそれに続く。
抜け出ると、そこは草1つ生えていない場所が目の前に広がった。
周りは、岩山ばかり。
地面の土は、赤土色だった。
朝日が勇都達の眼に入る。
勇都達は、眩しくて目を細める。
「このまま左を進んで行きます。暫くすると細い道になって行きます。」
アミナは、そう言いながら馬を軽やかに操る。
しばらく走ると、目の前に左右が岩山で馬が一頭通れるくらいの幅の道が見えてきた。
「ここを抜ければ間も無く…」
アミナは、勇都達に話しかけるのを途中で止めた。
アミナは、腰から刀を抜いた。
ハザンが持つ日本刀よりも細く長いものだった。
刀身が太陽の光で輝く。
アミナの前には、棍棒を持ったやせ細った赤い鬼が一匹うろうろしていた。
赤い鬼は、ふと振り向く。
アミナの刀の光で目を瞑る。
「なんだ…ん…」
赤い鬼は、それが最後の言葉となった。
アミナは、すれ違い様に赤い鬼の首を刎ねた。
赤い鬼の首が上空に舞い上がる。
「す、すげぇ…」
ジミーは、鮮やかな手際のアミナを見て感心していた。
「流石は防衛隊長ですな…」
イズモもアミナの強さを認めて頷いていた。
「ここに鬼が居るとは思いませんでした。皆さん、急ぎましょう!」
アミナは、馬の速度を上げる。
勇都達も続いて付いて行った。
数分後、細い道をアミナ達は抜けた。
この間は、鬼も出てくることは無かった。
道を抜けると先に高くそびえ立つ一際大きな黒い岩山が見えた。
「皆さん、右へ行きましょう。」
アミナに従い右側の方に進む勇都達。
そこには、廃墟の様な建物があった。
建物が数件あったが倒壊していた。
その場所だけ草木が生えていた。
カマルの村より更に小さな場所だった。
「ここで降りましょう。」
アミナは馬から降りる。
勇都達も同じように行動する。
「馬は、離してここに置いて行きます。付いてきてください。」
アミナは、倒壊した建物の方へ向かって行く。
「ここは、以前、インゲンの国が草の一族と戦う為に作った基地がありました。父のロクサブロウが作り、よく連れてこられました。」
建物の前でアミナは立ち止まる。
「皆さん、お疲れさまでした。ここで暫く休憩して作戦会議をしましょう。」
アミナは、勇都達に言う。
水等を飲んだりし一息ついた勇都達。
「して、アミナ殿。これからどうやって万金丹を探すのでござるか。」
ハザンがアミナに聞く。
「はい。皆さんも黒き岩山が見えたでしょう。あそこが草の一族の棲家です。私達はあの場所を鬼岩城と呼んでいます。幼き時行った時は、鬼岩城の前に万金丹が良く咲いていました。今は枯れましたね。」
「アミナの姉ちゃんよ。じゃあ、万金丹ってやつは何処にあるんだよ。」
アミナは、ジミーの話に頷き答える。
「父から聞きました。鬼岩城に入ってすぐに庭の様な物がある。そこには、鬼達が育てている作物等がある。そこに万金丹があったと数年前、攻め込んだ時に聞きました。そこしかないでしょうね。」
勇都は、アミナからその話を聞き遠くから鬼岩城と呼ばれた岩山を遠くから見る。
「あの中に万金丹があるのか…」
勇都は、鬼岩城の場所をじっと見る。
勇都の腰にあるサマエルが変身した魔剣グランベリーが紫色に薄ら光る。
(この中にあやつの気配が…する…)
サマエルは、勇都に聞こえない様に呟くのだった…




