第11話 毒と雷の邂逅…
鉢巻をした長髪の漁師の男がエクスプローラー号に上がってきた。
漁師の男は、エキドナや勇都の所に向かって行く。
「俺の名は、ランド。この海で漁師をやっている。」
ランドは、右手に三叉の槍を持ち勇都達の前に立ち止まる。
勇都は、三叉の長い槍をじっと見ていた。
「あんた。俺の槍が気になるか…」
ランドは、勇都に話しかけてきた。
「あ、つい見とれてました。り、立派な槍だと思って。」
「そうか。それは嬉しいな。これは、俺の相棒だ。トライデントと呼んでいる。」
勇都とランドが会話をしている最中、トールとサマエルが他の者達には聞こえない会話をしていた。
サマエルは、トールに地上に落とされ勇都に出会い旅をしていることを簡単に話していた。
雷神トール。
神々の戦いがかつて存在した。
2つの勢力が争う中、最前線で戦っていた神の1人だった。
雷を操り、迫りくる敵を焼き尽くしていった強き神だった…
鬼神の如き戦いぶりは、見ていたサマエルの背筋が凍るほどのものであった。
「そうか。色々と大変だったみたいだな。元気そうで何よりだ。」
トライデントに変化しているトールは、嬉しそうにしていた。
「お主は、やはり魔王の動きを止めるために地上に下りてきたのか?」
サマエルは、トールに聞く。
「まあそんなところだ。1年前に私は天界から来た。ただ、私は下りた場所を見誤ってしまった。この海に落ちてしまい漂っていた。そこをあそこにいるランドが拾ってくれたのだ。地上を魔王の脅威から守るためにやってきたはずだったのだが、あの男といると何故か面白くてな。」
トールは、笑ってサマエルに言う。
ランドは、自分の存在を海中で拾ったただの槍だとおもっているらしい。
ただ、トールの変身した武器トライデントは、雷の力を帯びている。
その電流で魚を獲ったりしていてランドは、不思議に思っているらしい。
トールもまだ自分の正体を明かしていない。
ランドは、不器用で寡黙だがとても面白い男だと教えていた。
「そうか…わかったよ。」
サマエルは、トールの話を聞き納得した。
ランドは、甲板にいる勇都達に話す。
「この先を進んではいけない。別の場所から行った方が良い。」
ランドは、エクスプローラー号の進路を変える様に言った。
「ランドよ。何故この船の進路を変えなければならないのだ。」
エキドナがランドに質問する。
「それは、この先に大きな渦があるからだ。そこは、あんた達の船を襲ったクラーケンが居た場所だった。渦に居座っていていたが、何故かここ数か月でクラーケンがそこを離れ、通過しようとする船を攻撃していく。クラーケンに襲われて沈んだ船を何艘も見た…」
ランドは、淡々とエキドナに話す。
「確かにこの海域で行方不明になった船の話は聞いているが。」
「そのクラーケンの居た渦は、飲まれたら最後。二度と浮上できない。渦から逃れた船を見たことはない。」
ランドは、鋭い眼差しでエキドナ達を見るのであった…




