第15話 援軍…
「撃てーっ!!」
エクスプローラー号の大砲から轟音が響く。
波に揺られて、数発だけクラーケンの体に当たる。
が、クラーケンは全く動かなかった。
「ハハッ。人間共め!俺の可愛いクラーケンにそんな武器は効かんぞ!!」
クラーケンを操る魚人のバスターは、高笑いする。
「行け。クラーケン。あの船を沈めるぞ。」
バスターは、クラーケンにエクスプローラー号を指差して指示する。
クラーケンは、ゆっくりとエクスプローラー号に向かって動こうとする。
すると何処からかクラーケンの足に槍が直撃する。
クラーケンは、突然、体を激しく動かし暴れる。
「ど、どうしたクラーケンよ?!」
バスターは、クラーケンの足を見る。
そこには、電流を帯びた槍が突き刺さっていた。
突き刺さった部分から血が出ていた。
槍の持つ部分に鎖が付いていた。
「むむっ…あ、あいつは…」
バスターは、鎖の方向を見る。
鎖は、海上に続いていた。
海上に一艘の船が浮かんでいた。
そこには、色黒で鉢巻を巻いた長髪の男が居た。
雷神トールが変化したトライデントを操るランドが居た。
「船には近づけさせんぞ。今日こそ仕留める!」
ランドは、クラーケンを睨みつけていた。
ランドは、勇都とエキドナ達に向かって叫ぶ。
「クラーケンは、俺が倒す!お前達は、頭の上に乗っている魚人を倒せ!!あいつを倒せばクラーケンは止まるはずだ!!」
勇都とエキドナ達は、ランドの言葉を聞き頷く。
「ユウトよ。この船を守るぞ!」
「はい!」
勇都は、サマエルの変化した魔剣グランベリーの柄を両手で握る。
「おのれ~。また邪魔をするのか、あの漁師は。船諸共海の藻屑にしてやるぞ!!!」
バスターは、顔を真っ赤にさせて怒っていた。
エクスプローラー号は、速度を落とし海の流れに逆らうことなく進む。
クラーケンは、エクスプローラー号に迫ってきた。
クラーケンの数本の足が、エクスプローラー号に掛かる。
「クラーケンを倒すぞ!」
エキドナの号令で水夫や用心棒達が足を攻撃し始める。
エキドナは、短銃を連射していた。
「はっ!」
勇都は、クラーケンの足にグランベリーを突き刺す。
先日倒した巨大クラゲの毒を柄に嵌めていた。
足から血が流れ、痺れたのか動きが遅くなっていた。
(勇都。クラゲの毒が効いているぞ。もっと攻撃だ!!)
サマエルの言葉に従い、勇都は別の足に向かってグランベリーで斬り付ける。
「ん、何だ。あいつの攻撃でクラーケンの足が止まっている。邪魔だ。クラーケン、あいつを攻撃しろ!!」
バスターは、クラーケンに命令する。
するとクラーケンは、口から何かを吐き出した。
それは黒く大きな液体の様な玉だった。
凄い速さで勇都に向かって行く。
「ヤバイ!」
勇都は、横に思いっきり転がる。
甲板の板に体を打ちつけながら黒い玉から逃げる。
勇都の近くにいた水夫や用心棒達に黒い玉が当たり弾ける。
すると水夫や用心棒達は、全身が黒く染まっていた。
「な、何だ。目が見えねえ!」
「息が苦しい。動けんぞぉ!!!」
視界と体が動けなくなり水夫達は苦しんでいた。
黒い液体がゴムの様に伸びて絡まっていた。
「おりゃあああっ!!!」
ランドがクラーケンの足にトライデントを突き刺す。
「邪魔をするな!!」
バスターは、ランドに向かってクラーケンを体当たりさせようとしていた。
次の瞬間だった。
大きな轟音が荒れ狂う海に鳴り響いた。
クラーケンの足が吹き飛んだ。
「な、何だ?!」
バスターは、音のした方を見る。
すると黒い帆船が海にいた。
船の大砲から煙が上がっていた。
「あ、あれは、フューリー…」
エキドナは、海賊のフューリーの船だとわかった。
フューリーの船の甲板には、海賊達が武器を持って集結していた。
フューリーは、黒い服に眼帯をし、両手には銃を持っていた。
「あの船には、愛する俺の女がいる!船は沈没させないぜ。行くぞ、野郎共。今日こそ、あの醜いモンスターを倒すぞ!!」
ヒューリーの掛け声に、海賊達は興奮し雄叫びを上げた…




