第10話 落下…
ゴブリン達が勇都に向かってきた。
地上まで逃げることが出来ない勇都。
(や、ヤバッ。あ、足が動かない…)
死の恐怖を感じたからなのか、勇都の足は震えていた。
(う、動け。動け俺の足…動かないと死ぬぞ…)
勇都は、拳を作り両腿を叩く。
ヒュッ
「ひっ!」
勇都は、思わず声を出した。
勇都の足元に鎗が飛んできた。
3匹のゴブリンが何か叫びながら向かってくる。
「うっ…うおおおおおっ!!!」
勇都は、ゴブリン達に向かって走って行った。
ゴブリン達が勇都に向かい武器を振るおうとする。
「おおおおおっ!!!気配隠蔽!!」
勇都は、ゴブリン達にぶつかる直前に気配隠蔽を発動した。
ゴブリン達は、勇都が目の前で消えて立ち止まり辺りを見回している。
(な、何とか成功した。でも、時間もあまりない。どこかに隠れないと…)
勇都は、自分の居る場所の辺りを見回す。
壁や自分の身を隠せるところが無かった。
(上には行けない。とにかく奥の方に行ってみよう。ゴブリン達が上に行けばやり過ごせるかも。)
3匹の横をゆっくりとすり抜ける。
その後ろにもゴブリン達が居た。
弓矢や斧を持っていた。
太ったゴブリンの横をゆっくりと通る勇都。
するとゴブリンが鼻をヒクヒクさせ辺りを嗅ぎ始めた。
(少しでも奥に行かないと。慎重に行こう…)
勇都は、音を立てない様に歩いて行く。
ゴブリン達の動きを見ながら進む。
(まだ。俺はこんな所で終われない。死なないぞ!絶対!!力の限り生きてやる!)
勇都は、強い気持ちで生きて足掻こうと決めていた。
「あっ…」
勇都は、足元の石に躓いてしまった。
何とか転ばない様に倒れる直前に手を地面に付く。
すると、見えなかったはずの手が見えてきた。
(!!!!ま、マズイ!)
勇都は、気配隠蔽の効果が切れたと理解した。
すると、ゴブリン達が勇都の方を見る。
「あ、あ、あ…」
勇都は逃げようとする。
が、自分の背後には壁があった。
壁に背中を付ける勇都。
ゴブリン達が不気味に笑いながら勇都にゆっくりと迫る。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
興奮と恐怖で呼吸が荒くなる。
勇都は、ゴブリン達にダガーを構える。
(足掻いてやる。暴れてやる。絶対、絶対に俺は死なないぞ!!)
勇都は、両手でダガーを力一杯に握りしめた。
その瞬間、勇都の地面の足元が崩れる。
「うわあああっ!!」
勇都は、暗闇の穴の中へと落ちて行った。
勇都は落下しながら、ゴブリン達の笑い声を聞いていた。
そして、意識を失って行った…




