第10話 白き鎧の者…
「陽炎…」
勇都の体が揺らめいた。
同時にミロクの鉈が勇都の体を斬った。
が、勇都の体を斬った手応えが無かった。
「また斬れぬ。」
ミロクは、眼を見開き先を見る。
そこには、腹を抑えていた勇都が居た。
「あ、危なかった。陽炎使わなければ死んでいた…」
勇都は、息を整えながらミロクを見る。
勇都は、ワサビの里でウラーやマニー達と修業をした。
その時にマニー達から、体術や忍術を一部教えてもらっていた。
完全ではなかったがある程度の習得をした。
その内の1つが陽炎であった。
己の気を高め、全身にオーラを張る。
それを自分の姿をイメージさせ、姿をその場に残す。
熟練度が高まるとそれを動かしたりすることができると言われた。
が、今の勇都には自分の姿を立ち止まった位置に残すことしかできなかった。
自分の幻影を作り、その間にその場から逃れる回避の術であった。
しかし、陽炎を連発し勇都は疲れを隠せなかった。
「もうあまり動けそうにない。あの青鬼止めないと…」
勇都は、足元をふらつかせながらグランベリーと影切を上段に構える。
「ちょこまかと逃げおって。今度こそ斬り裂いてやる。」
ミロクは、勇都に向かって歩こうとした。
するとミロクに向かって何かが飛んできた。
ミロクの肩に何かが当たる。
それは、突然、爆発した。
ミロクの肩に煙が上がる。
「何だ。これは?!」
ミロクは、黒くなった肩を見て立ち止まる。
「ユウト殿。遅くなりました。」
ユウトの近くに誰かがやって来た。
それは、イズモだった。
「イズモさん!」
「申し訳ありません。町に出没していた鬼達を倒しておりました。」
イズモは、勇都の前に跪いて頭を下げる。
「炎の鳥よ…舞え…火車!」
燃える炎がミロクの背中にぶつけられる。
「熱い!何だ今度は?!」
ミロクの背中に火が付いていた。
「久しぶりですな。確か闘技場でお会いしたか?!」
勇都は、その顔に見覚えがあった。
その男は、着物を着て鋭い日本刀を持っていた。
以前ターメリックの国の闘技場で一緒に戦ったサムライのハザンだった。
「ハザンさん!」
「話は後で。今は、この目の前の鬼を倒しましょう。」
勇都の隣にイズモとハザンが並ぶ。
「また変な者達が現れたな。何人集まろうと関係ない。ただ斬り殺すのみ。そして、白虎の下に行く。」
ミロクは、鉈を勇都達に向けて構える。
ドン
勇都達の後方から突然大きな音がする。
「え、何?!」
勇都は、振り向く。
「おおっ、来られましたか。」
「待っておりましたぞ!」
「これで勝てる。あの青鬼を退治してくだされ!」
インゲンの国の役人達が笑顔を見せて音の方向を向いていた。
「来たな…。白い鎧め。」
ミロクの顔が急に強張る。
光を帯びて何かが橋の上を歩いてきた。
それは、勇都達に近づいていた。
(この闘気と力は…)
ミロクは、鉈を交差させ身構えていた。
勇都は、歩いてくる者を見る。
その者は、日本の戦国武将達が着用している甲冑を身に纏っていた。
全身、白い光を身に纏い歩いていた。
白い鎧を着た者は、一言呟く。
「ここから出て行ってもらうぞ…」




