第15話 魔剣グランベリー…
サマエルの体が変化していった…
勇都は、驚きを隠せなかった。
サマエルの体が、1つの短剣になる。
黒い刀身に紫色の柄をしていた。
「し、師匠何処に?!」
勇都は、サマエルの姿を捜す。
「ここじゃ。お前の目の前に居るではないか…」
「え?」
勇都の目の前から声がする。
それは、短剣から発せられた。
「勇都。わしはな、この短剣に姿を変えたのだ。お前と共に行動するにはこの形態が楽だ。さあ、わしを持って移動してよいぞ。」
短剣になったサマエルが勇都に言う。
勇都は、目の前の短剣がサマエルの変化した姿だとはまだ正直信じられなかった。
しかし、勇都は、短剣に近づいて柄を持つ。
(け、結構な重さがある。持っているダガーより少し重い!)
勇都は短剣をじっくり見る。
赤黒の刀身は、透き通って自分の顔が良く映った。
紫色の柄も自分の手にしっくりくる。
柄をよく見ると、真ん中に透明の玉が入っていた。
「さあ、勇都よ。地上を目指して動こう。進みながらお主に指導しながら鍛えていくから覚悟しろ。」
勇都の持つ短剣が小刻みに震える。
「はい。よろしくお願いします。師匠。」
勇都は、嬉しそうに言った。
「あ、師匠。ちょっといいですか?」
「どうした?」
勇都は、サマエルに質問してきた。
「あの、俺、師匠が変化した短剣に名前つけたいんですけど…」
「はぁ?!」
勇都の申し出にサマエルは戸惑っていた。
「何故名前など必要なんだ?」
サマエルは、勇都に返事を求める。
「え、あ、その…」
勇都は、口ごもらせて中々理由を言わない。
「なんじゃ。ハッキリ言ってみい。言わんとわからんわ!」
サマエルのツッコミに勇都は答える。
「え、あ、あの、師匠が変化した武器が、な、何かカッコよくって強そうだと思ったから…」
サマエルは、無言で黙った。
「あ、あの。し、師匠。き、聞いてます。」
サマエルは沈黙したままだった。
(な、何だと…このわしが変化した武器が…か、カッコ良いだとぉ!!!)
サマエルは、興奮し驚いていた。
勇都のレベルの低さと、体格等を見て、自分が運んでもらいやすい武器に変化をしただけだった。
毒の女神としてアサシンが持つに相応しい武器としてイメージして変化した。
それを目の前の低レベルの冒険者にカッコ良いと言って貰った。
(こ、これは。…まっ…悪い気はしないな…)
サマエルは、とても嬉しかった。
何千年もこの部屋に封印され閉じ込められていた。
それまで誰とも会わずに過ごしてきた。
それが、今日、1人の冒険者と久々に出会い会話をした。
しかも、自分の変化した武器をべた褒めしてくれた。
正直、悪い気がしなかった。
「し、仕方あるまいな。好きに名付けていいぞ。その代わり速く決めろ!」
サマエルは勇都に武器の名称を付けることを許可した。
「わかりました。え~っと…決まりました。」
勇都は、短剣を見て言う。
「武器の名前は、魔剣グランベリーで如何でしょうか?」
「グランベリーだとぉ?!」
サマエルの声が思わず裏返る。
「ま、マズかったですか?」
勇都は、恐る恐るサマエルに確認するように見る。
(グランベリー。よい響きではないか…)
勇都のネーミングセンスが気に入ってしまった。
「良かろう。グランベリーで許可しよう。」
サマエルは、グランベリーと認めた。
勇都は、魔剣グランベリーと名付けた短剣を握りしめる。
すると体中が熱くなってきた。
特に柄を持つ手が火傷しそうな熱さになった。
「し、師匠。何か熱くなってきましたよ。何ですかこれ?」
勇都は、身体の異変に戸惑っていた。
「わしが変化した武器を握ったことでお主の能力が上がったのだ…」
サマエルは、嬉しそうに勇都にそう言った…




