第1話 隠れ里…
「う…ん…」
勇都は、目が覚める。
「お、勇都。ようやく起きたか。起きるのが遅すぎる。」
勇都の傍には、毒の女神サマエルが居た。
何故か、臺の中に手を入れて何かを取り出して食べている。
「うまい。うまいのう。この胡桃は格別の旨さじゃ。硬さも程よい。最高じゃ!」
サマエルは、胡桃を食べて喜んでいた。
勇都は、自分の居る場所を見回す。
そこは、部屋だった。
勇都は、布団で寝ていた。
周りは、板張りで布団以外何もなく殺風景だった。
勇都は、体を見てみる。
包帯が全身に巻かれていた。
胸の火傷や脇腹の傷の痛みは感じなかった。
「師匠。ここは…どこ?!」
勇都は、サマエルに質問する。
「うむ。ここはな。ワサビの里じゃ。」
「わ、ワサビの里?!」
勇都は、自分の居る場所が良く理解できてなかった。
「えっと、僕はソイソースの森で修行していてあの豚のモンスターと戦っていて…」
「そうじゃ。お前は、戦い勝利した。が、傷つき命の危険があった。その時、ここの里の者達が助けに来てくれたのじゃ。ソイソースの森で何度も何度も行っても同じような風景の場所があったじゃろ?」
勇都は、ソイソースの森を捜索した際に何度も同じ場所に戻る所があったことを思い出した。
「わしもあの場所の奥には何か結界らしきものがあると感じていた…。その先にあったのがこのワサビの里じゃったのだ。」
サマエルは、胡桃を食べながら勇都に教える。
「師匠。僕は、倒れてどのくらい経ってますか?」
「丸1日寝ていただけじゃよ。」
勇都は、だいぶ長く寝ていた感じがしていた。
すると部屋の戸が叩かれる。
「入ってよいぞ。」
サマエルは、戸を叩く者を招き入れた。
「失礼します。お連れの方も起きたようですね。」
黒装束の1人の青年が勇都達を見る。
「うむ。ようやくこの寝坊助が起きよった。」
サマエルは、臺の胡桃を食べながら話す。
「サマエル様。そして、ユウト様。長がお呼びです。来ていただけませんか。」
勇都は、サマエルと顔を見合わせる。
サマエルは、胡桃を食べるのを止める。
「勇都。わしやお前を救ってくれたのは、この里の長じゃ。礼儀とていかねばならぬ。話はしたが中々の男じゃぞ。」
サマエルは、両手をパンと叩く。
「そうですね。お礼も言わないといけないし、この里の事も聞きたいし。」
「うむ。では向かおうか。」
勇都とサマエルは、部屋から出ていく。
青年に連れられて廊下を歩く。
すると行き止まりの場所に引き戸があった。
青年は、戸を叩く。
「長。連れてきました。」
戸の奥から声がする。
「入れ…」
戸を開けて勇都とサマエルは入っていった…




