第10話 託された想い…
マニーは、影切を掴み勇都に渡す。
「え、えっ。こ、これ頂くわけには…」
勇都は、両手で制し受け取りを拒否しようとする。
「ユウト殿。話を聞いてくれないか…」
マニーは、勇都に話し始める。
「我が愚弟マキャーは、ワサビの里を抜ける際、父や里の住人達を大虐殺した。私は、今でもそれを許せない。我が手で弟を討ち果たしたい。この家宝で代々伝わる影切を使って。許されるのであれば、この里から出て、この世界の何処かにいるマキャーを必ず探し出して引導を渡してやる。しかし、ウラー様や里の者達を支えなければいけない。私は、この里から出られない…」
マニーは、悔しそうに顔を歪めていた。
勇都は、ただ黙って聞いているしかなかった。
「でも、ユウト殿は違う。サマエル殿とこの世界を旅してきてソイソースの森で出会った。これも何かの縁だ。ユウト殿、貴殿に全てを託したい。私と死んでいった里の者達の無念をこの影切で晴らして欲しいのだ。ユウト殿にお願いする。マキャーを倒してくれ。」
マニーは、頭を深々と勇都に向かって下げる。
勇都は、マニーの姿を見て少し考え込む。
やがて勇都は、口を開いた。
「僕は、マキャーと砂漠で出会い戦った時、全然敵わなかった。運よく退けることができたけど、正直、死の恐怖がありました。ああ、僕はこの世界でも命を終えてしまうと…」
勇都は、マニーに近づく。
「闘技場で出会い一緒に戦った時も強く心強かった。強くて残忍だけどとても真に悪い奴に見えなかった…。でも、マニーさん達の話を聞いて正直またわからなくなった自分が居ます。けど、僕は、マキャーと再び出会った時は、必ず戦う予感が何となくですがそんな気がしてならない。」
マニーは、顔を上げユウトを見る。
「ユウト殿は、この里に来てウラー様や、私達と共に訓練をして格段に力が付いてきた。正直今の貴方なら負ける気がしない。負けない程の実力があるはずだ。」
マニーに言われ、勇都は苦笑いする。
「マニーさん。買い被りすぎですよ。」
勇都は、再び真顔に戻る。
「マキャーと会って戦う事になればどうなるかわかりません。勝つ保証もないし、負けるかもしれない。勝ったとしても僕はあいつにトドメをさせるかもお約束できません!」
勇都は、マニーを見る。
「でも、この里でお世話になったウラーさんや、マニーさん。里の皆さん。亡くなった里の方々の無念を晴らす為に戦いたい。マキャーをどうするかは、その時に戦って決めます!それで良ければ僕はマニーさんの代わりにその影切を受け取ります。」
勇都は、力強い決意の眼差しをしていた。
マニーは目を瞑る。
「……わかりました。マキャーの事は、ユウト殿にお任せします。よろしく頼みます。この影切を受け取ってくれますか?」
マニーは、勇都に影切を差し出す。
「はい!」
勇都は、マニーから影切を受け取った。
‐翌日‐
勇都は、里の外れの道場に居た。
ここでウラー達と共に訓練をずっとしていた。
「あと数日で勇都君の知り合いもインゲン国に来るみたいだね。それまで、少しでも強くなるように色々と叩き込むよ。俺の体術・技術を教えてやろう。」
拳を鳴らしウラーは、笑っていた。
「私も出来る限りの忍の術や技を教えましょう。」
ウラーの隣には、マニーが居た。
その後ろや脇には、ワサビの里の屈強な手練れの男達も集合していた。
「はい、よろしくおねがいします!」
勇都は、両手で構えを見せる。
道場の窓から人の姿に変わったサマエルが勇都を覗くように見ていた。
袋から木の実を食べながらじっと勇都を見つめる。
「頑張れ…我が弟子よ…」
勇都は、ウラーに向かって走っていた…




