第19話 再び鯨亭へ…
『む、そうだ。サマエルよ。これを持っていくが良い…』
突然、白虎は、自分の前足の爪を噛む。
パキッ
黒い白虎の爪がサマエルの前に落ちる。
「白虎よ。これは一体…」
サマエルは、白虎の行動がよくわからなかった。
『もし、サスケに出会う事があったらこれを見せればよい。我が心配していると伝えてくれ…』
白虎は、静かに目を閉じて再び寝そべる。
サマエルは、白虎の爪を素早く拾った。
そして、魔剣グランベリーに変化して勇都の腰に戻る。
それと同時に勇都達が動き出した。
‐1時間後‐
勇都達は、鯨亭に来ていた。
テーブルには、勇都、フューリー、ジミー、イズモが座っていた。
4人は、食事を取りながら話をしていた。
「で、ユウト。本当に外に行くんだな。」
フューリーが、勇都の顔を見て聞いてくる。
「はい。行きます。白虎さんを助けてやらないといけないなと思ってます。それに、鬼達にこのインゲン国を滅ぼされない様にしないと。」
勇都は、やる気に満ち溢れている表情をしていた。
「おまえなぁ~。草の一族は強いじゃねえか。今回は上手く立ち回れたが、今度は命の危険もあるかもしれないぜ。鬼だらけの場所の近くに行き、万金丹を取るのは大変だ。何でそんなに一生懸命なんだよ。」
ジミーが、肉を喰らいながら勇都に質問してくる。
勇都は、腕を組みながら考え込む。
「うーん。スケナオ様に頼まれたのもあるんだけど。まー、この国が自分が以前住んでいた国に何となく似てるのかな?」
勇都は、ジミーに笑顔を見せて飲み物を飲む。
「チッ!」
ジミーは、勇都を見て舌打ちをした。
「お頭は、トルネオ商会の代表としてこの国の商人達と取引の商談をしなければならない。俺は…まぁ…フリーだ。お、お前1人じゃ頼りねえから一緒に行ってやるよ!」
ジミーは、鼻息を荒くしグラスの酒を飲み干す。
「本当ですか?!ジミーさん、ありがとうございます!!」
勇都は、目を輝かせて嬉しそうにジミーを見る。
「ケッ!男に礼を言われても嬉しくもねえや。」
ジミーは、勇都から顔を背けて酒の注文を頼む。
「では、ユウト殿。私もお供仕る。」
イズモは、ユウトと一緒に行く旨を伝える。
「嬉しいですけどイズモさんも忙しいでしょ。無理しなくていいですよ。」
勇都は、イズモに申し訳なさそうに話す。
「いえ。ワサビの里にいるウラー様からユウト殿の力になってやれと連絡を貰っています。今は、特に他の任務もないです。少しでも人が多い方が良い気がします。」
イズモは、目を閉じて頷く。
「ありがとうございます!」
勇都は、イズモに頭を下げる。
「俺は、行けなくて申し訳ない。3人だけでは不安だ。最低でももう1人くらいは必要なんじゃないか。せめて行く道中や外の事に詳しい奴が居たらな。」
フューリーは、テーブルを人差し指で軽く叩く。
「い、一応当てはあります。」
勇都は、手を挙げて言う。
勇都の椅子の脇に置かれた魔剣グランベリーがほのかに紫色の光を帯びる。
(わしも居れば5人。何とかなるじゃろ。)
サマエルは、勇都を見てボソッと呟いた。
鯨亭では、万金丹を得るためにどうするか話が続けられていった…




