第10話 黒装束の者達…
地面にサマエルが姿を変えたグランベリーが落ちる。
「………勝ったのか…な…」
全く動かなくなったミポーを見る勇都。
勇都は、膝から崩れそのまま地面に倒れる。
「勇都よ。よく戦ったぞ。流石わしの弟子じゃ。」
しかし、勇都は、サマエルの呼び掛けに答えない。
いつもだと必ず返答する勇都。
だが、全くない。
サマエルは、勇都の異変に気付いた。
サマエルは、グランベリーの形から人の姿に戻る。
サマエルは、勇都に駆け寄る。
「おい!勇都、大丈夫か?!」
サマエルは、勇都に近づく。
「う…うう…」
サマエルは、勇都の体を見る。
すると、勇都の左脇腹に木の枝が突き刺さっていた。
血が流れていた。
ミポーに吹き飛ばされた衝撃で刺さったのだろうとサマエルは推測した。
勇都は、唸っていた。
顔色も次第に青白くなっていく。
「いかん!手当てをせねば。」
サマエルは、勇都の肩を担ぎテントに向かう。
「お、重い。」
サマエルは、勇都を担いで言葉を漏らす。
サマエルは、勇都を担ぎながらゆっくりとテントに向かう。
「こ、これは。な、中々の重労働じゃわい。」
サマエルは、額に汗をかいていた。
サマエルは、勇都の顔を見る。
顔の色が更に青くなって行っていた。
脇腹から流れる血が地面に垂れていく。
「出血を止めないとな。まずは。勇都、お前は死なせないからな。」
サマエルは、前の方を向く。
すると、1人佇む黒装束の男が居た。
編み笠を被り、顔はよくわからなかった。
上半身ががっしりした筋肉質。
腰には、二刀の鉈の様なものが刺さっていた。
サマエルは、驚いていた。
全く人が居なかったソイソースの森で始めて見た人間。
そして、気配を感じられなかった。
「だ、誰じゃ。お前は?!」
サマエルは、黒装束の男を警戒する。
黒装束の男は、サマエルに掌を向ける。
「…今までずっとあなた方を見させてもらっていた…。まさか、あの豚の様なモンスターを倒すとは…。正直その青年が勝つとは思わなかった…」
黒装束の男は、編み笠を取る。
サマエルは、その顔を見て覚えがあった。
「お、お前は…」
「それよりもこの青年が危ない。手当てをしましょうぞ…」
勇都は、少し意識を取り戻した。
(あれ?僕は、何していたんだっけ?!)
記憶を思い出す勇都。
(確か、ソイソースの森で師匠と修業して…。あの豚のモンスターと戦って…)
勇都はうとうとしていた。
体が浮き上がっていて、足が地に付いていない感覚があった。
(あれ?今、何処にいるんだろう。)
勇都は、目を開く。
自分の右脇に人が居た。
(し、師匠?)
人間の姿になったサマエルが自分を抱きかかえていた。
そして、目の前の方を見る。
その先は、勇都がソイソースの森の中で何度も同じような風景や場所に戻った所だった。
目の前に、黒装束に身を纏った者達が5、6人居た。
(え?ここ、人が居たのか?あっちに行けるの?)
勇都は、左脇も抱きかかえられている感触がした。
左を見る。
すると黒装束の男が抱きかかえていた。
(あ、誰だろう?)
勇都は、黒装束の男の顔を思わず見る。
その男の顔に覚えがあった。
ターメリクの国の砂漠で出会い戦った狐の種族の男に似ていた。
「マ、マキャー…」
勇都は、目の前が暗闇に覆われた。
勇都は、再び意識を失った…




