第16話 フューリーとエキドナ…
「ぬおりゃああああっ!おらはお頭の為に頑張るぜっ!!」
フューリーの手下でバンダナにドレッドヘアのジミーが鎌を振るう。
「イカ公。死神ジミー様の鎌を喰らえ!!!」
ジミーは、クラーケンの足を鎌で斬り付ける。
ジミーに続いてフューリーの手下の海賊達もクラーケンの足を集中的に攻撃し始める。
フューリーの黒船は、クラーケンに向けて大砲を撃ちまくっていた。
エクスプローラー号に1人の男が飛び乗ってきた。
眼帯に黒い服を着た男。
海賊のフューリーだった。
「ヒュ、ヒューリー!!」
エキドナは、ヒューリーを見て固まる。
逆にフューリーは笑う。
「おいおい。俺の女を助けに来たんだ。もう少し喜べよ…」
ヒューリーは、エキドナに近づく。
「く、来るな。誰がお前の女だ!昔の事だ…勝手に居なくなって…」
エキドナは、苦々しい表情でフューリーから目を背ける。
「エキドナ…。俺はお前の下を去った。確かに悪かったよ。トルネオ商会から去った俺を許せとは言わない。でも、フレイムルビーを取り戻す為にはこうするしかなかった…」
フューリーは、真剣な眼差しでエキドナを見る。
エキドナとフューリーの様子を見る勇都。
「師匠。あの2人は、過去に何かあったんですかね?」
勇都は、自分が握っているサマエルが姿を変えた魔剣グランベリーに思わず呼び掛けていた。
(それは、男と女の関係だったのじゃ…)
サマエルは、勇都にそう返した。
‐2年前‐
フューリーは、トルネオ商会で働いていた。
用心棒として世界各地を周りながらトルネオ商会の営業担当として、各地の特産物の貿易を携わる凄腕のバイヤーでもあった。
エキドナは、兄のカンザスのいるにトルネオ商会に入社した。
そこでエキドナは、フューリーの部下となり仕事を覚えて行った。
エキドナは、ヒューリーの明るさと人柄、仕事ぶりを見ていつしか恋心を抱いた。
2人が恋仲になるにはそう時間が掛からなかった…
とある日。
トルネオ商会は、ある国で取れた宝石の運搬を担当することになった。
様々な高級で高額な宝石類。
その中でフレイムルビーと呼ばれる赤く炎の様に燃え上がった宝石があった。
国1つ買えるほどの宝石だった。
滅多に産出されることが無くレアな物だった。
それを王都クックに船で運ぶ予定だった。
海運では、世界の中で一番速く届けられる力があったトルネオ商会に大役を任されることになった。
本来、フューリーが担当することとなった。
が、フューリーは、エキドナと結婚することになり式を控えていた。
代わりにエキドナの兄、カンザスが担当し船で運搬することとなった。
カンザスもフューリーに負けぬほどの力と腕と持っていた。
カンザスの乗るシュプリーム号は、順調な船出だった。
王都クックまで迫っていた。
が、シュプリーム号は沈んでしまった。
カンザスは、二度と戻ってくることは無かった。
その報告を聞き、ヒューリーは、衝撃を受けた。
エキドナ商会にとっても宝石類を届ける事が出来ずに大損害となった。
ヒューリーは、色々と調査しある事が判明した。
頑丈なシュプリーム号が沈んだ理由。
それは、他の行き来している船からの報告でわかった。
シュプリーム号は、白いイカの様なモンスターに襲われ海の底へ沈んだと…
それが、クラーケンの仕業。
そして、カンザスが死んだその場所がウォーターメロンだったと。
フューリーは、突然書置きを残し、トルネオ商会を退社し、エキドナも前から突然消えた。
エキドナは、ショックを受けた。
何度も泣き嘆く夜を過ごした。
それからフューリーを忘れるかのように仕事に没頭した。
死んだカンザスの意志を継ぎ。
そんなエキドナは、とある噂を聞くようになった。
フューリーが海賊になったと…
正直信じることはできなかった。
そして、エキドナは、フューリーと再び出会った。
「エキドナ。俺は、カンザスの仇を討つ為。そして、トルネオ商会の運んでいた宝石の在りかを掴むために海賊になりずっと情報を収集していた。そして、フレイムルビーの行方もようやくわかったんだ。」
フューリーは、エキドナに語り始める。
「兄さんの仇?フレイムルビー?よくもそんな事言えるわね。」
エキドナは、顔を真っ赤にし怒りの表情を見せる。
「ああ。俺はその為だけにこの2年を過ごしてきた。お前が怒るのもわかる。が、俺を信じてくれ!」
フューリーは、エキドナに言う。
「どこにフレイムルビーがあるっていうのよ!」
するとフューリーは、ある方向に指を指す。
「あそこだ。あの下にクラーケンが奪った財宝の数々が眠っている。」
その方向は、クラーケンの居る場所だった。
クラーケンの下のデッドエンドの大渦を指差していたのだった…




