第14話 海の悪魔…
勇都達の乗るエクスプローラー号は、デッドエンドの手前へと来た。
大きな渦が海面に勢いよく巻いていた。
「船長…ここは、慎重に進んでくれ。とにかくゆっくりだ…流れに逆らわず、上手く調整して。強引に真っ直ぐ進めば渦に呑まれてしまう…」
操舵室にいたランドは、船長のサムスに言った。
ランドは、雷神トールが姿を変えた三叉の槍、トライデントを持ち部屋を出て行こうとしていた。
「ランド。何処へ行くのだ。君の指示が無ければデッドエンドは乗り越えられない。」
「船長。貴方の腕なら大丈夫だ。それに奴が来たようだ。俺が止めないとエクスプローラー号は沈む。」
ランドは、振り返りもせず部屋のドアのノブに手を掛ける。
「奴とはなんだ?!ま、まさか…」
サムスの顔は青ざめていた。
「…クラーケンだ…今度こそ仕留める…」
サムスは、静かに部屋を出て行った…
その頃、勇都は、エキドナ達と甲板にいた。
目の前の海に広がるデッドエンドの大渦を見ていた。
「す、凄い渦だ…」
勇都は、大渦の勢いと大きさに驚きを隠せなかった。
エクスプローラー号でさえも飲み込まれたら大破し、海の底へと沈む。
(勇都よ。あの渦に何かおるぞ。クラーケンだ…)
勇都の腰にある魔剣グランベリーに姿を変えたサマエルが勇都に呼び掛ける。
「えっ?!」
勇都は、船首の方へと向かう。
「おい!ユウト危ないぞ!!」
エキドナが勇都を呼び止める。
勇都は、デッドエンドの方角を見る。
すると渦の辺りから大量の魚が飛び跳ねていた。
ただならぬ事態を勇都は実感する。
勇都は、グランベリーを抜いた。
渦から大きな音がしていた。
無数の白い足が伸びあがっていた。
「ま、まさか…。みんな、戦闘の準備だ!!!」
エキドナは、水夫や用心棒達に指示を出す。
渦からクラーケンの頭がゆっくりと出てきた。
「何だ?!何が乗っている?」
勇都は、クラーケンの頭に誰かが乗っているのを見つける。
それは、魚人の姿をしていた。
クラーケンは、渦から全身を出していた。
足がうねる様に動きを見せる。
デッドエンドの大渦の上に居座ったクラーケン。
エクスプローラー号からそれを見ていた乗客が呟く。
「う、海の悪魔だ…この船は沈むのか…」
クラーケンの姿を見て、乗客達は皆怯えていた。
空が暗くなり、雲から雨が降ってきた。
海上の波が次第に荒れ始めてきた。
風も少し吹いてきた。
クラーケンは、目を開き足をバタバタさせる。
「さあ、クラーケンよ。共に暴れようぞ。あの船を破壊しよう!」
魚人バスターは、クラーケンに語り掛ける。
クラーケンの足は、バスターの体を撫でる様に触れる。
エクスプローラー号は、ゆっくりとクラーケンに迫っていた…




