第28話 夜明け前の出発…
数日が経過した。
夜明け前にカマルの村の裏門に数名の者が居た。
「皆さん、今までの訓練の通りに乗って下さい。」
村の防衛隊長のアミナが白い馬に乗っていた。
その後ろに、勇都、ジミー、ハザン、イズモも馬に乗ろうと準備していた。
「よろしくね。」
勇都は、茶色い馬の頭を撫でる。
「鬼共と一戦戦いたいぜ。」
ジミーは、愛用の大鎌を撫でる。
「ジミー殿、無用な争いは避けるべきです。今回の目的は、あくまで万金丹の確保でござる。」
「わーってるよ。」
ハザンに窘められ、ジミーは少しムッとしていた。
「ジミー殿にはこれから更なる活躍が待っているはず…堪えてくだされ。」
イズモもジミーのご機嫌取りをする。
「む…ま…まあそう言うなら仕方ねえや。」
ジミーは、頭を掻く。
アミナは、勇都達を見て言う。
「草の一族達は、早朝。陽が登る頃に攻め込んできます。来たら、直ぐにここから出発します。止まることなく一族の住む岩山付近で馬から降ります。そして、私の記憶のある場所まで行き万金丹を取る。取った後は、直ぐに岩山から脱出しこの村に戻ってきます。それで良いですね。」
アミナに言われ、勇都達は無言で頷く。
「アミナの姉ちゃんよぉ~。もし、草の一族が俺達に気づいて追ってきたらどうするんだい?」
ジミーは、アミナに質問する。
「ええ。私が皆さんの盾になり鬼達と戦います。例えこの身が滅びようとも…。私が死んでも構わず突き進んでください。それで万金丹が取れれば本望です。」
アミナは笑顔を見せる。
「皆で岩山に着くように頑張りましょう!」
勇都は、拳を突き出して宣言する。
「…ユウト殿の言う通りでござるな。皆で必ず万金丹を取りましょう。」
ハザンは、目を閉じて笑う。
「…ウラー様にも頼まれています。ここで体を張らないと今まで生きてきた意味はない。ユウト殿を全力でお守りしますぞ。皆様も。いざという時には切り札があります。」
イズモは、胸に手を当てて勇都を見る。
「万金丹を取ることは、このインゲンの国を守る事にもなります。聖獣白虎様のお力が無ければ草の一族に滅ぼされるのは必須。この国に生きる民達の為にも…」
アミナが話していた時、1人の兵士が走ってやって来た。
「アミナ様。見張り台から草の一族の大群が見えてきました。」
1人の兵士が青ざめた表情でアミナに近づく。
「ご苦労。して数は如何ほどだ。」
兵士は、ゴクリと唾を飲む。
「いつもと同じ1000匹の鬼達です。」
「せ、1000?!」
ジミーが目を丸くして驚いていた。
「あ、アミナの姉ちゃん。あんた達毎回そんな数の鬼達と戦っているのかい?こんな小さな村で。」
ジミーが、アミナに聞いてきた。
「ええ。そうですよ。」
「………」
ジミーは何も発しなかった。
勇都の腰の魔剣グランベリーが微かに紫色に光る。
(勇都よ。そろそろ馬に乗れ。いつでも出発できるようにせよ。)
グランベリーに変化したサマエルが勇都に呼び掛ける。
「はい。」
勇都は、馬に乗った。
「村に近づいて攻めてきたら私が合図します。そうしたら出発しましょう!」
アミナが裏門の先頭になった。
勇都達は、馬に乗りその後に続いて待機した。
次第に、大きな叫び声が聞こえてきた。
「遂にやってきましたか。」
ハザンが日本刀の柄を無意識に握る。
ドン
カマルの村の重たい表の門に大きな音がした。
勇都達の居る裏門まで何かがぶつかった様な衝撃が走る。
「攻撃始め!」
兵士達の掛け声が響く。
「さあ、今です。行きましょう!」
裏門の閂が抜かれてゆっくり音を立てて扉が開かれた。
勇都達は、アミナに続いて馬を走らせ門を出て行った。
門を出ていくと朝日が見えた。
光が勇都達を照らしていた…。




