第12話 クラーケンを操る者…
大きな渦があった…
そこは、通る船を全てのみ込むデッドエンドと呼ばれていた。
デッドエンドの大渦は、勢いよく動いていた。
そんな渦の中から何かが現れる。
それは、白い一本の太くて長い足だった。
足には無数の吸盤があった。
足が何本かデッドエンドから姿を見せる。
やがて本体が現れた。
それは、勇都達のエクスプローラー号を襲ったクラーケンだった。
クラーケンの頭は、無数の切り傷が付いてあった。
何本かある足の1つは、綺麗に切断されていた。
クラーケンの頭に何かが乗っていた。
人の姿をしていた。
が、よく見ると全身が緑色の鱗で覆われていた。
そして、顔が金魚の様だった。
口をパクパク動かしていた。
魚人の姿をした者は、全身を震わせていた。
「あの漁師め!また我らの邪魔をした。船を襲撃し、お宝を奪う予定が狂っちまったぞ!!」
魚人は、怒りを露わにしていた。
「このバスター様は、力と財をもっと蓄えなければならない。魔王様に任されたこのウォーターメロンを確実に制圧し人間共に脅威を与えないと。俺もこのままではいけない。もっと力と権力を得て高い地位に行く為に!」
魚人バスターは、魔王の命でこの海域を支配していた。
魔王から人間の脅威になるようにと、海を通る船を襲っていた。
船から金品等を奪い、深い海の底に沈めることを快感にしていた。
また奪った金品を溜めるコレクターとなっていた。
品々を眺めることがバスターにとって至福の時だった。
バスターは、クラーケンの頭を優しく撫でる。
「クラーケン。お前には感謝しているよ。魔王様に与えられこの海で活躍で来ている。」
バスターに撫でられ、クラーケンは目を細める。
バスターは、海域を治める為に魔王からペットの1匹であるクラーケンを頂いた。
クラーケンを操り、バスターはずっと生きてきた。
クラーケンは、バスターに懐いていた。
クラーケンは、足を動かし先でクラーケンの腕に触れる。
「よしよし。お前はいい子だよ。出来る子だよ。」
バスターは、クラーケンの足を撫でる。
再びクラーケンは、巨大な目を一層細める。
「あのエクスプローラー号とか言った船は、今までで一番巨大な奴だ。あの大物を落とせばきっと素敵なお宝がたくさん手に入る。それに沈めれば、我らの存在がもっと大きくなるぞ…」
バスターは、海の先を見つめる。
「どうせあの船は、ここを通らなければ王都に辿り着くことも出来ない。進めない。今度こそ確実に沈めてやる。」
バスターの腕から鋭い刃が出る。
「あの漁師にも邪魔をさせない。ここは我らの棲家だ。クラーケン、お前も傷ついた。回復させよう。」
バスターは、クラーケンと共に渦の中へと消えて行った…




