第21話 3匹の黄鬼達…
真っ暗な部屋の中に男は居た。
「はぁ、はぁ、ぐ、う、ああああっ!!」
男は、上半身裸で両手で体を掻きむしる。
体中がひっかき傷で血が出ていた。
「あ、あ、あれがな、無いと。わ、私は…」
男は、小さな袋を開ける。
が、そこには何もなかった。
「無い、無い、無い。あれが無いと死んでしまう!!」
男は、部屋の天井に向かって叫んでいた。
「く、薬、薬をくれぇ!!」
すると部屋の戸が静かに開く。
鳥帽子を被った男が現れる。
「ほほっ。薬が欲しいのですか?」
現れた男は、扇子で仰ぎ叫ぶ男を楽しそうに見て笑っていた。
しかし、男の眼はとても冷たく冷酷な眼差しだった。
「た、頼む。い、今すぐにくれ!飲まないとおかしくなってしまう!!う、う、うげぇ~!!」
男は、床に向かって吐き出した。
鳥帽子の男は、床に這いつくばっている男に向かって言う。
「薬を渡すには、それなりの対価を頂かなければ私は貴方様に渡せません。何を下さるので?!」
鳥帽子の男の顔は、邪悪な表情に満ち溢れていた。
「ここにある、き、金銀、財宝を、す、好きなだけ持っていっていい。た、頼む。頼む…」
男は、鳥帽子の男の足に縋りつく。
鳥帽子の男が身に纏う着物の金色の刺繍が真っ暗な部屋の中で明るく輝いていた。
「仕方ありませぬな…。さあ、飲まれよ。」
鳥帽子の男が、手から白い粉の入った袋を男に落とす。
「ああ。あ、ありがとう。こ、これで。わ、私はまた頑張れるのだ…」
男は、白い粉を一気に飲んだ。
口元が粉塗れになっていた。
男は、飲むと笑い始めた。
「ははっ。こ、これだ。これなんだ。これが無いと私は生きていけない!」
男は、恍惚の表情をしていた。
股から小便を垂れ流していた。
鳥帽子の男は、にやにやとそれを見て笑っていた…
その頃、勇都達は、武器を構えて待機していた。
徐々に何かが近づいてくるのを感じていた。
「むっ。見えましたぞ。猪に乗った鬼共が来ます。」
イズモは、発見し勇都に伝える。
勇都達の目の前に鬼達は現れた。
背は、赤鬼やミロクと呼ばれた鬼達に比べれば随分小柄の黄色の肌をした鬼だった。
太って大きな3匹の猪に鬼達が乗っていた。
手綱を操り止まる。
黄色の鬼達は、勇都達を見る。
「人の匂いがして臭いと思ったら。お前ら、ここで何している。」
鋸の様な刃物を持っている鬼が勇都達に質問する。
「へん!何でお前らにそんな事言わなきゃならねえんだよ。」
ジミーは、大鎌を鬼に向ける。
「ここは、俺達草の一族の散歩道だ。臭い人間様が簡単に通れる場所じゃねえ。」
鎖の付いた鉄球を持った黄色の鬼がジミーを睨む。
「拙者達は、お主らと争うつもりはない。カマルの村へと向かうだけだ。」
ハザンは、淡々と鬼達に話す。
「カマルの村だと?!」
細長い包丁の様な刃物を持った黄色の鬼がハザンを睨む。
その鬼は、突然笑いだす。
「フハハ。それは、聞き捨てならんな。族長からカマルの村に近づく怪しい者は捕らえて尋問するか殺すかにしろと言われている。最近は、村に向かう者も役人達しか見ない。おまえ等みたいな奴等は久しぶりだ。俺達に素直に従い付いて行くか、さもなくば…」
鬼達は、武器を勇都達に向ける。
「もし、嫌だと言ったら…」
ハザンが鬼達を見て言う。
鬼達は、勇都達に無言で近づいてきた。
「どうやら交渉の余地はないみたいですな。」
イズモは、懐に手を入れて何かを準備しようとしていた。
(どうやら戦いになりそうじゃの。準備は良いか?我が弟子よ。)
魔剣グランベリーに変化したサマエルが勇都に問う。
「はい。いつでも戦えます!」
勇都は、魔剣グランベリーと影切を構えた…




