第11話 白虎顕現…
白き鎧の者はゆっくりとミロクの前に歩いて行く。
「おおっ。ユキヒロ様が参られた…」
「これで安心じゃ!」
インゲンの国の役人達が安堵の表情を浮かべる。
「はっ。手間が省けやがった。のこのことやってきてくれたぜ。」
ミロクは、嬉しそうに笑っていた。
2本の鉈を打ち鳴らし、鉈を白い鎧武者に向ける。
ユキヒロと呼ばれた白い鎧の者は、腰に差さっている刀に手を掛ける。
それは、日本刀の様な形状だった。
ユキヒロは静かにそれを抜く。
「綺麗だ…」
勇都は、思わずそうつぶやく。
無駄のない動きが滑らかで、氷の様に透き通った刃が現れる。
「草の一族共。退けい!聞けねばこの刀で斬る!!」
ユキヒロは、刀の先をミロクに向ける。
「そう簡単に引き下がれるか!」
ミロクは、ユキヒロに向かって突進をして行った。
ミロクは、鉈を交差させてユキヒロに向かってきた。
「…………」
ユキヒロは、その場から動かなかった。
「しゃはははははっ!頂きだあっ!!」
ミロクは、鉈でユキヒロを斬り付ける。
が、ミロクの鉈は動かなかった。
「う…何…」
ミロクの鉈がユキヒロの刀で止められていた。
「ぬ…ぐぅ…」
逆にミロクはユキヒロに少しずつ押されていた。
後ろに下がっていくミロク。
「どうした?来ないのか?」
ユキヒロは、ミロクを押しながら質問する。
「ぐ、ぐっ。ぐおおおおおおっ!!!」
ミロクは、後ろに思いっきり飛ぶ。
「おりゃあああああっ!!」
ミロクは、2本の鉈でユキヒロを突きを繰り出す。
「…虎爪…」
ユキヒロは、そう言うと刀でミロクに斬り付ける。
刀の鳥帽子の部分がミロクの左腕に流れる様に向かう。
ズバッ
「いぎゃっ!!」
ミロクの左腕が宙を舞っていた。
ミロクの左腕から血が噴き出ていた。
「ぐ…び、白虎の…力め…」
ミロクは、残った腕の鉈をユキヒロに突き付け睨んでいた。
「次は、もう片方の腕を斬る…」
白い鎧に身を纏ったユキヒロの全身が白く輝いた。
「うぬぅ…くそ…ここまできて…」
ミロクの額から汗が浮かんでいた。
ふとミロクは何かを見る。
ミロクの視線の先には、勇都が動けなくした赤鬼達がいた。
赤鬼達は、無言でミロクに目で何かを訴えていた。
「……」
ミロクは、静かに頷く。
ミロクは、突然飛び上がった。
「な、何だ。」
役人達は、武器を構えてミロクの姿を目で追う。
ドスン
ミロクは、赤鬼達の前に降り立った。
「…許せ。お前達…」
ミロクは、鉈を一振りする。
すると赤鬼達の首が一気に吹き飛んだ。
赤鬼達の首から血しぶきが上がる。
「また必ずくるぞ!!!」
ミロクは、ユキヒロを見て走って逃げて行った。
「逃がすな。追え!!」
役人達が武器を持ちミロクを追いかけて行く。
その場には、ユキヒロと勇都、イズモとハザンが残った。
「強い。」
勇都は、白い鎧のユキヒロを見て言う。
白い鎧が強烈に光り輝く。
すると、白い鎧が消える。
そこには、刀を持った着物を着た青年が立っていた。
その隣には、巨大な白い虎がいた。
巨大な虎は、全身が白く威圧感が漂っていた。
蒼き目に細長い尻尾がくねくねと動いていた。
「ふう。白虎を身を纏うのは一気に疲れが来る。力が吸い取られる。」
ユキヒロは、白い虎を見て笑う。
(あれが白虎か…)
魔剣グランベリーに姿を変えたサマエルが白虎を見る。
グランベリーが一瞬、紫色に光る。
白虎が勇都の方を見る。
『む。ユキヒロよ。そこに中々面白い者が居るではないか。』
白虎は、ユキヒロに話しかけた。
白虎の顔は、笑みを浮かべているようだった…




