第23話 4人の冒険者…
勇都の放ったポイズンウィップがドゴスの乗っている猪の足に鋭く当たる。
「う、うおっ?!」
鉄球を持った黄色の鬼ドゴスの体勢が崩れる。
猪の足が紫色に変色し倒れ込んだ。
「斜迅!」
イズモは、両手に大きな苦無を持ちドゴスに投げつける。
苦無は、回転しながら弧を描きドゴスの両方の二の腕を貫く。
「ぎゃあああっ!!!」
ドゴスは、鉄球を地面に落とし、猪から落ち痛みでのたうち回っていた。
(勇都よ。やるではないか。武器の破壊力が大きい奴を潰していくとは。流石わしが鍛えた我が弟子じゃ!)
魔剣グランベリーに変形したサマエルが得意気に勇都を褒める。
「お、おい。大丈夫か?!ドゴス!!」
鋸の様な刃物を持ったパッチョが猪から降りてドゴスに近づこうとする。
その近くにハザンが居た。
ハザンは、刀を鞘に収めていた。
居合の構えを見せていた。
「隙あり…炎よ、我と共に燃え盛れ…火閃!」
刀を見えない速さで抜く。
炎がパッチョの体を通り過ぎる。
「ぐぎゃっ!あ、熱い!!!」
パッチョの体に火が付き、熱さに耐えきれず地面に転がり火を消していた。
「ドゴス、パッチョ!!」
細長い包丁の様な武器を持ったソルフの表情が変わる。
顔色が暗く、苦々しい顔をしていた。
「今度はお前が倒れろや!」
ジミーの大鎌がソルフに斬りつけられる。
ソルフは、素早く後ろに下がり鎌を躱す。
ジミーの鎌が地面に突き刺さる。
勢いが強く、土煙を上げていた。
ソルフは、ジミーを攻撃しようと走りだそうとした。
「はあああああっ!!」
ソルフの右脇から勇都が現れる。
グランベリーでソルフの胸を突き刺そうとした。
「させるかっ!」
ソルフは、グランベリーの刃を包丁で受ける。
勇都とソルフは、力で押し合いをする。
ソルフは、猪に乗っていた。
猪は、興奮し勇都の膝の辺りに体当たりしようとする。
「…地爪…」
イズモが地面に両手を付ける。
イズモの両手から大きな音がする。
地面が三本のひっかき傷が現れソルフの乗る猪に向かう。
地中から太い先の尖った釘が三本現れる。
それは、猪の眉間に突き刺さる。
猪は、血を流し鳴き声を上げる。
ソルフは、猪から降り勇都に刃物を向ける。
「…な、何なんだお前ら。こんなに強いとは…」
ソルフの後ろに、鉄球を持ったドゴス。
そして、体に火傷を残しながらも鋸の刃物を向けて息を荒くし、目が血走ったパッチョも近づいてきた。
勇都達は、じりじりとソルフ達に迫る。
すると何処からか笛の様な音がする。
「ソルフ。合図だ。」
ドゴスがソルフに言う。
ソルフは、無言で頷く。
ドゴスは、鉄球を回転させて勇都のポイズンウィップを受けて倒れた猪にぶつける。
猪は、鉄球を受けて体の肉片が辺りに弾け飛んだ。
ソルフは、イズモの攻撃を受けて血まみれの猪を刃物で貫く。
猪は、身動きもせず倒れた。
「退くぞ!」
パッチョは、猪に乗り走って逃げて行った。
ソルフとドゴスは、勇都達に背を向けて全力で走り去って行った。
「おい。逃げるのか?!待ちやがれ鬼共!!」
ジミーが大鎌を向け怒りを見せる。
行こうとするジミーをハザンが手で制す。
「ジミー殿。お怒りはもっともだが逃がしてやりましょう。それよりも我々はカマルの村にむかいましょう。」
ハザンが、ジミーに微笑む。
「…ちっ!仕方ねえな…」
ジミーは、大鎌を背中にしまう。
勇都もグランベリーを鞘に入れる。
「さあ、カマルの村に行きましょうか。」
勇都は、カマルの村の方向に向かって歩き出した…




