第5話 脅威…
「おかわりじゃ!団子や草餅とやら旨いのぅ。他に何があるのじゃ?!」
サマエルは、皿にあった物を一気に食べ次の物を注文する為にお品書きを見る。
「いや…こんな可愛らしい女性がユウト殿の師匠だとは。正直驚きです…」
イズモは、勇都の隣にいる女性の姿に変化したサマエルの食べっぷりを見て少し引いていた。
サマエルは、勇都達の食事を見て耐えられずに魔剣グランベリーの変身を説いた。
勇都は、イズモに説得するのに少し時間が掛かった。
イズモも、マニー達からの連絡でサマエルの名前は一応知っていた。
勇都は、簡単にサマエルの詳細をイズモに伝え何とか納得をしてもらった。
「すいません。イズモさん。」
勇都は、申し訳なさそうにイズモに謝る。
「いえ。お気遣いなく…。所で先程の話を続けてよろしいでしょうか。」
勇都は、静かに頷く。
「では、続けましょうか。まず、このインゲン国は、穏やかで平和に見えます。が、それは上っ面だけです。中は、スケナオ様の跡継ぎとなる勢力争いで二分をしております。」
イズモは、勇都に詳しく話を始める。
スケナオは、まだ健在だが、速い内に家督を引き継がせたいと考えて宣言をしていた。
スケナオには、2人の子が居た。
1人は、兄のユキヒロ。
背が高く体格も良く、武術・学問も嗜みユキヒロが継ぐと国中では噂になっていた。
もう1人は、弟のサスケであった。
サスケは、ユキヒロよりも背が低く頼りなさげに見えていた。
しかし、頭の切れは抜群で、治水や農地の開発を提案したり、インゲンの国の民からは意外に慕われていた。
インゲンの国の城に使える家臣達は、ユキヒロ派とサスケ派に分かれていた。
しかも、父親のスケナオは、サスケを次期の将に推していると風の噂が流れていた。
目に見えない勢力争いで、家臣達や、町の者達も密かに対立し小競り合いも怒っていた。
1か月後、スケナオによる国中の者達を集めた周知があるという話も上がっていた。
「城の中では、ユキヒロ様を将にする一派と、サスケ様の一派が緊迫し一触即発の状態かと聞きます。」
イズモは、眉間に皺を寄せて厳しい顔つきで勇都に語る。
「ユウト殿。これだけではありませぬ。このインゲンの国は、この城下町の外の輩達の脅威にも晒されているのです。」
イズモは、徳利から酒を注いでそれを飲み干す。
「外って?この城下町の外に何かいるのですか?!」
勇都は、イズモに聞く。
「ええ。この国は、昔から草の一族という者達に攻められております。スケナオ様の以前の代から存在している者達です。武器を取り、この国を乗っ取ろうと突然、何の前触れもなく攻めてきます。」
イズモは、草の一族に付いて話す。
赤い褐色の肌をし、牙や角を生やしている者達で、1、2年の周期でインゲンの城を目指して攻撃をしてくる。
その都度、撃退し追い払っていると話すイズモ。
「草の一族は何を目的として、考えて攻め込むのかは誰もわかりませぬ。インゲンの国を滅ぼさぬために、武力も低下させぬためにユキヒロ様を将にすると望む方向に向かっているとも聞きます。しかし、ユキヒロ様は人間性に問題があるとも異を唱える者もいるとか…」
突然、食べていたサマエルが動きを止める。
「おい。イズモとやら。その草の一族は、何処に居るのじゃ。」
サマエルがイズモに聞いてくる。
「う…」
イズモは、サマエルが自分に見せる鋭く凍てついた眼光に固まっていた。
(こ、このユウト殿の師匠と呼ばれるサマエル殿。只者ではない。威圧感が計り知れぬ…)
「あ、は、城下町の外れの山城を本拠地にしていると聞きます。捜索や攻め込んだりした者も誰一人帰ってきませぬ。本当に謎の一族なのです。外見や戦う所は任務等で見たことはありますが、屈強の者達ばかりです。」
サマエルは、何か考え込んで黙り込む。
「師匠。どうかしましたか?」
勇都の言葉にサマエルは、静かに黙っていた。
サマエルは、少し溜息を吐く。
「ふ~っ。わからんか…。いや、何でもない。気にするな。」
団子を口に入れ頬張りながらサマエルは、イズモを再び見る。
「イズモよ。ここの国には聖獣が居るじゃろ?」
「聖獣?!」
勇都は、サマエルの聞きなれない言葉に反応する。
「ご、ご存じでしたか?」
イズモは、驚いた表情でサマエルを見ていた。
「この国に入ってプンプン匂ってくるわ。この国にいる聖獣は何じゃ?」
サマエルは、身を乗り出してイズモに迫っていった…




