第3話 過去…
マキャーに似た目に傷を負っていた狐の顔をした男が口を開く。
「お主、マキャーをご存じか?!詳しく聞かせてくれ…」
狐の男は、勇都に迫っていた。
勇都は、マキャーとは全く違う真摯な態度に驚いていた。
狐の男は、気づき立ち止まる。
「あ、いや。客人よ。失礼した。私は、マキャーの兄のマニーと申す。」
マニーと名乗った狐の男は、勇都に向かい会釈をする。
「ま、立ち話も何だし、座って話を聞こうじゃないか。マニーよ。」
ウラーは、腰を下ろして座る。
マニーも一礼し、その場に座った。
勇都は、今までの冒険や旅。
そして、ターメリク国の砂漠で出会った事を話していった。
「そうか…。あいつはそこまで行っていたのか…。」
マニーは、険しい顔をしていた。
「マニーさん。マキャーは、一体何者何ですか?」
勇都は、マニーに質問をする。
「ユウト殿。マキャーは、私の弟なのです…。」
「その事については、私が説明しようか。」
ウラーは、勇都とサマエルに語り始めた…
ワサビの里。
代々、この里の者達は、この世界の至る場所に訪れ仕事をしていた。
訓練や修行し、肉体や技を鍛え、各国の要人の保護や情報収集をしその仕事で得た収益でワサビの里を守っていた。
最近は、少なくなったが過去に世界が戦乱の世と化した時は、暗殺業で生計を立てていたこともあったという…。
強力な結界に覆われ、侵入者も無かった。
世界の各国でも恐れられている存在であるとウラーは告げる。
「何か忍者の里見たいですね。」
勇都は、ぼそりと感想を呟く。
ワサビの里は、平穏に静かに慎ましく皆々が暮らしをして生活していた。
が、6年前に異変が起きる。
それは、ワサビの里の後継者を決める事になった時だった。
以前の里の長は、マニーやマキャーの父が務めていた。
里の代表は、世襲制ではなく戦いをし取り決めることが習わしとなっていた。
試合をし、優勝した者が長となっていた。
今まで様々な種族が担当をしていた。
マニー達の父は、高齢で引退することになり代表争いの戦いの試合を開催すると宣言した。
里の腕の強い者達が出場をした。
その中には、マニーやマキャーも居た。
マニーは、他者に掛ける優しさや情け。
戦う力や技術を備えていた。
一方、マキャーは、生まれた頃から乱暴者で力で相手を捻じ伏せたり、悪知恵を働かせ虐めや欲望の赴くまま行動をしていた。
試合は、滞りなく進み決勝を迎えた。
決勝は、兄のマニーと弟のマキャーの対決となった。
試合が始まり、マキャーは、力でマニーを攻撃していく。
が、マニーは、頭を使った戦略と術でマキャーを寄せ付けずに倒した。
マニーが優勝をして、拍手喝采の中、ワサビの里の代表に選ばれた。
マキャーは、マニーに負けてとても悔しそうにしていた。
実の兄のマニーに対し、このままでは済まないと捨て台詞を残しその場を去っていった…
しかし、数日後の深夜。
里で大火事が発生した。
逃げる里の者達。
それをマキャーは、悉く斬り殺していった。
自分の父親の長の首も斬り落として殺した。
中には、逃がさない様に食事に毒を混入し毒殺もしたり、絞め殺したりした。
容赦ない殺生は、老若男女問わず行われた。
大騒ぎのワサビの里。
その中で、マニーは、マキャーを見つけ戦う。
が、試合の時と違い、多数の罠や人質を取りマニーを動けなくしていくマキャー。
マニーは、片目を抉られ死の危機が迫っていた。
その時に、異世界から現れワサビの里に迷い込んだウラーが偶然にも遭遇した。
ウラーは、マキャーに素手で立ち向かい圧倒した。
マキャーは、そのままウラーの攻撃を喰らいながら逃走した。
里は、半分が焼失し、多数の者達が亡くなった。
里の広さも、勇都達が滞在したソイソースの森まで本当はあったという。
その後、ワサビの里は結界を張り、残った者達で生活していくことになった。
人数も減り、より人目に付かぬように生活をして行く住人達。
マニーは、傷ついた自分を助けてくれたウラーに感謝と尊敬を抱いた。
住人達も救世主となったウラーを崇めるようになった。
ウラーは、直ぐに里を去ろうとしたがマニーの熱い説得と、再び長を決める試合に興味惹かれ滞在することにした。
そして、決勝でマニーを倒しウラーは代表となった。
そんな話をウラーは、一気に勇都とサマエルに話し切った。
(マキャーはそんな虐殺をしたのか。やはり得体のしれない残虐性があったのか…)
ウラーの話を聞き、勇都は黙る事しかできなかった…




